マーベラスS

King Of Western-Swing!!
歌と食と酒、それに声のページ。

わが青春に悔いなし風居酒屋にて

2017-01-31 02:52:09 | 京都


 戦前、三高生など京都の学生はなにかというと寺町に繰り出し、

 名代のすき焼き屋「三嶋亭」の二階座敷などで痛飲したと聞く。

 それぐらい安かった。今では、うんと力瘤を込めた日でないと行けやしない。

 すき焼き屋よりも、さらに敷居の低い店が裏寺町、柳通りにある。

 それが「静」。 縄のれんのすき間から、にぶい灯りが洩れる。

 やってるのかやってないのか解らないぐらいの奥ゆかしさ…




 


 戦前、右隣には「正宗ホール」という安酒場があり、三高生などが根城にした。

 若き日の織田作之助、青山光二、野間宏、富士正晴などもきっと行ったはずだ。

 戦後になって、その店を買い足して店を拡げたという。

 その残滓は店のあちこちで感じられる。


 

 
 落書は戦後のものなんだろうけど、 

 こうも重ね書きすると、風格というか、ルオーみたいな厚みが出て来るような。

 えらいのは、便所のエログロ落書きみたいなのは一つもなかった。

 白墨が常備されている訳はなく、客が持参するのか、書いていいとは一切言ってないそうだ。

 

 

 


 片隅に、誰が弾くのか古ぼけたガットギターがあった。 

 いろんなものが沁み込んだ壁を舐めながらでも一杯飲めそうな気がする。

 誤解の無いように…掃除は行き届いている。 お母さんと娘さんでちゃんと守ってる。

 

 

  あじの南蛮漬け ¥500

  酒で口が甘くなった時に、なぜかこんな酸味が欲しくなる。 

 



  白菜漬け ¥420

  これもちょっと酸っぱくなったのを、水に放して固く絞って出す。

  こういうのがいい。

 





 なになに…「静の出し巻きは最高や~みんなたのめ」

 やかまっしゃい。 

 キミらの指図は受けずとも、おっさんはだし巻きたのむのである。 




 
 出し巻き  ¥490 


 だしがよく効かせてある。 こいつをそのまま弁当箱に入れて、学校へ行きたくなる。

 しみじみ美味い。

 やっぱり、学生居酒屋史に残る、名物にちがいないのだ。




 


焼き鳥、再発見。

2017-01-14 02:00:54 | 大阪 福島野田

ワタシ、酉年である。しかも鶏には縁が深い。

祖父は愛宕下で鶏すき焼きの店「光輪亭」てのをやっていたらしい。

新橋ガード下で一番古い「小松」は祖父の姉の系統であった。

そこのうめばあさんがNHK昼のプレゼントで、「この辺にはパン助が大勢いた」と
公共の電波で白昼堂々、パン助を連発していて笑った。

名古屋にもかしわ屋の親戚がいる。おかげで親爺は鶏が食えないで来た。

私は大丈夫。








さて、お初に探訪したのは、大阪福島「鳥匠いし井」。

いや~、ぬかりがなかった。

おぼろ豆腐、だだちゃ豆のピュレ。

豆☓豆で味が濃い。 


 

 

 

胸肉の昆布締め 山葵






白肝  二種類の食感。上質なテリーヌのごとき。







ここまでは春鹿 超辛口


サラダを挟んで、前菜盛り合わせ~

水前寺草おひたし、ポテトサラダ(燻製鶏ハム入り)、レバーパテ入りのシュー
茹で南京豆、ゴマ付き絹かつぎ


う~む・・・どれ一つ外してませんな。







酒は主人におまかせにした。

宮城の日輪田。山廃雄町に乗り換えて。



 

 焼き鳥になり、抱き身、山葵から入る。

 皮はパリッと炙られ縮み、身はプリプリで信じ難いほどジューシー。







 酒は香川の悦凱陣。



 

