A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

21世紀のポップ・アイコン~きゃりーぱみゅぱみゅ「ぱみゅぱみゅレボリューション」

2012年05月24日 00時38分07秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


待望のきゃりーぱみゅぱみゅのデビュー・アルバムがリリースされた。当然64ページ写真集+DVD付初回限定盤を購入。5月半ばから雑誌の表紙やストリート・ポスターやテレビ番組で続々大量露出が為され心がワクワクしたピンク色に染まっていった。彼女の存在のユニークさはここで書かなくてもあちこちで語られているし、一目見れば誰でも理解できることだろう。私が凄いと思うのは、かつてアイドルが備えていた"大衆性"と極めてマニアックな"前衛性"の両方を兼ね備えている点である。名前の奇矯さもあり子供から大人まで知られている存在。歌は聴いたことがなくてもテレビや雑誌で観ただけで彼女だとわかる強烈な個性。例えばAKB48はCDの出荷数が200万枚という驚異的な売り上げらしいが、メンバーの名前と顔が一致するのは一部の若い年齢層に限られる。少し上の世代になると小娘がたくさんいる集合体としてしか認識できない。

きゃりーは存在としては安室奈美恵、宇多田ヒカル、浜崎あゆみなどに近いと思う。しかし決定的に違うのは原宿文化というローカルなムーヴメントを日本中、いや世界中に広めるシンボル的存在="アイコン"であるということだ。その意味ではレディ・ガガにより近いのかもしれない。今回のアルバムの写真集にはレディ・ガガもビックリの奇抜なファッション写真が満載である。そしてそれが余りに漫画的でセクシャルな要素が皆無であるというのがきゃりーならではだと思う(彼女にセクシーさを感じる向きも多いと思うのであくまで私感であることをお断りしておく)。

さらにサウンド・歌詞への拘りは信じられないほどマニアックである。今や21世紀の小室哲也と言える八面六臂の活躍の中田ヤスタカ氏によるハウス~テクノ~トランス趣味をぎっしり詰め込んだ音作りにはクラフトワークやノイ!、クラスター等ジャーマン・エレクトロ・ロックの影響があるのは間違いない。きゃりーとの日常会話で発せられた一言から想像の翼を広げて紡ぎ出した独特の歌詞の世界にも注目したい。「つけまつける」「PONPONPON」「きゃりーANAN」「でもでもまだまだ」など曲名だけで強烈な印象を与える言葉遊びの連鎖。”ぱちぱちつけまつけて つけまつけまつけまつける かわいいのつけまつける””うぇいうぇいPONPONPON うぇいうぇいPONうぇいPONPON”というダダイズム詩のような意味不明な言葉の羅列と繰り返し。しかしそこには難解さは微塵もない。「おかあさんといっしょ」で幼児たちが大喜びで踊りはしゃぐ光景が目に浮かぶ。彼女の曲は「踊れるリズムと童謡メロディー」というヒット曲の原則に忠実な音作りなのだ。このアルバムからは湿った日本的情念は見事に排除されている。全てがアッパー、とにかく楽しもうという底抜けに明るい歓喜の歌の裏に隠された狂気の深淵に気づいたが最後、中田氏ときゃりーの仕掛けたワナに陥ってしまう。勢いに身を任せて聴き続けると11曲目の「おやすみ」のしっとりした歌に思わず涙がこぼれそうになる。と思ったらラスト・ナンバーで「ちゃんちゃかちゃんちゃん」と感傷をぶち壊す掟破りの暴走で幕を閉じる。



まさにこれはポップアートの21世紀的展開である。ノイズや変拍子こそ無いがアルバム全編聴き終わったあとに残される裏返った世界はヴェルヴェット・アンダーグラウンド「ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート」、イエス「危機」、キング・クリムゾン「太陽と旋律」等に通じるカタルシスがある。きゃりーぱみゅぱみゅの存在は現代文化の最前衛であると言っても過言ではない。UK来日公演のチケットの抽選に外れ続けて凹んだ中年男性諸氏に自信を持って推薦したい世紀の傑作の登場である。

きゃりたんと
お手て繋いで
遊びましょ

上記考察から導き出される結論は以下の通り。
1.本アルバムの英語タイトルは「A Young Person's Guide To Kyarypamyupamyu」とすべきである。
2.「中田ヤスタカ=アンディ・ウォーホール」「きゃりーぱみゅぱみゅ=ニコ」と例えるべきである。
[5/24 12:45追記]
以下の例えも可とする:
 「中田ヤスタカ=セルジュ・ゲンズブール」「きゃりーぱみゅぱみゅ=ジェーン・バーキン」
 「中田ヤスタカ=寺山修司」「きゃりーぱみゅぱみゅ=浅川マキ」
 「中田ヤスタカ=マルコム・マクラーレン」「きゃりーぱみゅぱみゅ=セックス・ピストルズ」
3.今後出版される現代音楽/前衛ロックのガイドブックでこのアルバムを掲載していないものは信用してはならない。
[5/24 13:56追記]
4.山口百恵は菩薩だったが、きゃりーぱみゅぱみゅは曼荼羅である。

