A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

アイドル戦線異状なし~BABYMETAL vs BiS vs でんぱ組 vs きっか vs きゃりー

2013年01月10日 00時38分02秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


年末年始の歌番組でのアイドルの活躍は見事という他なかった。紅白歌合戦でスクールメイツ代わりに番組のあちこちに登場するAKB48とももいろクローバーZ、"あたしアイドルじゃねぇし!"と言いつつ番組中盤のアイドル合戦のラストをリアルファッションモンスターで飾ったきゃりーぱみゅぱみゅ、そのままチャンネルをTBSに変えればCDTV年越しスペシャルでアイドルたちのよりリラックスした姿が拝めた。

年明け早々の朝日新聞では「女性アイドル、今年も熱い」としてAKB、ももクロの次を狙うアイドルの紹介記事が掲載され、音楽評論家宗像明将のメンズサイゾーでのアイドル連載は4年目に突入。2012年総決算記事はとても参考になる。

2013年アイドル戦国時代の幕開けを飾るべく年明け早々注目のアイドルたちが新作をリリース。図らずもいずれも当ブログで取り上げた思い入れの深いアイドル対決となった。


●BABYMETAL「イジメ、ダメ、ゼッタイ」


アイドル界のダークヒロインBABYMETALのデビュー当時からの人気ナンバー。「アイドルとメタルの融合」をテーマにSU-METAL(Vo, Dance)、YUIMETAL(Scream, Dance)、MOAMETAL(Scream, Dance)により結成された平均年齢13.3歳のメタルダンスユニットのメジャーデビュー作。激烈ヘビメタサウンドにクリスタルなSU-METALのヴォーカルとYUIMETAL+MOAMETALの合いの手が炸裂する爽快なナンバー。初回限定盤にはメンバーの声がひと言しか入っていない95%インストナンバー「BABYMETAL DEATH」とスウェーデンのメロディックデスメタルバンド "アーチ・エネミー"のギタリスト、クリストファー・アモットをフィーチャーしたヴァージョンを収録。


→ダークサイドアイドル紹介記事はコチラ


●BiSとDorothy Little Happy「GET YOU」


全裸・内蔵PVや釘バット囚人服姿や非常階段との合体ユニット=BiS階段などでアイドル界の異端の道を行くBiS(Brand-new idol Society=新生アイドル研究会)が仙台出身"聴けばカラダが踊りだす。見ればみんなが恋をする"がキャッチコピーの5人組Dorothy Little Happyとコラボ。Dorothy~は名前だけ見るとSlap Happy Humphreyを思わせるが正統派清純路線のアイドルである。最新アルバム「IDOL is DEAD」のディストーションギターと高速ビートのロックサウンドを期待すると肩透かしだが、本来備えたアイドルマニアぶりを発揮する美メロが印象的なナンバーに仕上がった。天使対魔女のPVもいい出来。


→BiS階段ライヴレポはコチラ


●でんぱ組.inc「W.W.D./冬へと走り出すお!」


鋭い切れ味と弾けっぷりで驚異のヲタコールを引き出すでんぱ組.incは"生きる場所なんてどこにもなかった―マイナスからのスタート、舐めんな! "という自伝的楽曲「W.W.D.」とかせきさいだぁ作「冬へと走り出すお!」のカップリングシングルをリリース。10分のプログレナンバーになる予定だったという「W.W.D.」は展開の目紛しいスラッシュポップ、「冬へと~」はiPhone自撮りPVも印象的なストレートポップ。でんぱ組.incの両面の魅力を味わえる秀逸なシングル。カラフルサイケなジャケットも素晴らしい。


→アイドル童貞喪失衝撃体験記事はコチラ


●吉川友「世界中に君は一人だけ」


ひとりアイドルのトレンドセッター吉川友=きっかは80年代テイスト満載のトリプルA面シングルをリリース。松任谷由実の「Valentine's RADIO」、松浦亜弥の「チョコレート魂」のカヴァーを含む加えたバレンタインソング集。赤面するほど王道のアイドル路線をひた走る姿勢には風格が漂う。彼女の歌の上手さを秀逸なボカロPのトラックが惹き立てるテン世代の正統派アイドルソングが懐かしくも新鮮。


→テン世代の正統派アイドル分析記事はコチラ

明日から来週いっぱいかけてそれぞれのリリースイベントに参戦予定。アイドルのイベントスケジュールはコチラのサイトでチェック出来る。休みなく続くイベントにはアイドル本人もヲタの皆様も相当タフじゃなければやってられない。

アイドルを
追っかけるのは
体力勝負

●きゃりーぱみゅぱみゅ「キミに100パーセント/ふりそでーしょん」


"アイドルじゃねぇ"きゃりーのハタチ記念シングルは1/30にリリース。


→21世紀の精神異常者によるきゃりーぱみゅぱみゅ文化論はコチラ

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あなたの知らない世界~コンクリートジャングルのヲタ系秘境ガイド

2013年01月09日 00時25分50秒 | 妄想狂の独り言


長年生きてきてもこの世の中は知らないことだらけである。昨年アイドル戦国時代の現場を目の当たりにし大きなカルチャーショックを受けて以来我知らずヲタ化する自分がいる訳だが、まだまだ甘いということを思い知らされた年末年始だった。あなたの知らないマニアの世界の扉を開けて差し上げよう。

●原宿ガール御用達ショップ


きゃりーぱみゅぱみゅのオリジナルグッズを求めて原宿ど真ん中のファッションビルにある有名ショップに足を踏み入れた。そこはまさにHARAJUKU KAWAii!!のメッカ。店内は青文字系ファッション誌から飛び出してきたようなカラフルな10代女子でごった返していた。メンズもあるとはいえカップルじゃなければ男性には敷居が高い。折角来たのだからと勇気を振り絞り奥のカウンター近くにあるタレントグッズコーナーまで辿りついたが余りのキラキラぶりに男ひとりで侵入するのは犯罪を犯しているような後ろめたさを感じる。きゃりぱみゅコスプレガールズの冷たい視線がひりひり痛い。何とかお目当ての携帯ストラップを手にレジへ向かうが汚物を見るような店員の対応にいたたまれず会計を済ますとまっしぐらに外へ逃げ出す。真冬の太陽が眩しすぎて卒倒しそうになりながら原宿ストリートを抜け山手線で安全地帯である渋谷方面に向かった。

