マーベラスS

King Of Western-Swing!!
歌と食と酒、それに声のページ。

やっぱ鶏やなぁ、の秋

2014-10-28 18:49:11 | Weblog

年々、焼きとりが良くなってきた。

これをひとは老化というのだろうか。

ちがう。 若い頃にはサシの入ったとろけるようなリッチな牛肉に感嘆の声挙げたが、

それがちいとばかし、めんどくさく思えてきた。

精神安定剤的な食べ物の方が良かったりもするのである。 やっぱジジイか? なんとでも言え。









今回は、ワインのセールスプロモーションに、ワイン×焼きとりということで

声をかけてもらい、平日の昼間出かけてきた。 場所は北新地。








焼き松茸とクレソンのおひたし

松茸はアメリカ産ですぞ







一品目はササミのような…、ちがった、胸肉。

大和肉鶏の胸肉のカルパッチョ  3日間熟成

グレープフルーツとザクロでさわやかな滑り出し。

ワインはシャトーヌフ・デュ・パプの白。 こちらもさわやか~







ああ、秋ふかき。 ササミの造り・黄身醤油漬け

醤油も土佐醤油。カツオだしで割ってある。

なんとも秋の色だ。

続いて、 七谷鴨のつくね。







ここは北新地「焼鳥YAMATO」さん。 一度ゆっくり来てみたい一軒だった。 

合わせるワインはローヌのM.シャプティエ by 日本リカー。

比較的安くていい、穴場銘柄が多いと勝手に決め付けていたローヌ地方。

シャプティエも常にはリーズナブルなワインが多いが、今回はイイものも。ウッシッシ…







蓮根まんじゅう 

銀あんにカンコワイヨットという、フランスのチーズソースが使われる。

黙ってたらチーズとは気がつかない。







七谷鴨のねぎま、サガリ。

同じシャトーヌフ・デュ・パプ…発音するだけで舌が血だらけになる。

赤を。







ひとくちのアミューズのようなのが。

右、パルミジャーノのサブレに、肝のムースとアイコ(トマト)、蜂蜜。

中、生黒コショウのラスクに、鳥取産キャビア、大和肉鶏のスルメ?

左、ココナッツのチュイール、ゴルゴンゾーラ、果物の辛子シロップ漬け

ああ、こんないくら食べても腹がいっぱいにならないので、延々ワイン呑めたら幸せだろうな。

勘定考えないで発言してるが。






大和肉鶏の皮付きセセリ。

表面はパリッと快適なる焼き加減。

大和肉鶏はちょっとワイルドで、相当うまい。


フザンタージュ(熟成)した、モモの三種盛り。







変化はよく判らなかったが、美味。

どうも、年齢と共に焼きとりが好きになっているのも、これ思うに

先祖がえりではあるまいか、一種の。

二代遡ると、麻布愛宕下の鶏すき焼き「光輪亭」にぶつかる。

かしわ屋の遠い親戚もいる。

新橋ガード下の老舗焼きとり「小松」はこれまた遠い親戚にあたる。

そんなことからウチの親爺は鶏を受け付けない。








スモークチキンとトリュフの冷製もちむぎ素麺

レンゲで出てくる、まさにひとくちサイズ。

渾然一体となり、鼻から香りが抜けて行く。

私のテーブルはマスコミ席。 大半はワインに一家言ある料理人たち。

知った顔もチラホラ…。



      



白肝のスモーク 25年物バルサミコソース

貴腐ワインとバルサミコの冷たいカクテル

このとろりとした甘さと、レアっぽい白肝の濃さが何をかいわんや。








漬けにした肝をタレ焼きに。 コーヒーオイル風味。

上から仏ヴェローネのココアニプを散らしてある。

ハーパー作る江戸製法の日本酒、タイムマシーンを。

英国人杜氏が造る酒は古酒っぽくも紹興酒っぽくもある。

これも肝焼きとの相性は格別。







ハツの低温煮をはさんで、メインともいうべきは、

茨城県産 首折れハト 3種盛り







中、ロース赤ワインのタレで割ったフランボワーズのソース。

モモ、皮付きセセリ塩焼き。

エルミタージュ赤 ル・パヴィヨン09  シャプティエのフラッグシップワインだそうで。

こういう脂っこいのには、濃い赤がよろしいようで。




      



店主たちはこのまま自分の店に散り、営業となる。

わだすはもうちょっとハシゴしてと言いたいところだが、

まだまだ陽は高いので、許してもらえそうにないのであった。






秋到来、ケケッおでんだい!

