A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

渋さ知らズ オーケストラ@新宿 Pit Inn 2012.6.1 (fri)

2012年06月03日 05時51分26秒 | 素晴らしき変態音楽


渋さ知らズは何回かイベントやフェスティバルで観たことがある。20人以上の大所帯でフリージャズから演歌まで節操ない程幅広い音楽性を暗黒舞踏やキャバレーダンスを交えて展開するライヴはしまいには老若男女問わず観客全員が踊り出すお祭りパワーに溢れたものである。数年前に吉祥寺Manda-la2に前売チケットを買いにいった時たまたま彼らがライヴ中で、ドアの隙間から全員総立ちで盛り上がっている様子を垣間見た。また5年前まで日本に住んでいて灰野さんのライヴで友達になったカナダ人Philさんが熱狂的な渋さのファンで、毎回ライヴに行っていたことも思いだす。彼らはジャズの殿堂、新宿ピットインでも隔月ペースでワンマン公演をしており、キャパ100人のライヴハウスでどんなライヴをやるのか観てみたいと思っていた。

5月初めにネットで坂田さんのスケジュールをチェックしていたら6月のピットインのスケジュール表に渋さの名前を発見。週末でスケジュールもバッチリ。フジロックのホワイト・ステージで大トリを務める程の人気バンドだからソールドアウト覚悟で電話したらあっさり予約できた。ぎゅう詰めのピットインは何度か経験しているし、オーケストラだから後ろで立ち見でも楽しめるだろう、と思いながら会場へ向かう。ピットインの前にはかなりの数のお客さんが集まっている。開場前に予約チケットを引き取る方式だったので受付で名前を告げたら、整理番号は15番。思いの外早い番号で驚いた。

ピットインに来ると必ず常連の馴染みの顔がいるものだが、この日のお客さんには知ってる顔がない。年齢層が意外に高く雰囲気が妙に和やかで世間話に花を咲かしている。サウンドチェックを終えたメンバーが会場から出て来ると「久しぶり」とか「まいど」と声をかけている。何となく舞踏ファンを思わす身内感。番号順に会場へ入ると、さすがに20人はステージに乗り切らないので、前の席を何列かどかして演奏者用のスペースが作ってある。普段だと15番では上手く行って2列目の端か3列目だが、この日は最前列が空いたまま。ラッキーとばかりに滑り込む。目の前にギターアンプがありうるさそうだが視界を遮るものなくステージが見渡せる好位置には変えられない。右隣の席にはチラシらしきものが置いてあり予約済だと思って誰も座らない。だがよく見るとその紙はメンバーが忘れたプッチーニの「私のお父さん」の譜面だった。

10分押しでメンバーがステージに現れる。不破大輔氏とベースのヒゴヒロシ氏以外は判別不能誰。渋さ知らズのホームページに記載されているこの日の出演メンバーを記しておく。磯部潤/立花秀輝/山口コーイチ/辰巳光英/関根真理/佐藤帆/北陽一郎/斎藤良一/山本直樹/ヒゴヒロシ/ファン・テイル/鬼頭哲/吉田隆一/高橋保行/南加絵/東洋/若林淳/宝子/すがこ/さやか/ペロ/南波とも子/松本卓也/小林まり子/中村江里花/渡部真一/ノイズ中村/不破大輔。ダンサーを含み合計28名のフル・メンバーである。


ピアノのソロで始まりテナーがフリーキーなプレイで加わる。他のメンバーから拍手やかけ声がかかる。ダンドリスト=不破氏はメンバーを指差して手および口頭で指示している。次第に他の演奏者も参加し賑やかになってきたところに女性ダンサーが登場。ステージ前で艶かしく踊る。曲は譜面のプッチーニだったようだが、演劇や映画の場面転換の様に演奏スタイルが次々変わり、気を取られているといきなり目の前にスキンヘッドの男性ダンサーが現れ、右を見ると金髪と青い髪のかつらをつけた男女が台の上で布製のバナナを振っていた。いつもの兄ちゃんは出ないのかな、と思っていたら曲の半ばで登場。鉢巻きに浴衣と赤フン姿でラップ調のMCや歌を聴かせる渋さの名物男だ。彼の歌が♪月曜にはララララララ~火曜にはラララララ~♪という歌詞で"これってプッチーニ?"と思ってしまうがそんなの関係ねぇとばかりに演奏は続く。メンバーは勝手にドリンクを注文に行ったり、ソリストの演奏にかけ声をかけたり、正に宴会状態。最前列だとダンサーと目が合ってしまい何だか気恥ずかしい。というか前の座席にいるとオーケストラの全体像が掴みきれないのだ。ダンサーもどんどん客席に入って来るし、後ろで観る方が何が起こっているか把握できていいのかも。目の前のギターアンプから鋭いギターの音が直接耳に突き刺さる。爆発して目が眩むようなグルーヴに身を委ねるしかない。なす術もなく大きなサウンドの渦に巻き込まれていく快感。


60分程で演奏終了。いつものピットインなら休憩が入るが、赤フン兄ちゃんがしゃべり続ける。尾崎紀世彦さんが亡くなったことを告げると観客は勿論メンバーも知らない人が多く一瞬ざわめくが、すぐに「また会う日まで」の演奏が始まりそのまま後半戦へ突入。5人のダンサーが踊りまくり、演奏がクライマックスになった瞬時にギアを入れ替え別の曲が始まるといった具合で息つく暇もない目紛しい展開。隣の椅子の上にスキンヘッドのダンサーが乗ってパフォーマンスを始める。JAZZ非常階段でコサカイ氏の攻撃を受けたことが頭をよぎる。何故か私はライヴでアーティストに絡まれる(?)ことが多い。コサカイ氏しかり毛皮のマリーズとかロリータ18号とか下山gezanとか。。。。ダンサー氏は特に絡んで来ることはなかったが真横で半裸の男性が踊っているのに落ち着いていられる筈がない。確かに想定外のスリルが味わえて楽しかったけどね。不破氏は指揮よりも観客に向かってアピールすることに忙しい。最後の曲ではメンバー紹介を兼ねて全員がソロを披露。女性サックス奏者の時だけ不破氏が"もっと長く"と両手を広げる合図を繰り返しメンバーから爆笑が起る。さすがに立上がって踊り出す客はいなかったが、オールスタンディングだったら最高潮に盛り上がる午前1時過ぎのクラブ状態になるに違いない。



2時間半ノン・ストップの大宴会。これは単なるライヴ演奏じゃなくひとつの"体験"だ。サーカス会場に迷い込み気が付いたらピエロに扮して人前で演技している自分がいた、と表現すれば少しでもニュアンスが伝わるだろうか。彼らが世界的に突出したパフォーマンス集団だといわれる理由を目の当たりにし心が虹色の感動に震えた。

6/10工藤冬里+割礼の前売チケットを買いにゴールデン街裏窓へ。ビール一本だけ飲んでいこうと店長の福岡氏と話していると、灰野さんのCDジャケットのデザイナーの北村氏が来店。彼もチケットを買いに来たと言う。スマホの電池切れで時間が分からない上に四方山話に熱が入り過ぎて危うく終電を逃すところだった。





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