●ヴィジュアル系専門店


先日書いたようにアナログ盤を求め西新宿地区を探索。その目的は最初に入った新宿レコードで30年間眠っていたお宝を救い出すことで達成されたが、時間があったので昔のレコ屋街がどうなっているかと彷徨する。80年代インディーズ&プログレ専門店だったエジソンが「Like a Edison」と店名を変えて同じ場所に存在していた。90年代半ばにニューウェイヴ・プログレからジャパメタ・ヴィジュアル系に品揃えを変えたのは知っていたが現在どうなっているのかと店頭を飾るヴィジュアル系ポスターを横目に入口を入る。店内にいる男性はゴールデンボンバーコスプレの店員のお兄さんだけ。客は全員ゴスロリ系のうら若い少女ばかり。店内を埋めるゴールデンボンバーのヴァージョン違いにしか見えない派手な化粧美少年のディスプレイの視線が恐ろしい妖気を放って襲いかかる。その濃厚な空気の中、2,3歩踏み入れたところで呼吸困難に陥りほうほうの体で退散。バンド名ひとつ確認することは出来なかった。

●ブートCD屋の加齢臭


ヴィジュアル系の濃い空気から逃れ避難したのは斜め向かいにあるクラプトンのポスターとストーンズのベロマークと積み上げられた段ボールが馴染みの香りを放つCDショップ。オヤジロックなら任せとけとそのシェルターに滑り込む。店内は打って変わって年配男性だらけ。新橋の立ち呑み屋のような雰囲気にホッとしてCD棚を眺めると見知らぬタイトルばかり。平台にはスーパーのセールのように積まれたビートルズやツェッペリンやストーンズのCD群。80年代当時この辺りにはブートレコード&ビデオ専門店があり、生で体験できない伝説的ロックバンドの音質の悪い海賊盤を高い金を払って購入し家でワクワクしながら聴いてみたら別のバンドだった、なんてこともあったりしたが、幻のバンドが続々再結成して来日するご時世にブートCDがこれほど需要があるとは知らなかった。”高音質サウンドボード録音、当店推薦ベストセラー”といったコメントと共に山と積まれたブートCDにはご丁寧にも帯が付いている。しかもそこに集うブートマニアはひとりで大量のCDを抱え一枚一枚丁寧にクレジットを確認している。洋楽ロックは好きだが圧倒的な在庫量に自分が誰を好きなのか記憶が飛んでしまう。昔ロンドンのロックコンサートで終演後会場の外でその日のライヴ録音カセットが販売されていてたまげた覚えがあるが、現在のブートのメディアはCDR中心。安上がりで誰でもコピーできるので価格はそんなに高くない。それにしても加齢臭と混じって漂うブートヲタのオーラに自分の居場所は無かった。

●究極のアキバ系コミック・アニメ専門店


アイドルグループのイベント参加券がもらえるというので新宿南口徒歩1分のビルのショップへCDを予約しに行った。事前にHPをチェックしアニメやコミックも扱っていることは分かっていた。ナウシカやワンピースを想像しつつエレベーターに乗る。他にはリュックを背負った真面目な学生風男子が数人。エレベーターが上がるにつれ何故か心の隅がじわっと湿り気を帯びる気がする。全員同じ階で降りる。もわっとした空気がピンク色に澱んでいる。店に足を踏み入れた途端上下左右から迫る桃色に圧倒される。どこを見ても萌え萌え萌え・・・。アブない萌え系アニメが氾濫しヲタ臭で噎せ返る店内でレジに並ぶと前の青年はビニ本を思わせるパンフ状のコミック本を20冊くらいカウンターに置く。ロリータ顔の少女があられもない姿で微笑むヤヴァい表紙におののく。何とか目当てのCDを予約しイベント参加券をGET。ロリ好きの血が騒ぎ生温かい空気の中店の奥へ分け入る。CDコーナーがあったのでアイドルのレア盤でもないかと眺めるがどれも萌えアニメのジャケットの見知らぬCDばかり。自分の知らない音楽がこんなにあるのかと昔「Fool’s Mate」で東欧や南米の未知のプログレに心弾ませたことを思い出す。それにしても1枚として知っているCDがない。一体これは何?と思い試聴機のヘッドフォンで聴くと何てことはない打ち込みフュージョン風インスト。これで萌える訳??曲目を見るとどうやら既存アニメやゲーム音楽のカヴァー集らしい。さらに奥へ進むとレンタルビデオ店の奥のカーテン裏の十八禁の世界が広がる。所謂同人誌という奴だが露出度の高さはAV以上。二次元の世界に取り憑かれた青少年たちが熱心に選んでいる。アダルトショップは入る時は多少の勇気がいるが入ってしまえば目的は皆同じ。じっくりと吟味しお好みのブツをセレクトする。しかしここは十八禁でもないし少数ながら女性客もいる。その中で何の衒いもなくじっくりエロコミックに見入る青少年諸君。Take Freeのフライヤーがあったので来店記念にもらってきた。どれもコミケやイベントの案内で会場は産業プラザや農業センター等公共施設である。近所の公民館に18歳以上ゾーンなるヤヴァなスペースが設置されているとは住民は露にも知らないに違いない。土日の公民館はまさに都会のダークスポットと化すのである。



原宿とヴィジュアル系はともかく、ブート屋とアニヲタ&コミケには心の奥で軽い親近感を覚えてしまうのは確か。プログレマニアやノイズコレクターと紙一重の世界である。もしかしたら1年後にアニメコスプレでフェス会場にいるかもしれないが大目に見ていただけないだろうか。



コスプレイヤー
胸を張れ
心の中を
曝け出せ

家族が寝静まったあとにひとりイベントフライヤーを眺めてほくそ笑む........。
深層心理の発露であろうか。



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組原正+園田游+吉本裕美子@阿佐ヶ谷 Yellow Vision 2013.1.6 (sun)

2013年01月08日 01時00分49秒 | 素晴らしき変態音楽


組原正 (ギター) from グンジョーガクレヨン
園田游 (舞踏) from グンジョーガクレヨン
吉本裕美子 (ギター)

