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■札幌第二中学の絆展 本郷新・山内壮夫・佐藤忠良・本田明二 (6月28日まで)

2009年06月18日 21時12分53秒 | 展覧会の紹介-彫刻、立体
 北海道を代表する彫刻家で、新制作協会を舞台に活躍した本郷新(1905-80)・山内壮夫(1907-75)・佐藤忠良(1912-)・本田明二(1919-89)。
 4人はいずれも旧制札幌二中(現札幌西高)ゆかりだった-という視点からとらえたユニークな展覧会。
 本郷は途中で上京しており、あとの3人は卒業生である。

 このうち、終生道内で活動したのが本田で、あとの3人は上京して活動していた。
 ただし、本郷新は札幌にもアトリエを持っていたし(その場所が札幌彫刻美術館になっているのだ)、本田はしょっちゅう上京しては本郷の制作を手伝っていたようだ。
 また、4人とも全道展会員を経験しているし、北海道銀行本店のレリーフを共同制作したり(本田を除く3人)、札幌の五輪大橋・五輪小橋の野外彫刻を4人で造っており、道内での(あるいは道内との)つながりは強かったようだ。
 
 今回は、彫刻美術館の所蔵品のほか、道立近代美術館と札幌芸術の森からコレクションを借りて構成した。
 札幌芸術の森の「佐藤忠良アトリエ」は昨年秋にオープンしたばかりなので、まだお披露目しておらず今回この展覧会で初登場という作品もあるという。

 先に「ユニーク」と書いたのは、4人の作品を順に並べているのではなく、なんとなく「見た目」が似ている作品を近くに陳列していること。
 あまりにわかりやすい手法なのだが、これがけっこうハマる。
 4人はけっして、作風が近いと一般的に思われているわけではないが、こうして似たもの同士を並べると、「いったい誰の作品?」と思ってしまう例がけっこうあるのだ。

 たとえば、山内壮夫の「ソンミの慟哭(どうこく) I」と本郷新の「無辜(むこ)の民-デルタ」。
 ふつう人体彫刻は、縦長に表現されるが、この2体は、横たわっている。
 体をねじるような姿勢も、両者に共通している。
 両者とも、戦争に反対するメッセージを打ち出した作品という点も一緒だ。
 体のねじれは、自由と生命を圧殺する者への抗議であり、嘆きの表現であろう。

 また、本田明二「北洋の男」と本郷新「漁夫」。
 男の顔を正面からとらえているが、かなりデフォルメしており、一般的な「首」からはかなりかけ離れている。
 だいぶ造形はちがっているのだが、じーっと見比べているうち、ふしぎなことに、はちまきを巻いた荒くれ男の風貌(ふうぼう)がなんとなく似た感じで浮かんでくるのだ。

 会場には、本郷新の手になる「若き日の佐藤忠良氏」というめずらしい油絵も展示されているし、本郷による本田明二像もある。
 後者はわずか2時間半で制作されたといわれており、細かな仕上がりよりも勢いを重んじてパッと対象の本質をつかんだ本郷の面目躍如たるものがある。

 写真資料などもあって、芸術家の友情を感じさせる心温まる展覧会なので、足を運んで損はないと思う。

 なお、会期中には、ビデオ上映会や札幌西高生による演奏会など多くの催しがあるので、サイトで確認してください。 


 一般300円、高大生200円、中学生以下無料。


2009年4月25日(土)-6月28日(日)10:00-17:00、月曜休み
本郷新記念札幌彫刻美術館(中央区宮の森4の12)



・地下鉄東西線「西28丁目」からジェイアール北海道バス「山の手環状線(神宮前先回り)」に乗り「札幌彫刻美術館入り口」で降車、徒歩7分
・地下鉄東西線「円山公園」から徒歩25分


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