かつて千日前に楽天地ありき。 現在のビックカメラなんば店の場所。
さかのぼれば、プランタンなんば~千日デパート~大阪歌舞伎座~大阪楽天地。
大正3年(1914)から昭和5年(1930)まであった活動写真、演芸、レジャーの殿堂。
琵琶少女歌劇があり、のちの大女優田中絹代はそこの出身。
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左手前、絣の着物で振り向いている丁稚さんでも、入場券を買えば一日遊べて、帰りに
楽天地裏の「自由軒」でカレーを喰って帰れた・・・私らの万博体験みたいなもんだな。
こういう体験のある、叩き上げの商人が意外に大阪には多いのである。
千日デパートの業火は中学ごろか、テレビ画面で臨時ニュースが入ったのを覚えてるが、
のちに、一帯は元々千日墓地でさらし首まであったと知っては、穏やかではいられなかった。
ともあれ、健在なり「なんば自由軒本店」。 明治43年創業だから、今年で108年。
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40年ほど前に初めて訪れたが、まぁ、ほとんど変わっていない。
だが客層は変わった。
圧倒的にアジアの外国人が多い。
のれんに染め抜いた大衆洋食の文字が潔い。
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自由軒というとカレーライス。 日本人にとって洋食との出会いはカレーといっていいだろう。
ここでカレーというと、あらかじめご飯にカレーをまぶしこんだ名物カレーのこと。
ご飯とセパレートタイプは、別カレーと呼ばねばならない。
さて、大げさではあるが、その食べ方を披歴するとしよう。
飯の上に生玉子、全卵を割り入れた姿で運ばれてくる。
卵の載っていないところを食べてみよう。 最初は甘いがあとから少しスパイスが来る。
まず、この玉子をつぶして、ご飯全体にまぶしこむ。
香辛料の体験が無い大阪人にとっては辛すぎて、辛味を和らげるために卵をくれと言ったのか。
はたまた精のつく卵喰って、どこかへくりこもうとしたか。
昔、同級生とどこかで普通のカレーを喰った時に、そいつは食べる前にカチャカチャと
カレーソースとライスをこの状態になるまで、丹念にまぶし込んでいて、
こいつとは友達になれないと思ったことがある。 肥後くん元気にしてるかな。
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このままで食べると、カレーがマイルド過ぎて、ぼやっと曖昧模糊とした味になってしまう。
これを締めるのが、テーブル上の無敵のスパイス・・・ウスターソースである。
適宜、ドボドボと好きなようにかければよい。
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なんぼなんでも、かけ過ぎた! ここのカレーは最初からウスターをかけることを想定した
味付けになっているのだ。 これぐらい多くたって平気、平気!
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こいつを全体にサックリと混ぜ合わせて、準備段階は終了。
うかうかしてると冷めるので、ここまで来たら、一気呵成にお願いしたい。
旨いとか、旨くないとかいろいろに申せども、
まあ、明治から続く大衆洋食の記念碑的な一皿だ。
私にはなんだか、洋食の駄菓子といった風情がある。
日頃は思い出しもしないが、ときに喰いたくなり。
喰ったら、もう当分はいい。
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勝手に広告塔に使いよって、厚かましいなと最初は思ったが、
織田作だって勝手に「夫婦善哉」の中に自由軒カレーを登場させてるではないか。
織田作の姉、竹中タツさんがこれを見て、喜んでいたというから、
オレがとやかく言う問題ぢゃない。