吉本嬢とは昨年6月アルトー・ビーツのワークショップで出会って以来音楽の好みが似通っていて何度もライヴ会場で顔を合わせるようになった。それと共に彼女が私のような即席演奏者ではなくとても精力的に活動する現役ミュージシャンしかも即興音楽家であることも分かった。友達付き合いや共演相手の視察でライヴ会場に足を運ぶミュージシャンはいるが、彼女のように他のアーティストのライヴに足しげく通う人は意外に少ない。プロの音楽家も元々は熱心な音楽ファンだったはずだが、自分で演奏活動を始めると初心を忘れてしまうのだろうか。他のアーティストの演奏を観ることは刺激にもなるし人脈を広げるのにも役立つ。その経験が自らの演奏に深みと幅広さを与えることになる。その意味でも吉本嬢のフットワークの軽さは正しい演奏家のあり方だいえる。

ここまで書いて何度も顔を合わせている割には経歴を知らないことに気づき彼女のブログ「放牧地帯」でプロフィールを見てプチサプライズ。ロックバンド活動を経て2006年に即興演奏を始めたとのことだがその最初のライヴにギタリスト増田直行氏の名前があり以降何度も共演している事実を発見。増田氏はこのブログで紹介した80年代地下ロックシーンで活動した前衛バンド「陰猟腐厭」のメンバーである。実は昨年末同バンドのドラマー原田淳氏にメールを送り年明けにご返事をもらったばかりだった。返信メールには私の質問への返答と1月14日高円寺ShowBoatに出演すること、そして「ちょうどさっき、メンバーの増田直行と新年電話で、そろそろライブとか新作を・・・と話してた」と書かれていた。とてもありがたいメールで昨日書いたヴァニティ・レコードの件と共に新年早々めでたい出来事の連続に喜んでいたところ。さらにK2=草深公秀氏とも陰猟腐厭の話でひとしきり盛り上がった。そこにきて吉本嬢と増田氏の繋がりが明らかになるとは2013年も目に見えぬ運命の糸に操られる一年になりそうだ・・・・。

吉本嬢のライヴを観るのは昨年9月広瀬淳二氏&ダニエル・ブエスとの共演以来2度目。グンジョーガクレヨンの組原正氏、園田游氏との共演である。昨年八丁堀七針で2回行われたグンジョーのライヴに吉本嬢も来ていたがまさかの共演に驚くとともに彼女の精力的なライヴ通いの成果だと納得。広瀬氏の場合もそうだが実際にライヴに足を運びその場で共演の交渉をするという「アタクダ(=当たって砕けろ/造語)」精神の本領発揮である。組原氏は昨年後半からグンジョー以外のセッション活動を意欲的に行っている。園田氏も2009年のグンジョー解散表明以来肥後ヒロシ氏や広瀬氏他様々なアーティストとコラボしている。そんな3人が一堂に会するライヴにはグンジョーの前田隆氏やフォトグラファー佐藤ジン氏、七針でグンジョーとコラボした絵本作家の高岡洋介氏など馴染みの顔ぶれも集まり満員盛況。新年の挨拶が飛び交うアットホームな雰囲気だった。

最初は組原氏のソロ。昨年のソロ・アルバム「inkuf」レコ発はT.美川氏、中尾勘二氏、グンジョーの前田氏、宮川篤志氏とのセッションだったので完全なソロは初めて観る。ヴォイスをループしカオスパッドで変調させた奇怪な音響の上にギターの弦を撫で回す独特の奏法が炸裂。以前「inkuf」での演奏を「存在を否定されたギター」と表現したがまさにその通りの”非ギター・サウンド”が展開される。畸形ヴォイスを交えたパフォーマンスは”演奏”というより”表現”と呼ぶ方が相応しい。現代美術に”音楽ではない、音を用いる芸術”の総称として「音響彫刻」「サウンド・アート」という呼び名があるが組原氏のパフォーマンスはそれに極めて近い。グンジョーガクレヨンから切り離してみるとその特異性がいっそう際立った貴重なステージだった。


(撮影・掲載については出演者の許可を得ています。以下同)

続いて吉本嬢と園田氏のデュオ。元々舞踏家だった園田氏の白塗り白装束の姿態がゆっくりと蠢く後ろで吉本嬢のギターが奏でられると一遍の映画を観ているような気分になる。吉本嬢の演奏は組原氏とは違いあくまでギターの音に拘り基本となる音域をしっかりキープした上で低音から高音までバランスよく即興を展開しを試みるスタイル。ディストーションやE-Bowで持続音を奏でるところはロックの出自を感じさせるがそんなジャンルから軽やかに逸脱するプレイは彼女のフットワークそのものの柔軟さに溢れている。以前観た時女性ギタリストにしてはユニークだと感じたが、改めて男女は関係なく極めて個性的な存在であることを確信。「ノイズ界のクール・ビューティ」といわれる美貌なのに演奏に没頭して顔を伏せてしまうのが玉に傷、と言ったら叱られるだろうか。組原氏はYouTubeで彼女の演奏を観て”三味線ギタリスト”(ママ)かと思っていたら全然違って素晴らしい演奏にすっかりファンになってしまったと絶賛していた。



最後に3人のセッション。左右にスタイルの全く違うギタリストを配して真ん中で踊る園田氏が圧倒的な存在感を発揮する。ドラムもベースもヴォーカルもないがこの構図は正にロックバンドそのもの。音だけ聴いたらフレッド・フリスとヘンリー・カイザーのデュオのようだろうが園田氏の舞踏の求心力が全く異次元のサウンドビジュアル空間を創造する。音のない存在がサウンドとして聴こえるという不思議な世界は実際に目にしなければ分からないだろう。ライヴは生モノ、現場で体験しなければ完全には伝わらないというのは紛れもない事実である。



終演後出演者+友人総勢10名で打ち上げ。久々の再会に話が弾み奇矯な顔芸パフォーマンスを披露する園田氏と気さくな会話の端々に確固たる信念が滲み出る組原氏が対照的で面白い。佐藤ジン氏から興味深い提案があり、もし実現すれば素晴らしいことになるだろう。これからもグンジョー及び吉本嬢を巡る動向に注目していきたい。

ライヴ観て
受けた霊感
身に纏う

佐藤ジン氏の1986年制作の貴重な写真集「GIG」を久々に開いてみた。BGMに「CASE OF TELEGRAPH」をかけたら見事にシンクロして写真の生々しさが眼前に迫ってきて恐ろしいほどの感動に震えた。現在でも有名な地引雄一氏の写真も素晴らしいが時代のドキュメントをヴィヴィッドに切り取った佐藤氏のポートレイトは再度きちんと整理して日の目を見せる必要があることを強調したい。
→作業半ばで中断されたままのアーカイヴサイトはコチラ
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K2/CARRE@幡ヶ谷 FORESTLIMIT 2013.1.5 (sat)