2014-10-24 00:30:39 | 

FaceBookを見ていると、友人がおでんを仕込んでいた。 おでんに燗酒かぁ…。
私もかねてから作りたいと思ってはいたものの、ヒマがかかるので回避していたが、
とうとう…おでんモードにさせられてしまった。


しゃあねぇ、やったるかぁ!!

 

         



チビ太のおでんの3種類ってなんだっけ?という話になり、その頃、赤塚家に出入りしていた友人に

聞いてきて、とたのんだら、色紙までいただいた。 赤塚先生イイ人だった。

ちなみに上からコンニャク、ガンモ、一番下は意見の分かれるところだが、

先生いわく、ナルトであった。


せっかく関西にいるのだから、やっぱ関東煮とよびたい。かんとうに…ちゃいます、かんとうだき。

どこが一番違うのかというと、鶏ガラなど動物性と和のダブルスープ。

それにシーシェパード聞いてるか、のクジラが入るところにある。








水ナスみたいだが、皮鯨(コロ)。

冷凍の皮鯨(本皮)を適当な大きさにして水から漬け、塩をひとつまみいれて沸騰させ、

塩抜きと脂抜きをする。これだけで700円ほど。関東煮を標榜するならぜひ、そうでないならスルーを。







煮ぬき、牛すじ、平天、ごぼ天、厚揚げ、ちくわ、糸こん、コロ、ひろうす







主役は大根、こんにゃく、里いも、ブナシメジ







木綿とうふ、つみれ、シューマイ…数えたら16種類。

種類が多い方がバラエティが楽しめて、味も複雑になる。

スジ、コロなどだしが出るものから順に入れて行く。

これだけで夫婦二人分である。

食い過ぎかえ?








一緒くたに炊いたのでは、仕上がりにムラができてしまう。

なので大根は前日に炊いて、冷ましておく。

こんにゃく、里芋も別に炊いておく。

そう、丁寧に手をかけてやることが味につながる。

本来は四角いおでん鍋があればいいのだが、そんな贅沢は言ってられない。



むふふふ…

     




これは、日本酒だわい。 冷蔵庫の香住鶴の純米酒を。

ヒマな時は道頓堀「たこ梅」に似せた辛子をブレンドするのであるが、

そこまでの気持ちの余裕なく、既製品のチューブのやつ。




     

      




残った具はそのまま放置せず、具は取り出して。

だしは漉しておき、冷蔵庫へ。

翌日だしを温めて、再び具を入れれば美味しく食べられる。


コロはだしに複雑な味を加えてくれる。

課題はコンニャクの味の滲み方。

まだまだ不十分なので、田楽味噌をつけて食ったらイケた。

いよいよ冷気漂い、冬めいて来た。

冬の間中、もう一度や二度、関東煮が登場することもあるかな。




カウンター割烹の鼻祖であるぞよ

2014-10-20 12:55:40 | 

 

 京都、祇園下河原。 修学旅行の生徒が一列でケッタイな按配で写真撮っていた。    

 

          



そこにあるのが、「ぎおん浜作」。

日本料理の世界では知られた存在。

 





何で知られているかというと、谷崎潤一郎、川端康成、小林秀雄、白州次郎、川口松太郎、

河井寛次郎、小津安二郎、イサムノグチ、チャップリン、吉右衛門… 錚々たる客の顔ぶれ。

それだけではない。 初代森川栄は客の目の前で鯛や海老をさばき、その手さばきを見せた。

酒食は料亭でとるのが当たり前の時代、カウンター割烹はこの「浜作」から始まったとの説あり。

昭和2年、祇園富永町に暖簾を掲げた。   その模様がこの一枚。







腰かけで客とのやり取りで料理を決めて出す割烹は、大阪から始まったとの説もあり。

そもそも浜作の初代も船場で修業したのだから、大正末期の大大阪時代を経て、

その料理技術をもって、ご大典の好景気に沸く京都で独立したとみえる。








まずは冷たいじゅんさい

ちゅるんと快感。


         



ハモの季節だったので、葛たたき。

目の前でハモ切りし、化粧用の刷毛でくずを叩いて行く。

谷崎はここか、辻留か堺萬の葛たたきを大層好み、その官能的な食感から、

ヌードダンサー春川ますみを想起した。




 

造りは、明石鯛・目板かれい



 

