マーベラスS

King Of Western-Swing!!
歌と食と酒、それに声のページ。

小肌の鮨でも売らせたい

2010-04-28 03:12:47 | 


 坊主だまして還俗させて小肌の鮨でも売らせたい


都々逸の文句にうたわれた、小肌の鮨売り。
ちょいと尻っぱしょりをして、「え~小肌~ィ」なんて流して歩く職人は
さぞや小粋なものだったそうで。吉原の悪所をば流すってぇと、
お姐さん達、格子の向こうから「キャ~、萌え~」ってなことになったんでありましょうな。
この小肌をして江戸前にぎりの原点とされます。
こんな↓具合の格好だったんだそうです。
     

       

小肌  コノシロの幼魚ですな。冷蔵庫も満足にない時代、塩も強く打ち、酢でしっかり締めたんでしょうな。初夏の新子の時分には4匹も5匹も重ねるようにして握るんですが、あたしゃ、そんなロリコンはいらねぇ。児童福祉法にひっかかるってなもんでさぁ。
 



しかし・・・こうも脇腹を一太刀されちゃあ、気の毒だ。

この日の会は「昔のしごとスペシャル」。
東京銀座で一枚看板張る職人が、昔の江戸前鮨の技法を使ったものばかりを
食べさせるという会。うれしやの。

ひとまず、造りからいただくことに相成った。



ひらめ(青森) 二日熟成



この日、カウンターに並んだのは北新地の寿司屋主人が3人。料理屋が1人。
あとは我々、有象無象。失敬。



本まぐろ(壱岐)  ひれ下の部分

私的には、これぐらいの脂の乗り具合で十分。



カツオ(銚子)

口卑しい酒飲みにとっては、もうちょい趣向を凝らした酒肴があっても
有り難いが、まぁ江戸前派はこんな感じでありましょう。

ここからは寿司の部。
言っておきますが、寿司屋で一貫ずつ写真に収めるなんてのは愚の骨頂、愚かな処遇。
寿司は握った端からポイポイ食べるのが正しい姿であって、いちいちレンズを向けるなんてバカ野郎です。知り合いばかりだったので許してもらいましたが、見返すと我ながら何を不細工なことを、と呆れるばかり。




平目 昆布締め

寿司飯には赤酢を使用  
小ぶりで端正、師匠筋、銀座「きよ田」新津武昭さんのはこんな具合だったかな。



きす 本来は梅酢を使うそうですが、梅肉がかましてある。

小肌もそうだけど、表面の一太刀はいらないのでは。
アタシなんかイテテという痛みを感じます。



シラウオ  ふ~っといい匂い

桜の葉に包んで、短時間蒸す  なるほど、こんな手があったかと目からうろこ。



赤貝 (閖上)  赤貝はこの閖上産をもって最上級となす。
見事な色彩。するりと入って消えた。



やりいか 印籠詰め
つめ(煮ツメ…これを甘ダレなんか言いたくない)が塗られてなく、あっさり軽やか
散らした柚子が心地よい



車海老 黄身酢がまぶしてある
からまぶしを贅沢に発展させたものでしょうか。これも古い仕事のようです

この次に冒頭の“切られ”小肌(東京湾)が登場。




あわび
豚の脂を完全に脂抜きしたような食感の煮あわび。ふわふわ。
下は蒸したもの。噛んで味がある。秀逸です。



10年前ぐらいまで、大阪のにぎりのあわびというと、堅いコリコリしたのばかりで
寿司飯に合わずに難儀したもんです。



煮ハマグリ  大型です
淡く煮てあり、これもツメなし。甘いと沢山食べられないということでせうか
個人的には、もう気持ち小さめが好き



づけまぐろ  実にいい色合いです
合わせだし醤油に浸けて、4日目だとか



アジ  塩と酢で同時間ずつ締めてます



穴子  淡い色。かつて四谷纏寿司では浜煮なんていい、さっと白く煮てましたな

寿司屋談義で、穴子の煮汁は捨てる派と、継ぎ足して使う派に分かれました
こっちは美味しい方に5千点!