2013年01月07日 01時32分28秒 | 素晴らしき変態音楽


【Spilit Alive vol.2】
” electron metals crush !!! “
【LIVE】K2/CARRE【DJ】SUNGA/napalm kataoka

forestlimitが運営するDIYメディアレーベル”grayfield”第一弾リリースアーティスト”K2″をお招きしてリリースパーティを開催します!!!! K2はKING OF METAL JUNKと評される激ラウドなハーシュノイズ。スプリットライブのもう一翼は日本のインダストリアルミュージックの急先鋒”CARRE”。DJにベース ミュージックを独自な世界観で拡大していくsunga (corehead)を配し、電子と金属が衝突し、唸り、捻れ、フロアに音となり響き渡る様をぜひ体験下さい!!!(FORESTLIMIT HPより)

このライヴに参戦できたのは阿木譲のお陰という新年早々偶然の賜物だった。

アナログ盤が聴けるようになったので早速レコ屋巡りを始め、先日の新宿MARZでのいずこねこのライヴが昼の部だったのでそのあと10数年ぶりに西新宿を探索してみた。Vinyl Japanは来日アーティストのチケットを買いに行くので営業しているのを知っていたが昔通った無数のレコ屋がどうなっているか期待と不安を胸に記憶を便りに彷徨った。まず創業40数年の老舗新宿レコードへ行くときちんと営業していた。しかも名物店長マダム藤原さんと旦那さんがカウンターにいらっしゃたのに感動。在庫はさすがにCDが90%になったが欧米のレアなプログレ/ハードロックの並ぶ品揃えは昔のまま。アナログしかも日本のインディーズ目当なので4列しかないアナログ盤エサ箱の端の一列の邦楽コーナーを期待せずチェック。どこにでもありそうなJ-Rockやメタル系が並びこんなものかなーと思いつつレコヲタの本能で直感的に最後の10数枚に何かあると感じた。手にした茶色封筒の重量のある2枚組LP。むむこれは2年前に初CD化されたオムニバス「沫 FOAM」のオリジナル盤の未開封新品。価格は\2000。LPもCDも持っているがこの値段で入手出来るとはラッキーと喜んだのも束の間、次のLPが昔吉祥寺ジョージアの壁に飾ってあった緑ジャケと同じく灰色ジャケ。何とヴァニティ・レコードのオリジナル盤が2枚も!価格はどちらも2000円。これも未使用新品だった。

▼BGM「Background Music」vanity 0008 (1980)


▼TOLERANCE「DIVINE」vanity 0012 (1981)


以前特集したようにヴァニティ・レコードは大阪の先鋭的音楽雑誌「Rock Magazine」編集長の音楽評論家阿木譲主宰の自主レーベルで1978~82年の間にアーント・サリーの唯一のLPを始めLP11枚、EP3枚、カセット6本、雑誌付録ソノシート12枚リリース。アーント・サリー以外は匿名性の高いテクノ/エレクトロ/アヴァンギャルド系ユニットでプレス枚数は数百枚、アーント・サリー以外は再発されておらず中古市場で高値で取引されている。それが新品で眠っていたとは驚きである。果たして30年間エサ箱で無視されてきたのかデッドストックが発見されたのか判らないが奇蹟としか言いようがない。

感激のあまりツイッターで呟いたら「それは欲しい」と返信が来たのがK2=草深公秀氏だった。ツイッター上で何度かやり取りしたこともあり、最近Facebookでも友達になっていたので「在庫がまだあるか新宿レコードに確認します」と返して翌日新宿レコードに電話。残念ながら在庫はないとの返事を草深氏に伝えたら「今日のライヴ来ますか?」とのメッセージ。草深氏は現在静岡がんセンターの医長で三島市在住なので東京でライヴを観る機会は滅多にない。対バンは注目のテクノイズユニットCARRE。これは阿木譲のお導きだ、行くしかないと急遽参戦することになった次第。ちなみにどちらも今年のノイズ福袋に入れたのも何かの縁か。

先着20人限定でK2のCDRプレゼントとあるので早めにFORESTLIMITへ。10人くらい客がいた。顔見知りのCARREのMTR氏に挨拶するとヴァニティLPの件をツイッターでチェックして気になっていたとのことでここでも阿木譲の影が。ヴァニティ・レコードのSympathy Nervousが現在も活動中で最近海外のレーベルから初期未発表音源LPをリリースしたことを教えてもらう。発売元がクラブDJ向けレーベルなのでノイズ/アヴァンギャルド系しショップ&ファンには全く知られていない。これまたいい情報をゲット。阿木さん、ありがとー!

DJのSUNAGA氏がプレイする先鋭的な音響の中CARREからライヴ開始。NAGとMTRの二人組で初めて観たのはヘア・スタイリスティックスのイベントだった。最初の印象はノイズというよりテクノだったがヘアスタとの共演や映像とのコラボなど何度も観るうちにこれが新世代のノイズ・ミュージックの在り方だと確信するようになった。オールドスクール・ノイジシャンのようにエフェクターを並べるのではなくヴィンテージEMSシンセとギターというアナログ楽器と最新デジタル機器を組み合わせたサウンドは単なるテクノイズではなくノイズの伝統を新世代の感性で活かした独自のもの。暗闇に近い照明の中淡々と雑音をクリエイトするスタイルは美川俊治氏が言う「ノイズ高齢化問題」に対するひとつの回答だと言えよう。


(撮影・掲載については出演者の許可を得ています。以下同)



そのままK2のライヴ。1981年から活動するベテランで故MSBR田野幸治氏主宰のノイズ専門誌「電子雑音」の編集・寄稿者として名が知られている。電雑で本格的にノイズの世界に足を踏み入れた私には良き旅先案内人であり素晴らしきノイジシャンであった。ノイズの意味についてはいつか別項で考察したいと思うが、所謂ジャパノイズのルーツはメルツバウ=秋田昌美氏に集約されると思う。ひとり(最初は水谷聖氏とのデュオ)で大量の機材を繋ぎ騒音を創造するスタイルを世界で最初に知らしめたのはメルツバウではなかろうか。そのスタイルに倣って全国各地に有象無象のノイジシャンが生まれたのが世界に誇るジャパノイズの特異性だと思う。時と共に自然淘汰されたので現在活動している人たちは間違いなく本物だといえる。

