A Challenge To Fate

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歌謡GS~USロック~フュージョンと旅した日本の女性ロッカーの草分け、麻生レミ

2012年06月15日 00時40分09秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


麻生レミ姐さんの名前を初めて知ったのは1970年代後半の中学時代、音楽雑誌のレコード・レビューだったと思う。その頃はとにかく情報に飢えていて音楽誌を買うと隅から隅まで貪るように読んだものだった。だから音は聴いたことは無くともアーティストの名前だけは記憶に焼き付いている。レミ姐さんの記事の内容はほとんど覚えていないが、カルメン・マキと並ぶ伝説の女性ロッカーだというイメージだけが残っている。

1980年代半ばファントム・ギフトやザ・コレクターズなどのネオGSブームの勃興で60年代のグループサウンズが注目された。1986年にGS研究の第一人者、故・黒沢進氏の手になる「熱狂! GS図鑑」が出版され、タイガース、ブルー・コメッツ、テンプターズ、ワイルド・ワンズ、ゴールデン・カップス等の有名GS以外に無数の”B級GS”が存在したことが明らかにされ、GSを単なる懐メロではなく、”日本のロックの創世紀””GS=Garage Sounds”と捉える流れが生まれた。各レコード会社がB級GSを含むコンピレーションLP/カセットを発売し、そのカッコよさに痺れたものである。その中に内田裕也とザ・フラワーズの紹介もあった。そこに麻生レミ姐さんの名前を見つけた時は「あのレミさんがGSを?」と少なからず驚いた。知り合いに貰ったB級GSのコンピ・カセットにフラワーズの「ラスト・チャンス」が入っていた。GSは基本的に男性バンドがほとんどである。女性歌手の場合は”ひとりGS”と呼ばれ、大御所の美空ひばりをはじめ木の実ナナ、黛ジュン、朱里エイコ、吉永小百合などピンの歌手がGS風の曲を、時にGSバンドをバックに歌うのが主流だった。カセットに収録された男の歌ばかりの中で唯一女性ヴォーカルを聴かせるフラワーズの「ラスト・チャンス」は確かに演歌っぽいが妙に人懐っこいメロディのサイケ歌謡の名曲だと思う。

フラワーズの唯一のアルバム「チェンジ!」がCD化され、麻生レミ姐さんの歌がたっぷり聴けた時はホントに感動した。メンバーのオールヌードの印象的なジャケットに包まれ、ジャニス・ジョプリン、ジェファーソン・エアプレイン、クリーム、ジミヘンなどカヴァーばかりだが、小林勝彦氏の常軌を逸したサイケなスチール・ギターと”和製ジャニス”=麻生レミ姐さんの歌が光る、GSの中でもカップスの初期3枚やモップスの1st、ビーバーズと並ぶ日本サイケの名盤である。

その後1970年にカップス、モップス、ハプニングス・フォーと共演したライヴ盤「ロックンロール・ジャム’70」でジョー山中氏(元フォー・ナイン・エース/ジョー・アキラの名で参加)、石間秀樹氏(元ビーバーズ)を迎えてのジャニスやツッペリンのカヴァーや、「チェンジ!」の前に参加した一柳慧「オペラ横尾忠則を唄う」でのサイケ度満点のインスト演奏を聴き、後にフラワー・トラヴェリン・バンドへ発展する日本のロックのルーツたる所以を確信したが、フラワーズを脱退し渡米した後のレミ姐さんの音源は聴くことが出来ず、常に頭の片隅にわだかまっていた。

そのレミ姐さんの1970年代のソロ・アルバム2作がひっそりと紙ジャケCD化された。1976年のソロ・デビュー作「オウン・ラインズ」は元スパイダーズ~PYGのギタリスト井上堯之氏率いるウォーター・バンドがバックを務め、アイク&ティナ・ターナーやエタ・ジェームスのカヴァーを含むアメリカの匂いの濃厚なアルバムで、ジャニスが後期に目指した王道アメリカン・ブルース・ロックを継承するレミ姐さんの歌唱が素晴らしい。白い靴のジャケットが薄っすらと記憶にある1978年の2nd「ザ・ビギニング」はアメリカのミュージシャンをバックに当時流行っていたフュージョン・サウンドを大胆に取り入れた作品で、ジャニスを期待すると肩透かしを喰らうが、時代がかったスカしたダンス・ビートも姐さんが歌うとアシッド・サイケに聴こえてしまう。ギターはスピード・グルー&シンキの陳信輝氏!

ネットで調べて、レミ姐さんが1971年雷雨の後楽園球場で行われたグランド・ファンク・レイルロードの伝説の来日公演のオープニング・アクトを務めたことを知った。彼女のバンドWYNDのメンバーが入国できず、急遽PYGから井上堯之氏(g)、大野克夫氏(key)と、元サムライの山内テツ氏(b)、原田裕臣氏(ds)からなるスーパー・バンドがバックを固めたという。正に伝説の女性ロッカー!当時PYGとのジョイント・ライヴも行っているらしい。その頃の録音が発掘されたら最高だな~。でもまずはオフィシャルのソロ・アルバムが復刻されたことをロックの神様に感謝しなければなるまい。

▼サイケ歌謡の名曲「ラスト・チャンス」


▼フラワーズ唯一のアルバム「チェンジ!」からジャニスのカヴァー


▼映画で使われたフラワーズのサイケな演奏


▼Whirlwind of Love "恋のつむじ風" 1969 film produced by Nikkatsu.


▼「コント55号 世紀の大弱点」(東宝1968年度作品)より


▼内田裕也とザ・フラワーズ "1969ジャズ喫茶ライブ"


▼1971年アメリカでのライヴ音源
Remi "Lemi" Aso, Randy "Jimmie James" Bowles, Chuck Gregory, Tim McKelheer: Turtle Blues (live 1971)


レミ姐さん
今は何処で
何してる

昨日は最近の若手バンドを聴けと書いておきながら、今日は昭和ロックを紹介している私も分裂してるかも。
コメント
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