腹を表に向けたのと、下は背を表に向けて握ったもの
こちらはツメをつけます



玉子焼き



鶏卵6個と、山芋をつなぎに丁寧に焼かれてます
昔スペシャルでも甘すぎないのがよきです



主人は銀座で店を張り、請われて土日だけ北新地で店を開きます。
えらい時代になりました

追加でかんぺうを所望
今アメリカ大陸を走ってるのは、かんぺい



濃い味に煮上げたかんぺうに、山葵をしっかり効かせているのが嬉しい
もちろん、海苔はパリッとして芳しくなくてはいけません

主人はなかなかしゃべりも達者で、いつか何処かで見た東京落語の噺家のよう
悪戯に客に緊張感を与えるタイプの職人でないのがいいですな

ああ、美味かった
昔の素材はもっと良かったわけで、さぞや、えも言われぬ味だったのだらうと想像


            ほしな    大阪市北区曽根崎新地1




スミカズという絵師ありき

2010-04-23 23:03:47 | Weblog



         


関西のグルマンの皆さんならばご存知でしょう、難波の「波屋書房」。
プロ用の食の専門書の充実していることでは広く知られた書店です。

この本屋がただの本屋にあらず。創業は大正8年。若き日の藤沢桓夫や武田麟太郎、長沖一、林広志(秋田實)が参加した新感覚派の同人誌「辻馬車」の発行元でもあったのです。こんなユニークな出版社が大阪にもいくらもあったんです。(今は寂しいもんですが・・・)
長沖は後年「お父さんはお人よし」や「アチャコ青春手帖」の作者として、秋田がエンタツ・アチャコとしゃべくり漫才を確立するなど、漫才作家という地位を築いたのは、多くのものが知るところ。

波屋の主人は宇崎純一(スミカズ)。画家でもあった純一は、本屋の経営を弟に押し付けて、精力的に絵筆を握ります。数々の抒情的な絵を残し、本の挿絵や絵葉書スミカズカードなどで人気を博します。
そのロマンチックな画風から「大阪の夢二」という有難いような有難くないようなよばれ方をして、でもひょいと見ると見間違うようなタッチの絵もあったりします。現在も波屋書房のブックカバーのイラスト(あの馬車の絵ね)は純一の筆によるものです。

死後、長らく忘れ去られていた宇崎純一展が今日から始まっています。
 
今回の展示会では、彼の画家としてのしごとの全容を一堂に集めると共に、
かつての大阪ミナミという土壌に花開いた豊かな文芸世界をも見直そうというものだそうです。
ぜひ、お運びを。


「大正ロマンの画家・スミカズの優しき世界 ~ 宇崎純一展」

    会期 4月23日(土)~5月5日(水)

       平日  午前9時15分~午後8時30分
       土日祝         ~午後5時

    会場 大阪市立中央図書館 1階エントランスギャラリー
        大阪市西区北堀江4-3-2 地下鉄西長堀スグ


パーティーめしを考える

2010-04-21 02:39:25 | 



過日行われた、日本ソムリエ協会の重鎮、樋口誠さんの受賞パーティー。
元の勤務先、ホテル日航大阪のセレブリテは会場に入ろうという人でギューギュー詰めだった。なんか暗いニュースの多い世の中、こういう明るいことに乗っかろうという人が多いと見た。もちろん樋口氏の日頃培ってきた人望もある。威圧感を与え、重畏怖感を持たれるソムリエも多い中、彼は関西風で弁舌立ち、軽妙を持って知られる。

商売の街大阪で、客を威圧するソムリエではどもならん。客を笑わせたり楽しませたりして、ワインを一杯でも飲んでもらった方がいい。ワインを愛する客のニーズも、土地土地によって異なる、サービスマンだって違ってくるというわけ。



東京と大阪では、パーティーのフードの減り方が圧倒的にちがうなぁ。東京はパーティー慣れしてる風な、スマートな立ち振る舞いの客が多く、グラスワインを手におしゃべりが主体で、フードには余りとやかく言わない・・・そういうフリをする。なので、ごっそり余るなんてことが多い。勿体ないことこの上なし。一方大阪ではフードはパーティーの成否を分けるかなりのウエイトを占める。客もしっかり食べる。まぁ見事なぐらいだ。



挨拶が続いている中、ス~ッと何気なく移動しながら下見し、いかに効率的に移動して料理をゲットするかをシミュレーションする女性客がいた。目の動きで分かるってなもんだ。万引犯かっ。

