酒仙O氏、編集者と酒場へ。たいがいは町場の立ち飲みか居酒屋へご一緒することが多いが、今回は彼のホームグラウンド北新地のワインバーへ。「素人が葡萄酒をより美味しく飲むには、どうすればいいのか」って辺りを伺いながら、一杯やろうって寸法。でないと、ずっと疑問も何も持たず、ガブガブ飲んでるだけで人生費えてしまいそうなのだ。
ラインホールト・ハート・ピースポーター・ゴールド・トルッフェン
O氏がワインにのめりこむキッカケとなったのは、ドイツ・モーゼルワイン。赤を飲んで「不味い!」と思った彼は、リースリングのフレッシュで清らかな甘さと酸味のあるピースポーターに瞠目した。
「まずは理屈やないねん、自分が美味しいと思うワインを見つけることやねん」。それが自分の基本、スタンダードとなる。
そこから甘すぎるなぁと思ったら辛口に、コクのある物に、赤にと移行していけばいい、とO氏。
ときにドイツワインは商売がヘタというか、どうも本邦においては不当な扱いを受けている気がするなぁ。
ジュブレ・シャンベルタン2004・ドメーヌ・アルロー
ナポレオンが愛したことで知られるブルゴーニュの代表的な赤。原料はピノ・ノワール。深いルビー色。ベリー系と動物系の皮をなめしたような香りがこの葡萄の特徴。最初は甘さ、そして酸味が来る。残る味わいはドライ・・・こんなことイキって書いてるが、O氏は「素人は腐ってるのだけ判ったらそれでええやん」とも言う。御意。
シャトー・カロン・セギュール2001
ボルドーと飲み較べてみた。ハートを形どったラベルは、バレンタインなどに引っ張りだこだという。
香りはカシス、黒胡椒のようにも。植物では松、杉。鉱物。酸を被いかぶすタンニンがあるのがボルドーの特徴。原料はカベルネ・ソーヴィニオンと数種のブレンド。これによってより複雑な味を形成する。
ふ~ん、なるほどなぁ、今までこんな飲み方してこなかった。
普通はブルゴーニュから入って、ボルドーへと移行する。渋み、苦味の中に甘味、旨みがあるのが解かるようになるのは、なかなか高度な味覚なんだそうだ。
ブルゴーニュは酸が強く胃酸を刺激、逆にボルドーのタンニンは胃を動かしてくれるので、疲れた時はボルドーやとO氏は言う。
O氏、他のテーブルの客に請われてワインの抜栓に行く。常に携行しているオープナーは30年以上使っているもの。その無骨さに肥後守を出したのかと思ったぐらい。きょうびの人気ソムリエナイフ、ラギオールとはえらい違い。
これでひゅるっと抜いてきたのは「ドメーヌ・ド・ラ・ロマネコンティ・モンラッシェ1999」。おそらく1本40~50万円はするという名醸白ワイン。
まだバブルが続いておったか・・・クラブのホステス嬢に紛れて、ほんの少しおこぼれにあずかったが、ハーブとナッツのような香り、それでいてバニラのようなクリーミーさがある。しばらく空気に触れさせていると、見事にカドが取れて、ハチミツのような香りに変わった。不思議なもんだ…。
ガブ飲みワインばっかり飲んできたが、まったくブランド名も覚えずに来たので、少しは前頭葉も使って飲むべきなのかなぁ、なんてちょいと思ったりして。(葡萄酒だけでは終わらぬのだ・・・つづく)