A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

魂を解放する魔術の横笛~フルート・ロック/ジャズ特集

2012年06月10日 01時55分02秒 | 素晴らしき変態音楽


フルートの練習をしなければならない。
一週間後に元ヘンリー・カウのメンバーによるバンド、アルトー・ビーツの即興音楽ワークショップに参加するためだ。

私がフルートを始めたのは小学5年生の時。2つ年下の弟が突然トランペットを習うと言い出し、それに対抗してフルートを選んだのだ。父がクラシック好きだったこともあり、幼い頃から音楽に囲まれて育ってきた。幼児の頃はヤマハ音楽教室に通いオルガンを習っていた。しかし小学生の時にはテレビで流行歌を覚えるくらいで特に音楽好きという訳ではなかった。それが何故フルートを選んだのか定かではないが、恐らく知っている楽器がフルートしかなかったのだろう。週1回自転車で10分の金沢高等音楽院(その頃は金沢に住んでいた)という学校に通い個人レッスンを受けた。本当は別に楽典の授業があったのだが、他の生徒が全員女子だったので落ち着かなくて行くのを辞めた。楽典を習っていればピアノも練習できたし音楽の基礎を学べたので今では行けば良かったと後悔している。フルートは弟への対抗心が動機だったから余り練習熱心ではなかったが、「小さい秋みつけた」が好きで発表会にその曲を選んだのを覚えている。中学に進学しクラスの仲の良い女の子がブラバンでフルートをやっており何度か誘われたのだが、軟式テニス部に入った。フルートのレッスンには中2まで4年間通ったからそれなりに基礎はできたと思う。

中3の時東京へ転校しブラバンに入部した。しかし楽器はサックスを選んだ。その頃には洋楽ロックやジャズを聴くようになり、FM番組をやっていたナベサダに憧れていたのだと思う。サックスをやってみて運指がフルートと殆ど同じことを知った。

ORANGE EXPRESS, MY DEAR LIFE / Sadao Watanabe


高校でもブラバンに入り今度はバリトン・サックスになった。ホーナーというドイツのメーカーのボロボロの楽器をあてがわれた。部活とは別に学園祭ではパンク・バンドをやっていたのだが、ブラバン特有の居心地の良さに甘え3年間バリサクを吹き続けた。アルトの女の子に密かに恋心を抱いていたせいもある。ジャズがやりたくてバリサクの第一人者ジェリー・マリガンのレコードを買って一生懸命コピーし、いきなりブルーノートを吹き始めた私の演奏を聴いた先輩が驚いていたのを思い出す。

Gerry Mulligan - Satin Doll


大学に入り念願のアルト・サックスを手に入れオーネット・コールマンや阿部薫や坂田明の真似を始めたのだが、音楽サークルではサックスとフルートが出来るというので重宝され、自分のバンドの他に山下達郎のカヴァー・バンドや洋楽ヒットチャート・バンドを掛け持った。新入生向けのオリエンテーションで武道館の舞台で当時のヒット曲のフルートを担当したこともあった。その前日がブライアン・フェリーの武道館公演で、同じ舞台に立つと思い興奮したものだ。

Men At Work - Down Under (Live, US Festival, 1983)


就職してからもギタリストとしてロック・バンドは続け、10年くらい都内のライヴハウスで活動していた。特に1989年に始めた自称サイケ・バンドFLOWER TRIPではライヴでフルートを吹きシタールと共演するインドっぽい演奏を取り入れていた。

FLOWER TRIP / お前に与えられた役をまず果たせ


1994年そのバンドが解散して以来フルートに触ることは絶えていたのだが、2001年から灰野敬二さんのライヴに通い始め、灰野さんが時折吹くフルート演奏に感化され7年くらい前に教則本を買ってきて久々に吹いてみた。音は出るし運指も覚えているのだが息が続かず2ヶ月で挫折。しかし懲りもせず昨年10月井の頭公園で開催されたオーケストラTOKYO-FUKUSHIMAにフルートで参加した。素人の集まりだから適当にこなしたが、楽器を演奏する喜びを再発見した。そして今回のアルト・ビーツのワークショップに繋がる訳だ。「ドレミの歌」とか「手のひらを太陽に」など単純なメロディは吹けるのだが、ジャズやロックのメロディは勿論、アドリブなんてもっての他。こんな有様でクリス・カトラー先生と共演してもいいのだろうか?不安は募るが当たって砕けろ精神で挑みたいと思う。

最後に私が好きなフルート演奏を紹介して拙稿を締めくくりたい。

▼ジャズ・フルートの神髄。彼を超える演奏者は50年間現れていない。

Eric Dolphy with Charles Mingus


▼マイク・オールドフィールドが10代の頃姉のサリーと組んでいたフォーク・デュオ、サリアンジー。サリーの透明な歌声に呼応するペンタングルのレイ・ウォーレイのフルートが美しい。

Sallyangie - Children of the Sun


▼ジェネシスのスティーヴ・ハケットの1stソロ「司祭の旅」よりサリー・オールドフィールドをヴォーカルに迎えた曲。スティーヴの弟ジョン・ハケットのフルートが幻想的。

Shadow Of The Hierophant


▼日本では何といっても木田高介氏のフルートが情念的な早川義夫氏の歌唱を引き立てるこの曲。

Jacks - Vacant World [ジャックス - からっぽの世界]


▼フルート・ロックといえばこの人。王選手を思わせる一本足奏法が余りにも有名。

Jethro Tull


▼1970年代英国サイケ界を象徴する霊的ジャズ・ロック・バンド、クインテサンスのサウンドの要はラジャ・ラムのフルート。彼は70歳を超えた現在でも「サイケデリックトランスのゴッドファーザー」してクラブ・シーンで活躍中。

QUINTESSENCE


▼灰野さんのフルートは別格。灰野敬二 (guitar, vocals, etc.), ナスノミツル (bass) ,一楽儀光 (drums)のトリオ、静寂での演奏。

SEIJAKU (静寂) with Keiji Haino @ Metro, Kyoto Oct. 12, 2010


フルートは
魔法の横笛
心に滲みる

暗い部屋にロウソクを点しお香を炊きながらひとり吹き語るのが理想の演奏法。

コメント (6)
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