料理を勝ち取ってきて、我が陣みたいなテーブルに運ぶのって、なかなかカロリーのいる作業だ。ひと様に運んでもらうのも気を遣うし、慣れないスーツでヘトヘトになる。なので、ちょいちょいとつまんで終了ってなことが多い。もうちょい若けりゃ猛然と駆け回るであろうが。

スマートにしっかり食べる方法はないものか。まず徒党を組まないこと。鳥が巣へ餌を運ぶ方式では限度があり、身内で終始する危険性がある。パーティーとは回遊することに意味がある。せいぜい挨拶し顔を見て名刺を交換することだ。なのでダラダラ飲食しても意味はなく、メリハリをつけて動くことが重要。食べるところは食べる。メインも狙うべし。さっと摂取し、皿を置いて回遊を開始すべし。その繰り返し。
・・・なんて言ってても、前菜だけでおしまいみたいになってしまった。やむを得ぬ。

という訳で、帰りになんか食べに行こうやということになった。異存はない。



鶏レバーペーストのカナッペ



砂ずりかなコンニャクかな・・・忘却。



鶏皮うまし



レバーのカルパッチョ



ポテサラ  男の美学はポテサラにあり!

オムレツ  プレーンのオムレツのなんと旨い・・・



カマンベールフライ ごま風味



車海老フライの大盛り ちょいっと他のレンコンなども揚げて付けてくれている。
いくらも手間のかかるものでも、原材料のかかるものでもない。
だから付けて喜んでもらう。勝井さんの明快なサービス論だ。
(もちろん時と場合によるので、ない時もあるよ)



タルタルソースがうめぇ。これだけでワイン飲める。



カリカリに焼いた豚足  ここの豚足旨いなぁ。



ちょいと肌寒かったので、熱々のオニオングラタンスープも。



山形牛フィレ肉のビフカツサンド  こりゃたまらん。



タラコのスパゲッティー  カツイにこんなんあったんや。



デザートもたぶん・・・サービスかな。

もちろん、使う金額にもよります。でも、なんかしてくれるのが勝井氏。

食べたりぬパーティーの後の洋食も佳きかな。





         ホテル日航大阪 セレブリテ   大阪市中央区西心斎橋1

         グリルKatsui             同       東心斎橋1 


  


小洒落た、ピッツァ野郎

2010-04-20 00:45:25 | 




ちょっときれい過ぎるピッツェリア。 カウンターのぐるりには薔薇の花が入ったワイングラスが並んでいる。カッカッカッ・・・ちょっと、ケツがこそばゆい。遅い昼飯にグラスワインなどを付けると、いかにも気取ってるような気がして気が引ける。そんな食いもんかぇ?ピッツァ。

ここのピッツァはナポリのコンテストで優勝したとかいうもの。
でもね、いかに製法を教えたって、焼き手のピッツァヨーロが違えば味だって違ってくるってぐらいデリケートな食い物っていうぢゃないか。窯も客席から距離がありそうで、なんだかな~。窯の火が見える場所で焼き立ての火傷しそうなのに齧り付きたい。

