A Challenge To Fate

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百鬼夜行の回想録~80'sインディーズ特集 第8回:耽美の歌姫SYOKOとG-SCHMITT

2013年01月04日 00時22分28秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


この回顧シリーズの第4回でパンク少年たちの心と下半身を魅惑した女性アーティストを特集した。80年代ニューウェイヴを象徴する女性シンガーといえば戸川純とPHEWだろう。純ちゃんはゲルニカでの妖艶さとTVや雑誌でのキュートさでニューウェイヴを超えたお茶の間のアイドル。PHEWは文学系クールビューティーの孤高のカリスマ。どちらも高嶺の花で手が届かない存在だった。より身近な"会いに行ける"アイドルとして人気だったのがD-DAYの川喜多美子とG-SCHMITT(ゲーシュミット/以下ゲーシュミ)のSYOKOだった。

ここ数年アナログ盤を聴くことが殆どなくレコードプレイヤーを使わなかったのですっかり老朽化して聴けない状態だった。数千枚のアナログ・コレクションが無用の長物と化していたのだが、大掃除で10数年前に東京タワー蝋人形館ショップで購入したポータブルプレイヤーを発掘し、これまた骨董品のMDラジカセに繋いだら結構いい音が出ることが判明。嬉しくてアナログを聴き狂っている。その中にゲーシュミのデビューLP「Modern Gypsies」(1985)があった。買ったのは覚えていたが厚手のマット紙印刷のジャケット、歌詞カードに加え直筆サイン入ポスター封入とインディーズとは思えない豪華な仕様に改めて驚いた。ゲーシュミは他にLP「gArNeT」(1988)と12"EP「Sillage」(1989)を所有しているがいずれも写真や印刷や録音のクオリティが非常に高い。どれもSYOKOの写真ジャケというのが当時彼女の美しさに惚れていたことを証明している。

G-Schmitt ✞ Mescaline Dream (1986)


ゲーシュミの所属レーベルWECHSELBALG(ヴェクセルバルグ)はAUTO-MODのジュネがテレグラフ傘下に設立したポジティヴパンクの象徴的レーベルでAUTO-MOD、ゲーシュミの他にSADIE SADS、NUBILE、SODOM、SARASVATI等のバンドをリリース。ポジパンの耽美イメージを具現化したこだわりの音作りとアートワークはテレグラフの地引雄一が「1枚出すと100万円の赤字」(DOLL増刊「パンク天国4」より)と言う程の贅沢さだった。それ故1985年にテレグラフは手を引き、以降はテレグラフの重役だった宮部知彦が独立して運営した。ヴェクセルのリリースは確認出来る限りでは1991年のAUTO-MODのカタログのCD化が最後である。

G-Schmitt - LSD live


何回か書いたが私は大学時代ゲーシュミと同じ音楽サークルに所属していた。しかも彼らと同期である。しかし私のメイン活動は別のサークルでゲーシュミ所属サークルにはヘルプ参加だったので特にメンバーを個人的に知っていた訳ではなく学園祭で数回ライヴを観た程度である。ゲーシュミのことを当時の友人やファンサイト掲示板などで調べるとバンド名は部室の壁にあった「芸趣味人」という落書きをドイツ語風に読み替えたということや、部誌にキスマーク入りのコメントを書いたこと、当時の部長の家に遊びにきたSYOKOが大盛りカレーをペロッと平らげたこと、よく部室でカップ麺をすすっていたこと、笑い声が豪快なので「笑子」と呼ばれていたこと、1983年武道館で大学入学式のサークルプレゼンで演奏したこと(私も別のサークルで同じステージに立った)等のエピソードがあった。ポジパンの女王も現在の若手ミュージシャンやアイドルと同じで素顔は普通の女子大生(注:津田スクールオブビズネス説もあり)だったのである。