K2のサウンドは無数のおもちゃ箱をビルの上から投げ落とすように雑多な音響が盛り込まれた目紛しい展開が特徴で俗にハーシュノイズと呼ばれるジャンルの中でも喧しさと過激さでは群を抜いている。自らのレーベルKINKY MUSIC INSTITUTEから大量の作品をリリースしているがおススメはCD4枚組「Sexencyclopedia」(2001)。ドクターK2による雑音治療の特効薬は余りの喧噪故にiPodなどで聴くと逆効果で事故ること請け合い。ヘッドフォンで安静の上診療を受けるべし。初めて経験する生演奏は20近いエフェクターを並べたまさにオールドスクール・スタイルで大音量の電子雑音コラージュを展開。一見ユーモラスなずんぐりした姿体を揺すって繰り出すアクション・ノイズにはとても安静にしていられない。超多忙な医師なので年2回しかライヴができないという草深氏の貴重な生演奏を体験出来たのはホントに幸運だった。





最後にK2+CARREのセッション。CARREは自前の巨大ウーハースピーカーを持ち込み地響きする重低音を出す。K2の過激なサウンドに普段はクールなCARREの二人が珍しく激しいアクションを見せる。ノイズ×2=10000くらいの壮絶で芳醇な空間に溺れた。





中原昌也氏も観に来ていたので新年の挨拶。今年は暮らしが楽になればいいね。

阿木譲
逮捕されても
福の神

帰宅してK2のCDRをかけたら突然パソコンがフリーズした。まさに執念の籠ったサウンドである。

ちなみに西新宿はVinyl Japanと新宿レコード以外はヴィジュアル系とブート屋ばかりだった。
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百鬼夜行の回想録~80'sインディーズ特集 第9回:普段着の脱臼ロック女子サボテン

2013年01月06日 02時03分50秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


数年ぶりにアナログ盤を聴ける環境になり昔のLPやシングル盤を引っ張り出して聴き狂っている。日本のインディーズ盤ばかり。CD化されiPodの定番になっているものもアナログ盤のジャケットやインサートを眺めながらくるくる回るのを聴くのは格別だ。愛聴していたヴァイナルに命を吹き込むと30年前の記憶が色々蘇ってくる。この感慨はCDでは味わえないアナログ独特のものだろう。

女の子3人組サボテンは当時よく聴いていた。1981年10月結成、12月25日原宿クロコダイルでライヴ・デビュー。対バンはS-Ken、突然段ボール、すきすきスイッチ、Pablo Picasso他とある。S-Ken以外は日本のニューウェイヴ第2世代のバンドである。翌1982年精力的にライヴ活動を行い10月蔦木栄一プロデュースで1stアルバム「サボテン」をリリース。突段主宰のフロアレコードのアナログ盤第1弾(リリース第1弾はFRED FRITH&突然段ボールのカセット)ということもあり注目され多くの雑誌で紹介され自主盤取り扱いレコード店でも基準在庫として幅広く販売された。当時の評価は「突段の女性版」「ズレたリズムがユニーク」「シュールなロック」といった感じでくせ者揃いのインディーズ界でも際立つ個性が評価された。その割にはバンド自身のインタビューやグラビア記事を見た覚えはない。メディア的には目を惹くルックスや過激な言動・ファッションのバンドに興味が行ってしまい普段着の街中の女子大生といった風情のサボテンは取り上げるのが難しかったのだろう。突段もバンドとしてのメディア露出は少なかった。

1stは貸しレコで借りて聴いてスカスカのサウンドが面白く同時期にデビューした少年ナイフと共に愛聴していたが、自分で買ったのは1984年のEP「いつもある」だった。発売日は2月1日、購入したのは下北沢五番街で2月8日となっている(私はレコードに購入日・店名のメモを入れている。後々記憶を辿るのに役立つ)。自主制作盤は発売日が前後するのが当たり前なので実質発売日に購入したといえる。それほど楽しみにしていたのだろう。小遣いが少なく新品LPを月に何枚も買えないので代わりに7"やソノシートを購入することが多かった。「いつもある」は4曲入で\1000。ポスタースリーヴでお得感があった。LP以上に自由度の増したサウンドと覚え易いメロディーと哲学問答のような歌詞が好きだった。特に2曲収録されたインストが不思議なシュールさを醸し出していて無邪気な狂気を感じた。この2曲がエリック・サティ作曲と知ってクラシック好きの父のレコード棚を探したら「ジムノペティ」のLPがあり甘いピアノの調べに酔った。同じLPにプーランクやミヨー等フランス現代曲が収録されていてエスプリに満ちた世界に惹かれた。同じ頃にブリジット・フォンテーヌを始めとするサラヴァレーベルの再発、Fool's Mate誌でのフレンチメタ特集がありフランス語を履修してよかったと思った。かといって授業には出なかったが。



80年代の音源が「ノン・ポジション」としてCD再発されている。数年前に買って聴いてはいたが改めてブックレットの年表を読んで驚いた。大好きだったサボテンを当時観なかったことを後悔していたのだが、年表にこうある:"1983/12/28吉祥寺GATTY"NOISE"83東京JAPAN Coming from unknown age 霜田誠二、赤木電気、アザールーム、吉川洋一郎、凶悪インテンション"。このブログの長年の読者の方なら覚えていると思うがアザールームとは当時私がやっていたユニットである。全く記憶にないし録音も残っていないが、この時代にぎゃていでOTHER ROOMを名乗って活動していたのは私のユニット以外には考えられない。何と対バンしていたとは!クリビッテンギョー(超死語)である。



▼1st+シングル+未発表曲集「ノン・ポジション」いぬん堂/WC-023/2002/CD


サボテンはマイペースで散発的に活動を続け1992年に2ndアルバム「目覚める」、2002年に3rd「つづく夢」をリリース。10年毎のリリースなので昨年4thが出るかと思ったが出なかった。同名のパンクバンドがいるので困難な検索の末探し当てたオフィシャルサイトからメンバーの松本里美とミヤガワイヅミの個人サイトにリンク出来る。それぞれ健在で活動しているようである。松本のサイトでは2003年FM豊橋での全8回に亘る【STEP ACROSS THE BORDER サボテン特集】のサウンドファイルが聴ける。突段の日本カセットテープ・レコーヂングから「レッツ・サティー!」というロル・コクスヒルとの共演を含むサティー曲集CDRもリリースされている。

