マーベラスS

King Of Western-Swing!!
歌と食と酒、それに声のページ。

ツウになるのは難しい・・・

2012-06-29 01:13:42 | Weblog

NHKカルチャーセンター「蕎麦チョイ通入門」。
通になるための道ははてしなく遠い。
だが、チョイと通にだったら、なれるかもしれない。
蕎麦屋で通ぶってみたって、チョイとだけなら微笑ましいもの。


そんなことで蕎麦の来歴やら、ヨタ話を私がしゃべり、
一流の職人の仕事を味わっていただこうという会。
講師なんてガラぢゃない、いいとこ案内人、コーディネーター、添乗員、コンシェルジュ…
配った資料には、「弁士」とした。 ちょっとうさんくさい弁士辺りが丁度いい。







淀屋橋1番出口上がって、待ち合わせ。
ビッグイシュー売りのおっちゃん、ちょいと邪魔するぜ。

米国総領事館を過ぎて、老松通りを西へ西へ。
ここは大阪天満宮の参道でもあり、かつて大塩平八郎や西山宗因が住んだ街で、
戦後、古美術・骨董の店が増え、今や90軒近くもあるという。
ウインドーを覗けど、私ごときの懐には合うわけもなく。

着いた先は、ご存じ「なにわ翁」。
初代がなんばで開業。82年の歴史を持つ浪花のうどんそばの店だったが、
3代目が「翁」高橋邦弘師の弟子となり、蕎麦一本に切り替えた。

2階にお邪魔し、主人勘田拓志さんを紹介する。






昨晩描いた、自作の蕎麦の絵で図解。
胚芽がこんな風にS字になっとるのですよ。


もっとも栄養価の高い胚芽の部分が、蕎麦の場合、中央内部にある。
米や麦は端っこにあるため、精米時にポロッと取れてしまうが、
蕎麦の場合、すべて蕎麦粉の中に含まれるので、
余すところなくビタミンB1などが摂れるという訳。







最初は、もっとも地味にしてもっとも大事な、木鉢(こね)の工程。

一級のプロのわざを、これだけの至近距離で見るチャンスはそうそうない。
アレルギーなら、咳込みそうな距離。 みなさん、真剣なまなざし。







「水回し」という作業。
蕎麦は水(と、つなぎ)だけで打つものなので、蕎麦粉の一粒一粒に
水を吸わせるように、まさに水を回して行く。
この際、蕎麦粉は熱を嫌うので、指先だけを使う。


ある程度、水を含んだら一つにくくり、
今度は捏ねて行く。
手早くやらないと、風邪をひく(乾燥してしまう)。


菊揉みというもっとも理に適った捏ね合わせ方は、
焼きものでも使われる方法。
団子にすると小ぶりのかぼちゃ大。
こうした菊のつぼみの文様になるから「菊揉み」という。






これを一端とがらせて、菊の文様を消して、木鉢の工程は終わる。
鉢には一粒の蕎麦粉も残っていない。







次は延し台へと移動。
さらしな粉をたっぷり打ちながら、これを手で丸く延して行く。






ある程度延したら、麺棒で丸く延し、

次に四角くしていく。

三本の麺棒を使うのは江戸流。

使っているのは、なんと、元ヤンキース松井の使うのと同じ、

バット職人、久保田五十一の手による麺棒。

ちょっと重く、使いやすいとか。 グリップエンドにはMizunoのマーク入り。

延しが終わったら、折り畳んで、次は最後の庖丁だ。






素人目にはもっとも難しく、ここが見せ場の切りの工程!

