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山谷圭司「にぎやかな遡行」 ユカンボシ川河畔公園彫刻広場(7)

2020年05月29日 18時48分16秒 | 街角と道端のアート
(承前)

 山谷圭司さんはとりわけ1990年代の北海道美術を語るにあたって最重要人物のひとりだと筆者は思っているのですが、今回の6人のなかでも「彫刻」という枠にもっともおさまりきれない活動をしています。

 図録によると、山谷さんは1955年旭川市生まれ。
 80年に武蔵野美大彫刻科を卒業。
 83年にオーストリア・クラスタル国際彫刻シンポジウム参加。
 86年、ミュンヘン美術大学卒業。
 その後、彫刻家CINQ(サンク)のひとりとして石山緑地の基本設計に携わっています(丸山隆さんもメンバー)。また、現代アートのグループ「HIGH TIDE」にも出品しています。

 図録に寄せた自筆の文章。


ユカンボシをはじめて訪れた時、私に提示された場所に立ち、ここでは単体の作品はそぐわないだろうという思いを持った。渓流と民家の間の狭隘な坂道に彫刻を置くというより、そのまま彫刻化してしまおうという構想になったが、結局、これはかなり大変な作業をともなうことになった。
 この坂を登り下りする来訪者たちが「作品」に踏み入ったことにも気づかず、何故かその歩みを味わい、楽しめる仕掛けであってくれればと思っている。
 

 さらっとすごいことを書いていると思うんですよね。
 自分の作品を、作品だと気がついてくれなくてかまわない。そう言っているわけですから。

 山谷さんは、富良野地方の山中に、石を積むなどして、そのあとで取り崩すという試みも行っています。
 こうなると、建築なのか、彫刻なのか、現代アートのパフォーマンスなのか、なんとも形容しがたい取り組みとしかいいようがありません。
 作品としてみずからを主張するのではなく、自然との境界があいまいになりつつあるのです。

 現地を見ている人がとてもすくないということは、たとえば、2002年に道立帯広美術館で展覧会が開かれたドイツ人アーティストのニルス=ウドを思い出させます。
 あるいは、スミッソンのようなランドアート?


 山谷さんは21世紀に入ってから富良野に移り、その後は旭川・富良野では活動しているものの、札幌にはなかなかそのようすが伝わってきていませんでした。
 この20年近く、札幌ではほとんど発表していないのです。

 2015年、帯広中心部のホテルなどを舞台に開かれた「帯広コンテンポラリーアート MINUS ART」展に出品し、ほんとうに久しぶりに会いました。


 以上で、恵庭市のユカンボシ川河畔公園彫刻広場の紹介を終わります。

 アートと自然・森林浴を同時に楽しめる穴場だと思うし、まず「3密」にはならないでしょうから、出かけてはいかがでしょうか。


・JR恵庭駅から約1.93キロ、徒歩25分
・中央バス「恵庭公園通」から約650メートル、徒歩9分(福住駅ターミナルから約1時間)

 恵庭駅からタクシーというのが、ふつうの行き方かもしれないです。


関連記事へのリンク
富良野の病院に山谷圭司さんの彫刻
CINQ10周年記念展 石山緑地をめぐって(2002年)
旭川市旭町に設置された山谷さんの作品(2001年)


恵庭市のユカンボシ川河畔公園彫刻広場
佐藤忠良「えぞ鹿」
渡辺行夫「ドン・コロ」
植松奎二「樹とともに―赤いかたち」
山本正道「時をみつめて」
丸山隆「Cube」
山谷圭司「にぎやかな遡行」


(この項、了) 


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