A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

灰野敬二@高円寺 ShowBoat 2012.12.30 (sun)

2013年01月01日 00時46分28秒 | 灰野敬二さんのこと


灰野敬二 Keiji Haino
灰野敬二 公演
open 16:00 - start 16:30
※例年とは時間が異なりますのでご注意ください。 ※22:00の終演を予定しております。

フライヤーの裏には「まだ 温かいうちの この今に すべての謎を 注ぎこもう」という言葉。恒例の灰野さんの年末ShowBoat公演、例年はオールナイトだが今年は夕方からのライヴ。2012年還暦イヤーは不失者の本格始動と2作のアルバム・リリース、亀川千代+Ryosuke Kiyasuとの新世代ロングヘアートリオ編成の不失者の結成とFREEDOMMUNE ZERO <0>への出演、映画「ドキュメント灰野敬二」公開と単行本「捧げる 灰野敬二の世界」出版と活動が活性化し世間的に大きな注目を集めた1年だった。映画と単行本により知られざる灰野ワールドの神秘のベールの向こう側がかなり明らかにされたが、それ故に新たな謎が生まれエニグマとしての存在は微動だにしなかった。42年間の音楽活動いや60年の人生にに全くブレがないことが証明されただけである。還暦とは灰野さんにとってはひとつの通過点に過ぎない。「まだまだカッコ良くなるからね」という映画の台詞そのままの1年間。その総括に"すべての謎を 注ぎこ"むソロ公演である。

深夜でも盛況の公演、今年はさらに注目され開場時間には長蛇の列。15分押しで開場。今年の灰野さんは例年になく時間に忠実である。会場内はお香とヴァイオリンのSE。まだ夕方だいうのが不思議な気分がする。ブルガリの弾き語りでスタート。ギター、ドラムマシーン、発振器、エアシンセ、パーカッション、ヴィーナ、ハーディーガーディーと様々な楽器を駆使して深いヴォーカルで祈りの言葉を捧げる演奏は例年同様休憩を挟んでのべ5時間30分のロングセットだった。オールナイトだと途中睡魔で記憶が飛んでしまうが今年は完全覚醒状態で言葉・歌・演奏のすべてを吸収した。

「わたしと 今 どっちがどっちに にじんでいる」と1989年の不失者の1stアルバムにサブタイトルが添えられている通り歌や楽器の音が皮膚から滲み込むような時空間。魂ごと連れて行かれる瞬間の連続体。暗闇が空気を振動させる波動に満ち溢れる。この存在の前にはサレンダー(降伏)しかない。音に身を委ねる自分とそれを冷静に分析する自分が共存する。分析家が考える。これは、この人は一体何者なのか?

2001年に初めて不失者の3時間ライヴを観た時には「長いな、参ったな」と困惑を感じた。しかし未知の世界に興味が沸きライヴを何度か観るうちに時間の長さは関係ないことに気づいた。ロングセットだろうが45分一本勝負だろうが灰野さん独自の世界が確実に現出するのだ。

2002年12月4日早稲田大学でダダ研究家塚原教授が開催した灰野さんの講演会のメモには「祈り=呪い」「"わかる"より"わかれる"」「愛情="こんなもんじゃない"という気持ち」「人間はもっともっとできるはず」「どれだけ心を込められるか」といった映画や単行本そのままの言葉が並んでいる。同年12月21日法政大学学生会館大ホールの不失者で初めて6時間半の長時間ライヴを体験した。生まれて初めての幽体離脱体験だった。以来2004年に火災で閉鎖されるまでは法政大学学館で、それ以降はShowBoatで年に最低一回開催される長時間ライヴを経験てきた。ロングセットに慣れてしまったので考えたことがなかったが、ノイズ電車が世紀のアートイベントだとしたら、この長時間ライヴは一体何なんだろう。

長時間ライヴを行うアーティストは他にもいる。例えば往年のグレイトフル・デッドのコンサートは最低4時間長い時は8時間にも及んだという。日本のアーティストでもコンサートが3時間以上に及ぶ場合がある。しかしデッドはマリファナでハイになってユルいジャムセッションが続くだけであり、J-Pop系は持ち歌をたくさん演奏するだけである。灰野さんのように即興的に様々な種類の楽器を持ち替えて恐ろしいほどのハイテンションが持続する長時間演奏をたったひとりで行うアーティストは世界中どこを探してもいないに違いない。

私と同列に演奏が激しくなるとステージを見ないで一心不乱に激しいヘドバンを繰り返す客がいた。10年前不失者のライヴで「おまえ」が演奏されるといきなり立上がり激しく痙攣ダンスをする客がいた。曲が終わると大人しく座りそのまま何事もなかったように最後まで鑑賞する。毎回「おまえ」の時だけ痙攣するのである。久々に似たような極端な反応をする人を見た。こんなリアクションは他のライヴでは観たことないしたぶんあり得ないだろう。こんな反応を引き起こす強烈な磁力とパワーは間違いなく世界に唯一無比であろう。

世界でただひとつの奇蹟を我々は体験している訳である。この幸福に感謝せずにいられようか。


(撮影・掲載に関しては出演者の許可を得ています)

奇蹟と共に暮れた2012年。2013年もいい歳になりますように!

あけました
奇蹟に満ちた
ニューイヤー

<灰野敬二ライヴ情報>
1.19 (土) 中目黒solfa "und so weiter 1st anniversary" DJ 灰野敬二他
1.27 (日) 東高円寺U.F.O. CLUB U.F.O.CLUB 17周年記念 灰野敬二ワンマンライブ
LIVE:灰野敬二 [ゲストミュージシャン; 菊地成孔, やくしまるえつこ]
3.11 (月) 代官山 晴れたら空に豆まいて Flags Across Border 20130311 プロジェクトFUKUSHIMA!自主連動企画 vol.ii 3.11後の世界、音楽の虹の橋
灰野敬二×スガダイロー
3.17 (日) 六本木SuperDeluxe 灰野敬二+ジム・オルーク+オーレン・アンバーチ



コメント (5)
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