器は先々代の楽。

いちじくのワイン煮  胡麻ソース









いちじくの器を横から…器の見事なこと、さすが。

こっちは取材のノリだが、文化財級の器が出されるところがすごい。







はもざく  うざくではなく、カリッと焼いた鱧。 

これも初代の考案と聞いた。キュウリは徹底して水を搾る。

 





青いのは河井寛次郎作。

もう一方の器は濱田庄司。

民芸の大物である。








これもまた名物、だし巻き。

ふわふわで箸でつまむのが難儀なくらい。じわじわだしが滲み出す。









器の色彩がすごい。

先代の永楽。 派手で大胆な構図。

それでも野暮にならないのはさすがというべきか。








シメには鰯の印籠煮








なんでもない器だが、魯山人。

今では名人上手だが店に来て、例によって尊大な物言いをし、軒並み嫌われていたらしい。

金を払わない分、自作の焼きものをいらんと言われても箱で送って来たという。

精神的にもそういうタフネスでないと、仕事は残せないらしい。

千鳥酢で6時間炊いて、濃い口だけで3時間炊く…素人に真似できるシロモノではない。








これで茶漬けをシメに。

炊き込みごはんを出して、常連だった湯川秀樹に叱られたという。

「浜作はこんなご飯をいつから出すようになったのか」と。 お~こわ。

ご馳走をさんざん食べた〆はあっさりとした白ご飯こそが良いと悟ったという。


浜作は初代から主流派にはならない人だったらしく、三代目の今も一言居士である。

京都の料理人は強力な旗振り役がいるから、みんな一方の方向にしか向いていなくて、

それは不健全なことやと仰る、京都で唯一の非主流派。

バブル後、なんとかこの一店だけにして立ち直りを図って来た。




 


そうして、客の好みに当意即妙に応える板前割烹の原点に立ち返った。


この店を自由に使えるようになるには、経験値もお金もいる。

生まれ変わっても、度々通えるような立場にはなれそうもないが、

かつてこのカウンターを賑わせた大人たちに一歩でも近づきたく思う。

ムリだろうがな。



鯖食ったし、働くどぉ~

2014-10-02 15:18:07 | 





大阪の台所、木津市場。 民間の卸売市場としてはめっぽう長い歴史を持つ。

戦後の闇市みたいな風貌が数年前に建て替わって、立派な駅舎のようになった。







ここへ来たら、素通りできない店が一軒。

いかに建物が新しくなろうとも、看板が一新されても変わらない。







私のようにたまに行く客ではなく、デイリーの客がメインだから、

変わらないということが大事。 安心感でめしが食える。

意外とそんなことって大事。







店はお母ちゃんと息子伸五。市場の食堂の雰囲気を伝える、今では貴重な店。

こぎれいに変えてしまうと、その雰囲気はなくなってしまう。

マグロ屋オクセを継いで、今年亡くなった長男秀介くんの遺影。







まず店に入るや、ご飯の大きさ大・中・小と味噌汁の種類を聞かれる。

あとは陳列ケースを見て、好きなおかずを決めればいい。

まず大衆食堂とは、めしと汁がうまいことが絶対条件。

文句などございません。







徹夜明けでここの貝汁などすすると、 ジュワ~っと荒れた胃壁に

沁み渡ります。 「ええだし出たぁんなぁ~」







おお、また豪華な造りやわい。 こう来たら一杯飲まん訳には行かんが、

今日は朝飯を食いに来たので、ビールは封鎖。

ビール飲むと、ご飯が入らんようになる。

バブルの頃な。

ミナミの深夜族は朝方まで騒いで、

オネーチャン引き連れたまま、ここへ朝飯食いに来たもんである。







アタシャ、そんな恩恵こうむったことなどいっぺんもおまへんけどな。

名物のオムレツ。

中身はバターたっぷり、牛ひき肉と玉ネギ、シイタケ入った具。

ワインとコショーが香る。

ケチャップがどひゃっとかかるのが、いかにも大衆食堂。







そして…大衆食堂の大定番!

煮さば。

甘辛いタレがご飯に合う。

ビールでも酒でもない、これはメシしかない。

今ほど肉が一般的ではなかった時代、鯖は庶民には何よりの栄養食だった。

鯖喰ったし、さぁ働くかぁ~

そんな気にさせるのである。







木津市場を出たら、赤いポストがポツンと立っていた。

しばらく見なかったなぁ~お達者か。