まぁいいや、頼んだのは、プレーンなマルガリータ。グラスの赤ワインはランチにはちょいと重い。ソーダで割った白のスプリッツァーにしときゃよかった。




ふむふむ・・・といった感じ。それなりに旨いが、もっと生地の旨さがあってもいい。
最初は快調だったが、次第に単調になってくる。唐辛子のオリーブオイルをかける。

バジルも、もうちょいシャンとしたものが欲しいね。シーズンオフか?
よく見なきゃ、お茶の葉をこぼしましたって程度ぢゃないか。




フレッシュなトマトとソースは生地に絡まず、折り畳んで食べるがこぼれそうになる。
もうちいとじっとしててもらいたい。

家でやると、こんなには上手く行かないが、それはそれで旨いもんだぜぇ。

大体こんなに気取ったピッツァで男一人は気づまりで。お好み焼き屋のおばはんみたいなのがやるピザ屋ができなけりゃ、根付いたとは言えないんぢゃないのかね。



        ピッツァ・サルヴァトーレ・クオモ 梅田   大阪市北区曽根崎2




おいしい復讐

2010-04-17 22:24:23 | 

とある在日の大手焼肉店の社長は、戦前・戦中にかけての自分たちが受けた仕打ちに対して、戦後焼肉店を立ち上げる中、「食文化で日本に復讐をしようと考えてます。今に日本の食を変えてみせますよ」と豪語していたそうな。そういうわけでは戦後60年、完全に日本の食文化は見事なしっぺ返しを食らった。赤坂・新大久保・鶴橋・三ツ寺筋はおろか、今や日本中、韓国料理のない街はないのではないか。ターニングポイントとなったのはパルパル(88年)のソウル五輪。焼肉店が増え、すき焼きもステーキも影が薄くなった。今また女性をターゲットにしたホルモン店が巷を賑わせている。


さて、大阪西区で知る人ぞ知る、韓国料理店へ。
ビルの地下、あやしい中華料理店のお隣。本場の匂いぷんぷん・・・。
ちょいと早く着き、とりあえずビールに韓国海苔だい。



ごま油を塗り、塩をパラリとかけてある単純なものだが、美味だよな。
味付け海苔は完全に食われているのではなかろうか。
これがいいツマミになる。邪道だろうが、スライスチーズ挟むと格好の酒肴に。



自家製チャンジャ  こんな美味なチャンジャひさびさ!

タモリ倶楽部で、“チャンジャ祭り”って企画やってたな。



チャプチェ よく味がからんでいる。

韓国料理が女性たちに受け入れられたのは、カプサイシン効果と野菜が多いということ。それと医食同源。野菜の取り合わせに陰陽五行思想が反映されている。



キムチ 僕らのガキの頃は朝鮮漬けと言った。今、日本の漬物の中で売上ナンバーワンは、もちろんキムチ。うちらの親父の世代はたぶん口にもしなかっただろうが、過去にこれほど日韓が食を通じて近くなった時代はないはず。恨三百年、一念岩をも通すで、日本人の味覚はこの60年で完全に韓国勢力に浸食された。



新鮮なチョコレート色の生レバー



ナムルはごく当たり前の3種。これも自分で作ってみれば分かるが、いちいち別の鍋で茹でて、少しずつ違う調味料で和える。ひたすら手で。手間かかってんだ。



蒸し豚  脂肪分が落ちていながらも、しっとりと美味。

この唐辛子味噌のタレはうまいが、アタシが楯突くとしたら、刺身までこいつで食べるのはどうかと思う。醤油と山葵とかポン酢とか、素材に応じて、そういうバリエーションを持たせたところは日本人の方が絶対繊細。



センマイ  辛子味噌

朝鮮では千葉、百葉と言われ、江戸時代、朝鮮通信使を迎える時にもメニューに挙げられた由緒正しきパーツ。 失礼ながら東大門市場で見た時にゃバケツに突っ込んである雑巾に見間違った。



チヂミ  ネギのチヂミをパジョンなどとも呼ぶ。
お好み焼きの原型説もあり、(ボクはどうも千利休の麩の焼きまで持ち出すのは無理があると思っている)粉を溶いて焼くチヂミやピンデットに馴染みがあるから、日本に渡ってきた朝鮮族の人々はたやすくお好み焼き屋を玄関先でやれたんだと思う。



味付き豚足 手で持ってしゃぶりつく!
同行Y氏は、豚足マニアで、そのまんま塩茹でにしたヤツの方が好みという。
豚足も昔はギョッとしたものだろうが、すっかり市民権を得たといえる。




多松チゲ メウンタンのようですな。手長ダコもいて、可愛いもんでしょ。でも食うぜ。
これだけのインパクトある鍋、日本にはなかった。



これがピリ辛で美味!
鍋の中は渾然一体のカオスとなる。このなんでもピビンして辛味噌系でまとめ上げるのが韓国料理のひとつの特徴である。汗みどろで食べれば、パワーが出る。 
また一人頭880円と、安いのなんの!



最後は“辛ラーメン”を入れて、この乾麺がなかなかいい。
完全においしい韓流にやられておりまする・・・。

後ろを見たら、ABC朝日放送の女子アナが。声をかけようとしたが、こっちは知っていても向こうはこっちのことなど知らない訳で、笑顔で慇懃にあしらわれたら嫌なので、やめた。



          多松(タソン)     大阪市 西区 江之子島1丁目