▼2nd「目覚める」SABOT/SOBO-002/1992/CD


▼3rd「つづく夢」いぬん堂/WC-024/2002/CD


サボテンとしての活動再開の可能性もありそうなので期待するとしよう。

サボテンは
トゲがあるけど
痛くない

2ndからグンジョーガクレヨンのドラマー宮川篤志が参加しているのも興味深い。ミヤガワイズミと同姓だが両者の関係は?
コメント (2)
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いずこねこ/nanoCUNE@新宿MARZ 2013.1.4 (fri)

2013年01月05日 00時37分59秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


【初期衝動 Vol.1】
出演:nanoCUNE、いずこねこ

2013年のライヴ始めはアイドル・イベント。注目の猫系小動物NEOアイドル「いずこねこ」のライヴ。対バンのnanoCUNEは愛媛のご当地アイドルひめキュン フルーツ缶の妹ユニット。平均年齢13歳!小6~中2、若いというより幼い!昨年10月に2ndシングル「衝動DAYS」をリリース。「初期衝動」はそれに因んだ対バン・イベントだと思われる。昼夜2回公演で昼の部に参戦。

新宿MARZは歌舞伎町の側にあるキャパ200人のライヴハウス。クラブ系とアイドル中心のハコのようだがトイレに下山Gazenのポスターが貼ってあった。物販で1/23発売の初の全国発売シングル「ROOM EP」が先行販売されていたので即購入。観客は99.9%男性。nanoCUNE Tシャツが7割、ねこTシャツが3割くらい。私はこれがライヴ始めだが、アイドルヲタの方々は2日の「Hello! Project 誕生15周年記念ライブ2013冬 ~ビバ!~」から3日連続でイベントに参戦なさっている様子。いずこねこも今年のライヴは3日目。アイドル&ヲタに正月休みはない。

改めてタワレコ限定デビューアルバム「最後の猫工場」を聴き直したがクールなエレクトロニカにヲタの方々がどのように反応するのか想像つかない。開演前「ねこが先らしい」「ねこはどんな恰好かな」とペット自慢コンテストのような会話が飛び交う。暗転してテクノビートが大音量で流れると最前列を占めていたnanoCUNEファンが後ろへ移動、参勤交代の流れに乗って最前列へ移動。いきなりねこがステージへ飛び出して来るとピョンピョン跳ねてOi!Oi!と煽る。満員のヲタ諸君が一斉に腕を振り上げて反応。ミニスカートのスポーティーな衣装はまるでチアリーダー。CD通りの大人びた声で抑揚のないメロディーを歌いながら一時も足を止めずステージ上を走り回るねこ。

彼女の曲にはサビがないにも拘らずパート毎に振りがあって、手拍子とOi!Oi!コールとジャンプと左右腕振りとお迎えポーズが休みなく繰り出される。アイドル・イベントも慣れてきたのでだいたいの振りの流れは判るようになった。郷に入ったら郷に従え主義なので周りに併せて腕を振りジャンプする。思いっきり変拍子だけどビートは四つ打に収まるので跳ねていても不自然じゃない。しかし「何故ここでジャンプする?」「ここで腕振り来るか?」「このダンス変じゃね?」と思う自分がいることも確か。跳んでる自分と冷静に分析している自分が共存するアンバランスなシチュエーション。結局楽しければいいやとビートに身を任せる快感主義が勝利を収めた。



それにしても凄い運動量。45分のステージだがユニットじゃなくひとりきりなので絶え間なく盛り上げ続けるしかない。まるで猫じゃらしにじゃれるように跳ね回るねこの運動神経の良さに恐れ入る。まさに暴れ猫、女番長野良猫ロック。アイドル・イベントでこんなに楽しかったのは初めてだ。大声で「にゃん!にゃん!」と叫ぶ快感。いい汗かいたニャ~。

nanoCUNEはホントに幼い子供たちが健気に歌い踊るのが観ていて気持ちよかった。曲は判り易い正統派アイドルポップスで4人のダンスもピッタリ合っていて楽しめる。声が高いのでボーカロイドのようだ。終演後のサイン会で年上の男子ファンに対して堂々と受け応えしている彼女たちを見てさすがアイドル、プロだなと感心した。



いずこねこのサイン会&チェキ会に参加。スタッフの対応がとても優しいのに好感を持つ。JK=19歳のいずこねこ=茉里ちゃんは華奢な身体のどこにあの暴れ猫のパワーがあるのか不思議。どんなアーティストが好きなのか聞いたらアルカラの名前が挙がった。同じ関西出身なので親近感があるに違いない。人気はまだまだ今後に期待だが、エレクトロニカ+ネコ+アイドル=いずこねこには最大限の注目をしていきたい。

エレクトロ
にゃんにゃん叫べば
いい気持ち

帰宅して「ROOM EP」を聴くとのっけから変拍子ワルツビートの変態トラック。ヲタノリしたのが夢の中に霧散していくようなシュールな感覚に襲われた。
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百鬼夜行の回想録~80'sインディーズ特集 第8回:耽美の歌姫SYOKOとG-SCHMITT

2013年01月04日 00時22分28秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


この回顧シリーズの第4回でパンク少年たちの心と下半身を魅惑した女性アーティストを特集した。80年代ニューウェイヴを象徴する女性シンガーといえば戸川純とPHEWだろう。純ちゃんはゲルニカでの妖艶さとTVや雑誌でのキュートさでニューウェイヴを超えたお茶の間のアイドル。PHEWは文学系クールビューティーの孤高のカリスマ。どちらも高嶺の花で手が届かない存在だった。より身近な"会いに行ける"アイドルとして人気だったのがD-DAYの川喜多美子とG-SCHMITT(ゲーシュミット/以下ゲーシュミ)のSYOKOだった。

