A Challenge To Fate

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【私のポストパンク禁断症状#10】G.I.S.M.『DETESTATION』/HUMAN GAS『Super Violence Hardcore 1984-1989』~ハードコアパンクの美しさ

2020年12月10日 02時04分23秒 | ロッケンロール万歳!


ハードコアパンクという言葉が使われ始めたのは1981年頃からだと記憶している。77年にクラッシュやセックス・ピストルズを聴いてパンクロックに目覚めた筆者は、78年初頭にピストルズが解散すると、ノートに「パンクは死んだ」と殴り書きしてレジデンツやクロームやポップ・グループやグラクソ・ベイビーズやキャバレー・ヴォルテールといったオタネイティヴの非ロック的な音楽表現を好むようになった。ロック方面では、性急なビートのロックンロールやハードパンクやハードコアパンクの肉体性が鬱陶しくなり、耽美なネオサイケや退廃的なポジティヴパンクの精神性に魅力を感じた。特にハードコアパンクのライヴでよく見られた集団ヒステリーのような暴動は、根暗な文学青年に憧れる筆者にとっては全く共通点を見いだせなかった。他人に暴力を振るう消毒GIGの暴虐よりも、自らの肉体を切り刻む自殺未遂GIGの自虐の方が怖かったにしろ遥かに共感できた。

その頃『宝島』や『DOLL』といった雑誌で読んでハードコアパンクのライヴの過激さは知っていたが、実際にその模様を目の当たりにしたのは1982年5月に東京大学五月祭で開催された「東大赤門オールナイトGIG」だった。とはいってもライヴを観たわけではなく、その翌日に窓ガラスがすべて割られ、消火器の泡塗れになった学生ホールを見ただけだ。非常階段の放尿ライヴや財団呆人じゃがたらの流血ライヴの他にも、他の学園祭のパンク系ライヴで発煙筒や消火器が撒かれて騒動になった話も聞いていたので、その時はまたパンクスが暴れたなと思ってあまり驚かなかった。このライヴを企画した学生は「壊した器材は弁償はしたが、責任問題はお咎めなしだった」と言うが、令和の時代に大学構内でこんな破壊行為が行われたら、退学問題や警察沙汰になるに違いない。学生運動はとっくに下火になっていたが過激派のセクト抗争が時折話題になった昭和末期ならではのハプニングだと言える。
百鬼夜行の回想録~80'sインディーズ特集 第3回「パンク/ハードコア編」

しかし40年近くの年月が過ぎた現在、ノスタルジーを排除したうえで筆者が共感できる音楽は、精神を蝕む暗黒系抒情派ロックではなく、アナーキー&ヴァイオレンスを旗印にストレートなビートを叩きつけるハードコアパンクに傾きつつある。パワーとスピードだけの潔さこそ、人生の3分の2を経過し下り坂に差し掛かったた心と身体を回復させるワクチンなのかもしれない。

G.I.S.M.『DETESTATION』(2020 USA / Relapse Records ‎– RR74661)


上記のオールナイトGIGにも出演したGISMこそ、日本ハードコア界で最も恐れられるバンドと呼ばれている。盤魔殿関係者にもGISMと横山SAKAVIに近づいたら危険という者もいる。しかし海賊盤を売ったレコード屋に謝罪文を書かせる行為などは、正当な権利を主張する立場で考えれば妥当なことだ。無暗矢鱈に暴力を振るうのではなく、自らの表現手段として戦略としてAnarchy & Violenceを謳っていることは明らかである。

それはともかく1983年に雑誌DOLLのDogmaレコードから出た1stアルバムが正式リイシューされたことが大きな話題になっている。45rpmで8曲。当時台頭してきたヘヴィメタル色もあるが、根底に漲るアンダーグラウンドハードコアパンク魂が感電する勢いで駆け抜ける精錬潔白な一枚である。昨日DOMMUNEで配信された無観客ゲリラライヴストリーミングは伝説云々を抜きにしてメガトン級の潔さが伝わる心地よい体験だった。

G.I.S.M. 新宿LOFT 1982年



HUMAN GAS『Super Violence Hardcore 1984-1989』(2020 Italy / F.O.A.D. Records ‎– F.O.A.D. 210)


84年に北海道本別の中学生4人が結成したHUMAN GASのBOXSET。実を言うと某レコードショップのメールマガジンで見るまでは存在すら知らなかったが、バンド名と「超暴力的ハードコア」というタイトルにヤバさを感じて即予約して限定スプラッターヴァイナルを入手した。当時リリースしたスプリット7インチと3本のデモ音源カセット、帯広パンクのコンピカセットに加えメンバー所有の未発表ライヴやセッション音源を2枚のLPと1枚のCDに収録、さらに2本のライヴセットをDVDに収録し、写真満載のオールカラーブックレットが付いた集大成。手にしたときの重みに比例した内容の濃さにはハードコアパンクファンじゃなくても驚愕するに違いない。

パッケージ以上に驚くのは演奏の熱さと暴走するエネルギー(語彙)。ハードコアバンドは総じて演奏が上手いと思っていたが、10代半ばの彼らのタイトでシャープな(語彙)パンクロックには、無駄なものをすべて削ぎ落したジャコメッティの彫像と同じように剥き出しの人間の魂を感じる。「尊い」という言葉はこの音のためにあるのではなかろうか。

HUMAN GAS - Super Violence Hardcore 1984-1989 | BOXSET


Human Gas - Poison (Live at Bessie Hall 87)


人間の
殻を剥ぎ取る
ハードコア

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