   焼き鳥は塩のみ。

 タレ好みとしてはそっちも試したいが、無いとなるとね。

 ねぎま。

 皮目一枚をこがし気味に焼き、中の肉が盛り上がるように火入れする。                                                                                                     






 
 しかも、他で味わったことのない、格別の肉汁。

 これが炭火をを熟知した、炙りの技術ということなのだろう。

 食感を変化を付ける、胸肉のおかき揚げ。







 つくね。 武骨な形がいい。

 これはタレ。甘すぎないのが酒飲みにはよろしい。







 肝ときたら…しっかり系の赤ワインがほしくなる。






 てなことで、豪州のシラー。

 お酒のチョイスも店主石井さんまかせ。







 蒸しつくね、というのも面白い。

 マッシュルーム、トリュフオイルで風味付け。

 スープまで飲み干す。



 



ソリレス。腿の付け根あたりにある、残すものはバカといった類いの

フランス語だったか。







 鶏皮フェチとしては、いっとかねば。

 パリッと焼き上がり、大変結構な感じ。







 割愛したけれども、たぶん、串は11種類。 

 とにかく、そのジューシーさ加減が印象に強い。

 主人が修業した師匠の店「あやむ屋」を凌駕するほど。 







 煙を一切感じない。脱煙がきちんとされているのだろう。

 女性客が多いのも頷ける。 


 昨年秋のミシュランガイド京阪神版でみごと一つ星を獲得。

 すばらしい。

 

 


一年の計は雑煮にあり。

2017-01-05 02:40:28 | 

一年の計は元旦にあり。

といいながら、もう数日過ぎてしまったが。

とりたてて新しい年に何かを改めたり、今年こそなどと気を張るのは

もうやめてしまった。

今年は去年の続きぞ。 だらだらと生き延びてやるのだ。


てなことで、このブログもダラダラとやめることなく、細く長くしぶとく…。



 

 

ご存じ、力道山。

没後30年の時にスポーツ番組の中で特集を組み、生存者の話を取ってまわったが、

あれから24年も経つと、もう多くの関係者はおりますまい。

戦後の昭和は力道山が死んだ昭和38年まで。翌年の東京五輪からは新たな昭和の

幕が開いたような気がする。

 

・・・てなことは正月から関係ないか。



正月らしく、拙宅の雑煮をアップしておこう。 



 



家人が大阪なので、白味噌の雑煮。

長いこと大阪に住みながら、親爺が東京下町の小倅だったため、すまし一辺倒。

この濃厚な味わいは所帯を持つまで、ほぼ食ったことなかった。

里芋、京人参、細大根、 吸口に柚子。

これに和辛子を添えるも悪くない。


さて拙宅では、これに黄粉を添える。 左様、餅を一旦出して甘い黄粉につけて食す。

家人の亡父は大和の出雲出身。 大和地方ではこうして食べたそうである。

味を重ねて行く重層的味覚。 年に一度のごちそう感覚だったのだろうか。



 



これがね…大きな声では言えないが、なかなかイケるのだ。 


思えば、京都今宮神社のあぶり餅がこの食べさせ方をする。

「一和」「あぶりや」の二軒が向かい合わせで客を取り合うのだが、

竹串に刺した一口大の餅を、炭で炙り、白味噌ベースのタレにつけ、

黄粉に転がしていたような気がする。

一和などその歴史は千年ともいわれており、日本最古の菓子の呼び声もあるぐらいだ。





 


案外、その発祥は奈良にあり、平安京とともに持ち込まれたのではあるまいか。

まさかとは思うが、食文化にはそんな想像も膨らむ面白さがあるのだ。


酒食に放歌高吟、楽器は生涯のお友だち。

口に入ること、出ることしかほぼ興味のない男でありまするが、

どちらさまも、本年もどうぞよろしゅう。



おまけ…

親戚の幼児のために作ったお年玉。