ここ数年アナログ盤を聴くことが殆どなくレコードプレイヤーを使わなかったのですっかり老朽化して聴けない状態だった。数千枚のアナログ・コレクションが無用の長物と化していたのだが、大掃除で10数年前に東京タワー蝋人形館ショップで購入したポータブルプレイヤーを発掘し、これまた骨董品のMDラジカセに繋いだら結構いい音が出ることが判明。嬉しくてアナログを聴き狂っている。その中にゲーシュミのデビューLP「Modern Gypsies」(1985)があった。買ったのは覚えていたが厚手のマット紙印刷のジャケット、歌詞カードに加え直筆サイン入ポスター封入とインディーズとは思えない豪華な仕様に改めて驚いた。ゲーシュミは他にLP「gArNeT」(1988)と12"EP「Sillage」(1989)を所有しているがいずれも写真や印刷や録音のクオリティが非常に高い。どれもSYOKOの写真ジャケというのが当時彼女の美しさに惚れていたことを証明している。

G-Schmitt ✞ Mescaline Dream (1986)


ゲーシュミの所属レーベルWECHSELBALG(ヴェクセルバルグ)はAUTO-MODのジュネがテレグラフ傘下に設立したポジティヴパンクの象徴的レーベルでAUTO-MOD、ゲーシュミの他にSADIE SADS、NUBILE、SODOM、SARASVATI等のバンドをリリース。ポジパンの耽美イメージを具現化したこだわりの音作りとアートワークはテレグラフの地引雄一が「1枚出すと100万円の赤字」(DOLL増刊「パンク天国4」より)と言う程の贅沢さだった。それ故1985年にテレグラフは手を引き、以降はテレグラフの重役だった宮部知彦が独立して運営した。ヴェクセルのリリースは確認出来る限りでは1991年のAUTO-MODのカタログのCD化が最後である。

G-Schmitt - LSD live


何回か書いたが私は大学時代ゲーシュミと同じ音楽サークルに所属していた。しかも彼らと同期である。しかし私のメイン活動は別のサークルでゲーシュミ所属サークルにはヘルプ参加だったので特にメンバーを個人的に知っていた訳ではなく学園祭で数回ライヴを観た程度である。ゲーシュミのことを当時の友人やファンサイト掲示板などで調べるとバンド名は部室の壁にあった「芸趣味人」という落書きをドイツ語風に読み替えたということや、部誌にキスマーク入りのコメントを書いたこと、当時の部長の家に遊びにきたSYOKOが大盛りカレーをペロッと平らげたこと、よく部室でカップ麺をすすっていたこと、笑い声が豪快なので「笑子」と呼ばれていたこと、1983年武道館で大学入学式のサークルプレゼンで演奏したこと(私も別のサークルで同じステージに立った)等のエピソードがあった。ポジパンの女王も現在の若手ミュージシャンやアイドルと同じで素顔は普通の女子大生(注:津田スクールオブビズネス説もあり)だったのである。

ただしメンバーが就職で次々脱退する中でSYOKOがひとり意を決してゲーシュミを背負って活動していたことは間違いない。" SYOKO=G-SCHMITT"というパブリックイメージは正しい。1989年「Salliage」を最後にバンドは解散。1986年にジブリ映画で知られる作曲家久石譲とのコラボアルバム「SOIL 未来の記憶」でソロ・デビューしていたSYOKOは1992年BANANA(EP-4)、ブラボー小松、矢壁アツノブ(PINK)、JOJO広重等をバックに2ndソロ「TURBULENCE」をリリース、手塚眞の映画にも出演したが90年代半ばにはシーンから忽然と姿を消してしまう。一説には宮部知彦と結婚したといわれるが定かではない。

G-Schmitt 1985.2.14


ゲーシュミのCDはヴェクセル音源コンピ「Struggle to Survive」とリミックス盤「alternative gArNeT」、ラストEP「Sillage」の3枚が80年代末にリリースされたきり廃盤で入手困難。現在CDで入手可能なのは1984年リリースのオム二バス「時の葬列」(他にAUTO-MOD、SADIE SADS、MADAME EDWARDA収録)の2曲だけである。ファンサイト掲示板では再発を望む声が高い。AUTO-MODはレア音源を含め代表作がCD化されているし、SADIE SADS、NUBILE、SARASVATIの3バンドは2011年EP-4&佐藤薫復活に際して「MOODOO DANCER:Do the Flop with Sadie Sads, Nubile & Sarasvati」という3枚組CDでほぼ全音源が網羅された。ゲーシュミだけ再発されない理由は恐らくSYOKO本人か宮部の意向が働いているのだろう。当時の話を聞きたいと同期の元メンバーに連絡したのだが梨のつぶて。触れられたくない過去なのかもしれない。SYOKOのソロは1stが廉価盤CDで入手可能。これでも充分萌える。

Syoko - Erewhon


アナログ盤のちりノイズ混じりに流れるSYOKOのヴォーカルは強い意志と高い美意識に溢れた完成度で30年近く経った現在でも全く色褪せていない。そしてジャケットや雑誌のグラビアでの美しさは凛々しさと可憐さを兼ね備えた魔性の魅力。いつの日かゲーシュミの全貌が明らかになることを切に願いたい。

芸趣味人
Kの葬列
遊戯終焉

川喜多美子さんは数年前にD-DAYの新譜やソロCDRをリリースしお元気な様子。SYOKOからも何かしらの便りがあってもよいのでは?
もし関係者の方がこのブログを読んでいたら是非ご連絡ください。

【2018.2.3追加】
【G-SCHMITT@新宿LOFT '88.12.17】―活動停止宣言LIVE!

