
An Evening with AKI YASHIRO
アン・イヴニング・ウィズ八代亜紀
演歌の女王が小西康陽をプロデュースに迎えたジャズ・アルバムを携え、一夜限りのライヴを開催
メンバー:八代亜紀(ヴォーカル)/香取良彦(ピアノ、ヴィブラフォン)/田辺充邦(ギター)/岡淳(サックス)/河上修(ベース)/有泉一(ドラムス)/木村 "キムチ" 誠(パーカッション)
10月にリリースしたデビュー42年目にして初の本格ジャズ・アルバム「夜のアルバム」が日本のみならずアジア各国で大ヒット中の八代亜紀さんのブルーノート東京(以下BNT)公演は9月中旬に予約開始した途端に即完。2000人規模のホールを満員にする大歌手だから300人×2回=600人のBNT東京公演がソールドアウトするのは当然。それを見越して一般発売当日に予約して正解だった。ゆっくり観たいので2nd Stageを予約。20:00に整理券が出るというので30分前に行ったら既に受付を開始していた。整理券番号25番。BNTに予約したことのある方ならご存知だろうが、座席にはボックス席やソファー席の指定席と自由席の2種類ある。指定席はシートチャージがかかるので割高。しかし座席表を見ればわかるが、ステージ前列から3分の2は自由席である。つまり高い指定席よりも自由席で順番が早ければ最前列のテーブルに座ることが可能なのである。
開場時間の待ち合いロビーはBNT常連のオシャレに着飾ったファンとカジュアルな演歌ファンが混在し賑やかだ。順番に呼び込まれライヴフロアへ案内される。我々がエスコートされたのはステージ少し右寄りの前から2列目のテーブル。BNTでこんないい席に座るのは15年前の大学の後輩の結婚パーティー以来。気合いを入れて早く来た甲斐があった。このために地方から上京した肝入りのファンも多いようであちこちで久しぶりとの挨拶が交わされている。時間通りにミュージシャンがステージに上がり客電が落ちる。
最初はバンドだけのインスト演奏。曲半ばで客席の一角から歓声が上がる。女王亜紀さんの登場だ。亜紀さんを追うスポットライトと割れるような拍手と大歓声。テレビで観る女王にしては比較的地味な黒の衣装だが、その抜群のスタイルの良さに感心する。そして歌の上手さときたら!CDも見事なヴォイス・コントロールが印象的だったが、生で聴くと一音一音、細部にまで心情を篭めた歌に打ちのめされる思いがする。5メートル先で女王が歌っているだけでも感動モノだが、その少女のような笑顔に心から溢れる喜びがダイレクトに伝わってくる。芸歴42年は伊達じゃない。「今日はヤシロの42年目で初めてのブルーノートのディナーショーにようこそ!あらディナーショーじゃなかったわね。皆さんお食事なさっているので間違えちゃった(笑)。ヤシロはディナーショーいっぱいやってるのよ」と最初のMCで観客の心を掴む。甘えるようなキュートな語り。客席にいた小西康陽氏を紹介する。
15歳で東京へ出て、バスガイドなどで生活費を稼ぎながらクラブ歌手に憧れて新宿の美人喫茶のオーディションを受けた。「ウブな亜紀ちゃんが大人っぽい歌じゃ変かな、と思って可愛らしい歌を唄ったの」と披露したのが浜口庫之助作/伊東きよ子歌で知られる「花と小父さん」。「オーディションに受かってお店のママから"お給料はいくらがいい?"と訊かれたの。バスガイドが月給7000円だったから8000円って言おうかな、でも欲深いと思われたら嫌だな、と思って"お任せいたします"と答えたら、何と10万円!ビックリして腰抜かしたわ。」と笑わせる。
6曲目でステージを下りてお色直し、ブルーの羽飾りがついた豪勢な衣装で再登場。これぞテレビで観る女王の姿。ピアノの香取氏は音楽教師でもあるそうで、しきりに「先生、準備できた?」と語りかける。ステージ上も皆笑顔。歌と演奏だけじゃなく会場全体を楽しませようとするエンターテイナーの心意気を感じる。「夜のアルバムは日本だけじゃなくアジアで軒並み1位ですって。来年はニューヨーク公演をやりたいわ。皆さん観に来てくれるかしら?」と盛り上げる。本編全12曲1時間強があっという間のライヴだった。
アンコールで軽快なラテン・ビートが始まる。♪お酒はぬるめの 燗がいい~♪という有名なフレーズ。演歌の大ヒット曲「舟歌」のジャズ・ヴァージョンに会場が大いに沸く。やっぱりコレだね!最後はスタンディング・オベーションで拍手の嵐。亜紀さんは帰り路にお客さんとハイタッチのサービス。AKB48のように「会いに行けるアイドル」じゃないけれど、女王の本質はファンとの身近なふれあいにあると実感。芸能生活42年の国民的スターが楽しそうにファンと交流する様子にアイドルの本来あるべき姿を見た。
<Set List>
1.SWAY
2.SUMMERTIME
3.FLY ME TO THE MOON
4.花と小父さん
5.別離
6.ONE RAINY NIGHT IN TOKYO
7.OVER THE RAINBOW
8.ただそれだけのこと
9.枯葉
10.五木の子守唄~いそしぎ
11.ステーションホテル24時
12.JOHNNY GUITAR
-Encore-
13.舟歌
女王に
演歌もジャズも
違いなし
泣ける。