マーベラスS

King Of Western-Swing!!
歌と食と酒、それに声のページ。

明けて、まどろみ湖畔

2007-02-05 22:07:34 | 


朝、窓を開けると、朝の空気がス~ッと入ってきた。外は霧雨。
うう、寒む。湖上はまさに薄墨を流したような、モノクロームの世界。
さっさと起きて湖の周囲を散策するのもいいし、露天風呂に入るのもいいが、少し酒の残った頭で布団の中でまどろむ道を選ぶ。

9時、遅めの朝食。
鯖のかぶら鮓、汲み上げ湯葉に実山椒、
ふぐ卵巣のへしこ、きゃら蕗の佃煮、梅干・・・
ほとんどが自家製。山椒も湖畔の山懐に自生している。
誰いうともなく、「ビール下さい!」

鍋で熱々の氷魚(ひうお)の卵とじ。これを取り分けてくれる。
氷魚とは琵琶湖で取れる稚鮎のこと。

昨夜の祭りのあと。左から二番目、ボーヌ・ロマネ2001なんて呑みましたっけ?記憶から抜け落ちているしメモも取っていない。完全に酔っていたようだ、情けない。

がしらの味噌汁。頬肉をせせったりしながら、また一杯いけるなぁ。

ふぐ卵巣のへしこ。1年塩で漬け込み、その後2年糠に漬ける。へしこは若狭地方に古くから伝わる保存食だ。こんか漬(小糠漬)とも言う。
へしこを初めて食べたのは、能登半島の民宿「さんなみ」だった。
そのままだと猛毒の卵巣も、こうして手間隙かけることで格好の酒の肴となる。近江米のメシが旨い。シメはこいつでお茶漬け。

食後、バックヤードの熟れ鮓工房を拝見。
土産土法。日本の何処にも真似のできない地元のものを見つけて、
手をかけて手作りの味を提供する。作業としては大変だろうが、
小さな民宿が生き残って行く方法が、ここ「徳山鮓」や「民宿さんなみ」などにはある。

気がつくと空も明るく晴れていた。
さぁ、発つとするか。

駅では女将さんの笑顔が。
そして反対側では虹が我々を見送ってくれた。


北滋賀、余呉湖の鮓・すし

2007-02-05 15:01:15 | 


北滋賀の余呉に着いたのは夕方5時半。風が頬に冷たい。その風に枯れ草の甘い薫りを感じた。大阪から僅か2時間だが久々の旅気分。

女将さんの運転する迎えの車で、5分ほど。めざす店までは歩いても20分ほどで行ける。夕闇せまる湖上は静かで、水鳥が泳ぐさまは神秘の湖という風情。

徳山鮓。鮓(すし)屋にして、寿司屋に在らず。鮓に特化した民宿とでも言うべきか。とにかく旨い酒が呑みたくてやってきたというわけ。
同行は番組制作のH氏、ワイン屋のF氏、淡路の魚屋M氏とボク。
この顔ぶれはH氏のセッティングだが、ワイン屋に魚屋はずっこい。あとは腕の立つ料理人さえいれば完璧や。
徳山鮓主人は先斗町の河繁出身。申し分なし。ワシらは旨い旨いと
腹をさすっていればいい。なんちゅうこっちゃ…。
M氏が持ち込んだガシラ。そしてキスも。
余呉湖で獲れ、山の水で晒し泥を吐かせたナマズ。

前で揚がるワカサギは新鮮そのもの。余呉湖はワカサギ釣りのシーズンだ。これも後で天ぷらになる。お命頂きます!

由比から取り寄せた生のサクラエビ。こんなところで駿河湾の珍味が味わえるのも、交通手段がよくなったおかげ。
まずはビールで喉を湿らせて、ワイン屋F氏が大事に抱いてきたワインも続々。まずはタルラン。シャンパンの泡で一夜の饗宴の口火が切られた。

本日の目的の一つがこれ。自家製のニゴロブナを漬け込んだ熟れ鮓。
徳山鮓の鮓とは、このことだ。発酵仮面・小泉武夫教授も大絶賛のここん家の鮒鮓。使うのはもちろん子持ちの鮒。5月に揚がった鮒を塩漬け⇒風干し⇒飯漬けにして12月に出来上がる。

これを輪切りに。主人徳永博明氏は研究を重ね、古式とマイルドの2種類を作る。コハダや鮎、ワカサギなども熟れ鮓にする。

これはマイルドタイプ。香りも優しい。古式は卵の色がもっとクリーム色で薫りも芳醇で骨も一層柔らかい。同時期にできあがるのだが、その製法は秘密。鮒鮓の酸はシャンパン、白ワインにも合う。

ワカサギの天ぷら、右はM氏てずから包丁を握ったキスの天ぷら。
川と海との対決は、ワタにほろ苦さがあるワカサギに軍配か。
白のミュスカデ・ビオワインに進む。
そして、いよいよメインエベンターがのっしのし…と登場!
それがこちらッ!

ズズ~ン!!(効果音つき)熊鍋。私、この冬2頭目。年末に口にした熊はもっと寒い土地で獲れたのだろう、脂肪の層がこの3倍はあった。その美味は体験済み。

濃い目の鍋だしが熊肉によく合う。F氏はクローズ・エルミタージュ04を開ける。熊とワインがまた結構で。リンダ、くまっちゃう…なんつって。

肉はこんな感じ。不思議だがこないだ食べた脂は熱を加えると、表面がツブツブとしたイイダコ風になったが、これはちがう。なぜぢゃ?
脂が実に軽く品格があるのだ。熊は赤身ではなく脂身にこそ値打ちがあると言っておこう。成仏しろよ、熊公。
さぁ、まだまだ続くぜよ・・・!!

冒頭のガシラはこんな感じの煮つけに。ダイナミック!
細かい骨までしゃぶったら、鯛のタイならぬ、ガシラのガシラがあった。

キレイな色が出るので京都でもひっぱりだこという余呉の川エビの素揚げ。サクサク!

冒頭のナマズがこうなった…ナマズのかぶら蒸し。全くクセがない。ナマズにもうちょい塩を利かせた方がいいかもとお伝えした。あと卵黄はでかすぎるので、使うならウズラの方がいいのでは。

もうちょい呑み足りぬだろうと出てきた、カラスミ。M氏が明石で魚と一緒に手に入れてきた。分厚く切って大根も厚切り。ゼイタクとはこのことだ!こないだふぐ屋で食った薄いカラスミは何だったんだ…
地酒の七本槍を燗酒で。

地元の食材で地元の酒を飲る。これが基本なんだなぁ・・・


なんぼほど食うねん、お前ら…のそしりを受けることもなく。ご夫婦は終始ニコニコともてなして下さる。ありがたい。
いよいよ鯨飲馬食も終着点へ。鮒鮓を切る手元を眺めてると、即席で作って下すった吸い物。お湯をかけただけだが、これがなかなか…また飲めてしまうがな。表面に繊細な脂が浮く。これがいい鮒寿司の見分け方だという。これを飲むと二日酔しないのだとも。

シメはやはり、鮒鮓の茶漬け。シンプルにして滋味が深い。数ある茶漬けの中でも一、二を争う品格があるなぁ。ごっつぉさんでした!

アカン、もう動けまへん。お手上げのM氏は京都料理界で最も信頼の厚い魚屋さん。右手の影に黒門のワイン屋F氏、お二人のおかげで結構な酒宴になりました。こんな機会を作ってくれたH氏おおきに。いやはや、よう飲みました、食いました… 
⇒(朝食篇につづくのだ!)