1.Kの葬列
2.ICAROS DESCENDING
3.The Ark
--MC-- 【活動停止宣言】
4.BALSAM
5.遊戯終焉
6.Someday Somewhere
7.Cathedral Junky
--MC--
8.Ground Circle


9.Isis
10.Mescaline Dream
11.Belladonna
12.Farewell
―アンコール1―
 ・Catholic
―アンコール2―
 ・LSD
コメント (11)
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謹賀新年2013 お年玉~ノイズ年賀状&ノイズ福袋

2013年01月03日 00時23分53秒 | 動画の歓び


【ノイズ年賀状】



【ノイズ福袋】


コチラ

このブログ
はっきり言って
手抜きです

明日からはちゃんと書きますのでなにとぞ! 
m(_ _)m
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謹賀新年2013~燃え上がるガールズパワー特集【動画コメント・過去記事リンク付】

2013年01月02日 01時08分25秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


【きゃりーぱみゅぱみゅ】

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【チャットモンチー】



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【吉川友】



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【バニラビーンズ】

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女子力が
爆発するよな
匂いさん[2013]

【キノコホテル】

明けたわね。今年も強くヤラしく美しくイカせて頂くわ。
引き続きキノコホテルをどうぞ宜しく。
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灰野敬二@高円寺 ShowBoat 2012.12.30 (sun)

2013年01月01日 00時46分28秒 | 灰野敬二さんのこと


灰野敬二 Keiji Haino
灰野敬二 公演
open 16:00 - start 16:30
※例年とは時間が異なりますのでご注意ください。 ※22:00の終演を予定しております。

フライヤーの裏には「まだ 温かいうちの この今に すべての謎を 注ぎこもう」という言葉。恒例の灰野さんの年末ShowBoat公演、例年はオールナイトだが今年は夕方からのライヴ。2012年還暦イヤーは不失者の本格始動と2作のアルバム・リリース、亀川千代+Ryosuke Kiyasuとの新世代ロングヘアートリオ編成の不失者の結成とFREEDOMMUNE ZERO <0>への出演、映画「ドキュメント灰野敬二」公開と単行本「捧げる 灰野敬二の世界」出版と活動が活性化し世間的に大きな注目を集めた1年だった。映画と単行本により知られざる灰野ワールドの神秘のベールの向こう側がかなり明らかにされたが、それ故に新たな謎が生まれエニグマとしての存在は微動だにしなかった。42年間の音楽活動いや60年の人生にに全くブレがないことが証明されただけである。還暦とは灰野さんにとってはひとつの通過点に過ぎない。「まだまだカッコ良くなるからね」という映画の台詞そのままの1年間。その総括に"すべての謎を 注ぎこ"むソロ公演である。

深夜でも盛況の公演、今年はさらに注目され開場時間には長蛇の列。15分押しで開場。今年の灰野さんは例年になく時間に忠実である。会場内はお香とヴァイオリンのSE。まだ夕方だいうのが不思議な気分がする。ブルガリの弾き語りでスタート。ギター、ドラムマシーン、発振器、エアシンセ、パーカッション、ヴィーナ、ハーディーガーディーと様々な楽器を駆使して深いヴォーカルで祈りの言葉を捧げる演奏は例年同様休憩を挟んでのべ5時間30分のロングセットだった。オールナイトだと途中睡魔で記憶が飛んでしまうが今年は完全覚醒状態で言葉・歌・演奏のすべてを吸収した。

「わたしと 今 どっちがどっちに にじんでいる」と1989年の不失者の1stアルバムにサブタイトルが添えられている通り歌や楽器の音が皮膚から滲み込むような時空間。魂ごと連れて行かれる瞬間の連続体。暗闇が空気を振動させる波動に満ち溢れる。この存在の前にはサレンダー(降伏)しかない。音に身を委ねる自分とそれを冷静に分析する自分が共存する。分析家が考える。これは、この人は一体何者なのか?

2001年に初めて不失者の3時間ライヴを観た時には「長いな、参ったな」と困惑を感じた。しかし未知の世界に興味が沸きライヴを何度か観るうちに時間の長さは関係ないことに気づいた。ロングセットだろうが45分一本勝負だろうが灰野さん独自の世界が確実に現出するのだ。

2002年12月4日早稲田大学でダダ研究家塚原教授が開催した灰野さんの講演会のメモには「祈り=呪い」「"わかる"より"わかれる"」「愛情="こんなもんじゃない"という気持ち」「人間はもっともっとできるはず」「どれだけ心を込められるか」といった映画や単行本そのままの言葉が並んでいる。同年12月21日法政大学学生会館大ホールの不失者で初めて6時間半の長時間ライヴを体験した。生まれて初めての幽体離脱体験だった。以来2004年に火災で閉鎖されるまでは法政大学学館で、それ以降はShowBoatで年に最低一回開催される長時間ライヴを経験てきた。ロングセットに慣れてしまったので考えたことがなかったが、ノイズ電車が世紀のアートイベントだとしたら、この長時間ライヴは一体何なんだろう。

長時間ライヴを行うアーティストは他にもいる。例えば往年のグレイトフル・デッドのコンサートは最低4時間長い時は8時間にも及んだという。日本のアーティストでもコンサートが3時間以上に及ぶ場合がある。しかしデッドはマリファナでハイになってユルいジャムセッションが続くだけであり、J-Pop系は持ち歌をたくさん演奏するだけである。灰野さんのように即興的に様々な種類の楽器を持ち替えて恐ろしいほどのハイテンションが持続する長時間演奏をたったひとりで行うアーティストは世界中どこを探してもいないに違いない。

私と同列に演奏が激しくなるとステージを見ないで一心不乱に激しいヘドバンを繰り返す客がいた。10年前不失者のライヴで「おまえ」が演奏されるといきなり立上がり激しく痙攣ダンスをする客がいた。曲が終わると大人しく座りそのまま何事もなかったように最後まで鑑賞する。毎回「おまえ」の時だけ痙攣するのである。久々に似たような極端な反応をする人を見た。こんなリアクションは他のライヴでは観たことないしたぶんあり得ないだろう。こんな反応を引き起こす強烈な磁力とパワーは間違いなく世界に唯一無比であろう。

世界でただひとつの奇蹟を我々は体験している訳である。この幸福に感謝せずにいられようか。


(撮影・掲載に関しては出演者の許可を得ています)

奇蹟と共に暮れた2012年。2013年もいい歳になりますように!

あけました
奇蹟に満ちた
ニューイヤー

<灰野敬二ライヴ情報>
1.19 (土) 中目黒solfa "und so weiter 1st anniversary" DJ 灰野敬二他
1.27 (日) 東高円寺U.F.O. CLUB U.F.O.CLUB 17周年記念 灰野敬二ワンマンライブ
LIVE:灰野敬二 [ゲストミュージシャン; 菊地成孔, やくしまるえつこ]
3.11 (月) 代官山 晴れたら空に豆まいて Flags Across Border 20130311 プロジェクトFUKUSHIMA!自主連動企画 vol.ii 3.11後の世界、音楽の虹の橋
灰野敬二×スガダイロー
3.17 (日) 六本木SuperDeluxe 灰野敬二+ジム・オルーク+オーレン・アンバーチ



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