ただしメンバーが就職で次々脱退する中でSYOKOがひとり意を決してゲーシュミを背負って活動していたことは間違いない。" SYOKO=G-SCHMITT"というパブリックイメージは正しい。1989年「Salliage」を最後にバンドは解散。1986年にジブリ映画で知られる作曲家久石譲とのコラボアルバム「SOIL 未来の記憶」でソロ・デビューしていたSYOKOは1992年BANANA(EP-4)、ブラボー小松、矢壁アツノブ(PINK)、JOJO広重等をバックに2ndソロ「TURBULENCE」をリリース、手塚眞の映画にも出演したが90年代半ばにはシーンから忽然と姿を消してしまう。一説には宮部知彦と結婚したといわれるが定かではない。

G-Schmitt 1985.2.14


ゲーシュミのCDはヴェクセル音源コンピ「Struggle to Survive」とリミックス盤「alternative gArNeT」、ラストEP「Sillage」の3枚が80年代末にリリースされたきり廃盤で入手困難。現在CDで入手可能なのは1984年リリースのオム二バス「時の葬列」(他にAUTO-MOD、SADIE SADS、MADAME EDWARDA収録)の2曲だけである。ファンサイト掲示板では再発を望む声が高い。AUTO-MODはレア音源を含め代表作がCD化されているし、SADIE SADS、NUBILE、SARASVATIの3バンドは2011年EP-4&佐藤薫復活に際して「MOODOO DANCER:Do the Flop with Sadie Sads, Nubile & Sarasvati」という3枚組CDでほぼ全音源が網羅された。ゲーシュミだけ再発されない理由は恐らくSYOKO本人か宮部の意向が働いているのだろう。当時の話を聞きたいと同期の元メンバーに連絡したのだが梨のつぶて。触れられたくない過去なのかもしれない。SYOKOのソロは1stが廉価盤CDで入手可能。これでも充分萌える。

Syoko - Erewhon


アナログ盤のちりノイズ混じりに流れるSYOKOのヴォーカルは強い意志と高い美意識に溢れた完成度で30年近く経った現在でも全く色褪せていない。そしてジャケットや雑誌のグラビアでの美しさは凛々しさと可憐さを兼ね備えた魔性の魅力。いつの日かゲーシュミの全貌が明らかになることを切に願いたい。

芸趣味人
Kの葬列
遊戯終焉

川喜多美子さんは数年前にD-DAYの新譜やソロCDRをリリースしお元気な様子。SYOKOからも何かしらの便りがあってもよいのでは?
もし関係者の方がこのブログを読んでいたら是非ご連絡ください。

【2018.2.3追加】
【G-SCHMITT@新宿LOFT '88.12.17】―活動停止宣言LIVE!

1.Kの葬列
2.ICAROS DESCENDING
3.The Ark
--MC-- 【活動停止宣言】
4.BALSAM
5.遊戯終焉
6.Someday Somewhere
7.Cathedral Junky
--MC--
8.Ground Circle


9.Isis
10.Mescaline Dream
11.Belladonna
12.Farewell
―アンコール1―
 ・Catholic
―アンコール2―
 ・LSD
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11 コメント

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Unknown (通りすがり)
2013-01-06 01:42:26
syokoさんの消息って2chやblog等でも書かれているけど、全くはっきりせず信用には値しない様な。
列挙すると
・久しぶりに会ったら結婚せず普通に医者になったよ説(2chのスレで2005年頃書き込まれた発言が発)
・2001、2年開催gismのラストライブで見かけたよ説(某サイト発)
・宮部氏の奥さんになったよ説(多数証言)
・久しぶりに会ったら容姿が殆ど変わって無かったよ説(ファンサイトBBSに2005年頃書き込まれた説)
真相は定かではない(意味深)。
最近知った身だしヤフオクでもCDがバカ高いので再発は絶対にして欲しいと思います。

ついでに文章内補足と訂正をば。
>1986年にジブリ映画で知られる作曲家久石譲とのコラボアルバム「SOIL 未来の記憶」
映画「この愛の物語」で久石作編曲、syoko作詞で一曲提供。
>ゲーシュミのデビューLP「Modern Gypsies」(1985)
「No.6」が84年に発表発売されたデビューEpでありテレグラフ流通でスタートしたヴェクセルバルグのデビューEp。
「モダンジプシーズ」は85年発表発売のセカンドLp。

ついでに宮部氏の名前で検索したら引っ掛かったヴェクセルバルグ関係の記事も。
http://ameblo.jp/samshepard1961/entry-10996761101.html