<参考映像:本文と深い関係があるので必ずご覧下さい>
注意:途中で止めず各曲最後まで聴き通すこと。







コメント (7)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« EP-4@代官山 UNIT 2012.5.21 ... | トップ | ザ・クロマニヨンズ TOUR ACE... »
最新の画像もっと見る

7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
すばらしい! (mickey)
2012-05-24 02:04:14
きゃりーぱみゅぱみゅも、もちろんですが、
miroさんの分析がすばらしい!
思わず唸ってしまいました。
先日テレビで彼女のパフォーマンスを見て
完成度の高さに圧倒されていたところでした。
今後、目が離せないですね。
返信する
きゃりーたん (OZ)
2012-05-24 04:10:17
ブログ主様

きゃりーたんの名前自体がオヤジの滑舌の
リトマス試験紙になっているのですが、
プロモはいいですね。

初めて見たときは
悪趣味、ガジェット文化きわまれりという
感じで、それが普通にポップに表舞台に
出てきたのにビックリしました。
これがある程度の売り上げを見せたら、
AKB以上にリアルな大衆の反応で、楽しみです。

きゃりーたんは、バレエをやっていたせいか
動きが柔らかいんですよね。
レディー・ガガ、ニッキー・ミナージュなど
と同様、表面的な奇抜さだけでなく
音楽的にも面白いですね。

これを見て育った幼児達はどのような
大人になるのでしょうか。
返信する
すべての若き野郎ども (miro)
2012-05-24 07:39:15
mickeyさま
お久しぶりです!昨日渋公でクロマニヨンズを観てきました。まさに「踊れるリズムと童謡メロディー」でヒットしたヒロト&マーシーの曲を聴きながらきゃりたんと共通するものを強く感じました。宮沢りえとブルハが共演したように、きゃりたんとクロマニヨンズの共演が実現したら面白いですね。Mステかうたばんあたりで企画してくれないかな~

OZさん
毎度投稿ありがとうございます。当初は山口百恵ときゃりたんの共通性について分析しようと思ったのですが、書き始めたら百恵さんについて語る程の知識がないことに気が付き(最初から気が付けってw)、得意の前衛ロック方面から攻めるてしまいました。このブログの読者各位にはこっちのほうが興味を持っていただけると思います。クリムゾンの動画(当時のTV番組)ときゃりたんのPVの色彩感が同質であることに驚きを覚えます。
返信する
む~~~ん (金丸 能博)
2012-05-24 08:00:19
こういうモノをオーバー・グラウンドで見られる。我が国は進んでいるのか、ねじれているのかよく分からないけど、んなことをグダグダ考えることすら阿呆らしくなる突破力にやられてます。
生きてて良かった。NYアンダーグラウンドがテレビで展開されるんだもの。
返信する
NYアンダーグラウンド (miro)
2012-05-24 13:55:17
金丸さん
コメントありがとうございます。
そうすると「中田ヤスタカ=ブライアン・イーノ」「きゃりー=リディア・ランチ」という例えも可能ですが、イーノはコンピ1作だけですからね~。フロイド者として何かいい例えありませんか?
返信する
Unknown (すか)
2012-05-24 21:26:23
これは分析なのでしょうか?
楽しく読ませていただきました。
ブログ主さまに質問があります。もし可能ならお答え頂ければ喜びます。
前衛性と大衆性があり、踊れるリズムと童謡的メロディあれば、誰でも、どこでも、どの時代でもヒットするのでしょうか?
そして前衛性とは何ですか?
私にはきゃりーのヒットと彼女が前衛的であるかは関係のないように見えます。『前衛っぽく見えるか』は関係がありそうな気がしますが…。
返信する
分析 (miro)
2012-05-25 01:05:00
すかさま
この文章は21世紀の精神異常者によるCDレビューという想定で書きました。分析か否か論理性があるか破綻しているかの判断は読者の方にお任せします。
「踊れるリズムと童謡メロディー」がヒットの法則という説はCDジャーナル誌で北中正和さんが書かれていたと記憶しており私は共感しています。
前衛性とは何かとの問いには、自分にとって面白いもの、とお答えするしかありません。
楽しんでいただけたのであれば筆者としてはたいへん嬉しいです。
今後ともなにとぞよろしくお願いします。
返信する

コメントを投稿

ガールズ・アーティストの華麗な世界」カテゴリの最新記事