
Keiji Haino + Sumac – American Dollar Bill - Keep Facing Sideways, You're Too Hideous To Look At Face On
灰野敬二+スーマック『アメリカドル紙幣よ そのまま横を向いたままでいてくれ 正面からは見られたもんじゃないから』
2LP/CD : Thrill Jockey – Thrill 463
Keiji Haino : g, vo, fl
Aaron Turner : g
Nick Yacyshyn : ds
Brian Cook : b
A1.
American dollar bill -
Keep facing sideways,
You’re too hideous to look at face on
アメリカドル紙幣よ
そのまま横を向いたままでいてくれ
正面からは見られたもんじゃないから
B1/D1.
What have I done?
(I was reeling in something white
And I became able to do anything
I made a hole
Imprisoned time within it
Created friction
Stopped listening to warnings
Ceased fixing my errors
Made the impossible possible?
Turned sadness into joy)
しまった
(白いものを手繰り寄せていったら
何でも出来るようになってしまった
穴を開けてしまった
時間を閉じ込めてしまった
摩擦を起こさせてしまった
忠告を聞かなくなってしまった
誤りを片付けなくなってしまった
不可能を可能にしてしまった?
悲しみを喜びに変えてしまった)
B2/C1.
I’m over 137% a love junkie And still it’s not enough
僕は137%以上の愛のジャンキーだ まだ足りない
Recorded at GOK Sound, Tokyo June, 2017.
Mixed September, 2017.
Additional mixing, track edits, mastering October, 2017.
漆黒の自我と重厚な自我の蜜月はいつまで許されるのか?
昨年末からコラボ作品のリリースが続く灰野敬二の最新作は、2017年初夏に来日ツアーを行ったアメリカのヘヴィロックバンド、SUMACとのスタジオレコーディング。7月3日に新代田Feverのライヴで共演したが、その1週間前に吉祥寺GOKスタジオでレコーディングしたという。そのセッションが70分近い壮大なアルバムとなって発表された。レーベルはボアダムズやOOIOOの作品もリリースしているシカゴの名門インディ・レーベル、スリル・ジョッキー。ポストロックのイメージが濃いレーベルだが、昨年25周年を迎え、ヘヴィロックやストーナー系にも力を入れて音楽性の幅を広げている。
⇒SUMAC/灰野敬二/ENDON@新代田Fever 2017.7.3 (mon)
共演ライヴではヘヴィなSUMACサウンドの嵐の中を突き抜ける灰野のプレイが際立っていたが、このアルバムの印象は若干異なっている。灰野がフルートとヴォーカルを担当するA1ではヘヴィなベースとパワードラム、ファズとワウのフィードバック・ギターの三位一体の安定感がカオスよりもコスモスを産み出し、灰野の叫びを下から支え、大気中に拡散するように展開する。ヴォーカリゼーションはネコの目のように目紛しく変化し、ロックともポストロックとも異質なストーリーテリング+環境ロックとでもいいたくなる未体験ゾーンへ突入する。別の曲名やアルバムタイトルを引用した歌詞が歌われるが、異なる曲/演奏/作品がお互い繋がり関係し合う在り方は、灰野独特のエニグマティックな問いかけであろう。歌詞に呼応するように鎮静/昂奮の間を行き来する演奏は、初共演とは思えないシンパシーに満ちている。それにしても曲名(と歌詞)に横溢する嫌米感は、トランプ以降灰野の中で危険水域まで高まっているに違いない。
B1の冒頭で聴かれる灰野とアーロン・ターナーの2本のギターの絡み合いは、単なるギター・バトルやアンサンブルではなく、自我を剥き出しにした本音の語り場と言えばいいだろうか。魂の晒し合いともいえる演奏空間は、単なる日米前衛ヘヴィロックのコラボレーションではなく、ひとつのユニット=共闘体として一体化しようとする意志の蠢きである。
突然演奏がカットアウトされて始まるB2は静謐で厳かな音の粒子が空気中を舞い聴き手の美的中枢を刺激し陶酔させる。言葉のハッキリした灰野のヴォイスが朦朧とした聴き手の心を眩惑し魂を覚醒させる。立ちこめる漆黒のイメージと耳を圧する重厚なサウンドに満ちたアルバムトータルのストーリーはまだまだ聴き手の予想や期待を上回るスケールで脈動するがこれ以上は語るまい。物語の続きは自分自身の耳で聴いて自覚的に理解するべきだから。
それにしても、コンストラクト、ジョン・ブッチャー、SUMACというまったく世界の異なるアーティストとの共演が、いずれも高い完成度と共感/共闘姿勢に貫かれた灰野の充実振りを目の当たりにして、地下音楽の深層に流れる異端の泉の魔性の悦びに酔い痴れる快楽を噛み締め続けていたい。
問いかける
許せないのは
誰なのか
Keiji Haino & SUMAC - 'American Dollar Bill..' (Album trailer)
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