私は本blogは書き込み初めてにして御汚し大変申し訳ありませんでした。
返信する
宮部知彦 (miro)
2013-01-06 02:44:20
通りすがりさま
詳細なコメントありがとうございました!
2チャンネルはまったく信用ならず読むだけでも辛いのでノーチェックです。リンクしていただいたブログ主さんは同年代だと思いますが非常に事細かに書かれていて相当あの時代に思い入れがあるようですね。SYOKOさんが宮部さんの奥さんになったと書いているのでかなり信憑性が高いかと思います。
再発されない理由はやはり本人と宮部さんの許可が出ないことにあると思います。
宮部さんの行方を何とか探ってみます。
今後ともなにとぞよろしくお願いします!
返信する
返信どうもです。 (通りすがり)
2013-01-06 03:02:12
miroさん、コメントどうもありがとう御座います。
宮部氏が運営していたインディーズ音楽卸売り流通業者であるインナーディレクツや同氏も詳細を書かれたサイトが存在しないみたいですね。
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行方不明 (miro)
2013-01-06 11:24:52
通りすがり様
知り合いの音楽ライターに確認したら2002年2月のGISM解散コンサートで宮部氏に会ったのが最後で現在連絡先不明、当時はSYOKOさんが奥さんだったとのことです。CD再発に関しては宮部氏は商売人なのでNOという筈はなく、おそらくメンバーが拒否しているのでは、とのことでした。
以上、確かな筋の情報でした。
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Unknown (通りすがり)
2013-01-06 13:03:41
宮部氏の奥さん説は確定したのですか。
ここまで来るとどっかで姓名を変えて生活してる可能性が非常に高いけど、宮部氏のインナーディレクツ自体は2005年頃まで経営していたそうですね。
生きてるのかなぁ…。CD再発しないかなぁ…(ボソッ)。
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Unknown (通りすがり)
2013-01-06 13:20:12
このblogだと元旦那と書かれてるけど、真相は謎のままだ。再発はよ。
http://ameblo.jp/sarasa0625/day-20111101.html
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Unknown (kinotaco)
2013-01-17 21:07:46
当時、某ダビング・サークル (D.D.Records 鎌田氏も参加) を通じて SYOKO さんの従姉妹の方からコンタクトが有りました。
モデルの仕事もしていたとの事でした。
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専門学校 (Syoko)
2017-10-07 15:42:20
津田スクールオブビズネスで女子大生じゃないし。
返信する
Re:専門学校 (googoogoo2005_01)
2017-10-07 19:48:09
貴重な情報をありがとうございます、というかご本人ですか?BR研で末さんのRAJIOというバンドのギターでした。宜しければご連絡ください。
返信する
Unknown (AN)
2021-12-24 08:56:48
懐かしい名前がでてきたので、お邪魔します。G-Schumittの0代目(武道館)のベース弾きで、末さんの巨大エフェクターボードなど手掛けていたものです。ニアミスしてたんですね。私がよく知っているRAJIOは、ギター+ボーカル(末さん)、ベース(Iさん)、ドラム(あだ名しか思い出せない)、キーボード(Sさん)だったので、
ヘルプのような形での加入なので、Syokoさんの情報はほとんどないんですが、覚えているのはUさんの緑のサバンナRX-7の後席にへばりついて乗っていたことぐらいですかね。彼女がオーディションにくる前からリハーサルをやってたので、最初期のテイストはUさんがもたらしたものです。
なぜ自分が呼ばれで参加したのかすら思い出せませんが、前年にUさんがギターで他のバンドに入ったときに、ベースとして声をかけられたのですが、Uさんは同じ日程の、自分の学園祭で松本伊代のバックバンドで弾くことになり、彼の友人に交代したので、そのお詫びだったのかもしれません。
どうでもいいことですが、Uさんとはまったく生年月日が同じですが、彼は一年先輩です。PERSONZの藤田さんとも一緒です。PERSONZの貢さんからは高校の時に声をかけられましたが、何分怖かったのでお断りしました。
とりとめのない長文、失礼しました。
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