でもホントは、[木鉢・延し・庖丁] の中では、もっとも簡単な作業。






塗りの生舟にきれいに並べられた、蕎麦切り。


さぁ階下に降りて、早速いただきましょうか。






山葵の茎の漬けてあるやつ (正式名称わからず)

こういうのがくっ付いてくると、私好みの豊の秋はすいすい飲めてしまう。






そば味噌といえど、大きく二種類あって、江戸味噌を滑らかに捏ね合わせて作る、江戸老舗系と、

一茶庵系の味噌・ネギ・蕎麦の実などを合わせて、しゃもじに塗って焼くタイプ。

どっちも好きだい。

でも、お酒を飲まない人たちは、どうするんだろ・・・






小ぶりの蕎麦が出していただく。火にかけた鍋の中で一気加勢に掻きあげる。

山葵醤油で。様々なパターンがある。

木の葉型にしてあって、桶のお湯の中に泳がせてある古いタイプは

長いこと会ってないなぁ~。







清涼感ただよう、梅おろしそば。

今の季節にどんぴしゃ!






とろろおろしそば。

半分、花巻になっていて、海苔の香りと山芋がいい感じ。

山葵かと思ったのは、辛味大根。






そして、仕上げは看板のざるそば。

ひんやりと冷水で締められている。

歯応え、香り、申し分ない。

添えられた薬味は、つゆに溶くばかりぢゃ芸がない。

麺に山葵をちょいっと置くもよし、一味パラリもよい。

一口残しておいて、蕎麦湯でうめて食べれば、ミニかけそばができる。







好きなように楽しめるのが、蕎麦。

ただ、時分どきに来て、忙しいさなか酒だなんだと注文してはいけない。

昼は外して、おやつの時間辺りに出直した方がいい。

堂々と昼酒を飲めるのが、蕎麦屋のよさ。

飲めない人も、かたくなに拒否せず、ほんの少しどうでしょう…。




ええかげんに、しぞ~か

2012-06-26 18:31:36 | Weblog

さてお昼どきである。 珈琲欠乏症になってきた。

ガイドブックなんて手元にないし、スマホもノートパソコンもなし。

ふと目についた葵区役所の受付のお姉さんに老舗喫茶店を尋ねてみた。 

こういう一介の旅の者に対する広報活動も役所の仕事のうちだろうと、勝手に考えて。 

親切に街中の地図までくれた。  意外に、役人使えるなぁ~の気分。






教えてもらった「喫茶レザン」。

なかなかのくたびれ具合、ベテラン店主の感じも悪くなかった。







だが、たのんだブレンドコーヒー。

ちょいと私には薄すぎた。

どうもこれではエンジンかからず・・・もう一軒探すことに。







スタバなりなんなりはあるのだが、地方に来たら、その街に根付いた

老舗喫茶店がいいに決まっている。

ということで、もう一軒の「珈琲の店 ポプラ」へ。

モダンジャズのDVDが流れていて、なかなか良い。

マンダリンを注文。 






うん、いい感じ。

開店してちょうど40年。ボクより10歳ほど上の店主ご夫婦。

あとで、玉子サンドとフルーツサンドが名物と知った。 あとのまつり。

歩き回っていて、こんな店を発見。







静岡発!? 手打ちの立ち食いそば 「そば処 長澤」。

いいねぇ!






今から15年以上前、東京曙町で女友だちの旦那が立ち食いの手打ちそばを始めたが、

開店の忙しさで余り寝てなくて、いねむりして延しの機械に手を突っ込んでしまい、
大ケガしたことがあった。 そう、あれ以来。

手打ちそばが380円から! 

折角なので静岡気分を味わおうと、 桜海老天もりそば ¥580  ミニしらす丼 ¥250

「それならセットにして、天ぷらだけ付けて…」と安い料金を教えてくれて

なかなか店主、親切なり。







つゆもそこそこしっかりして、いい感じである。

ホントは用宗漁港で生シラス丼と行きたかったが、タタミイワシを買った乾物屋さんで

このところ全然あがっていないと聞いて、やめにした。

そばも、そこそこボリュームがあって、いいんぢゃないか。





最後はちゃんとそば湯でシメた。

なんだか不思議な、ちょんまげのヅラで蕎麦を食わせる店もあるが、

オレは静かに蕎麦を食いたいだけで、チョケたいわけではないので。



  こんな店


立ち食いでも十分心が豊かになった。

駅前でだんごなんぞ買ってると、いやに風が吹いて来たぞ。







雲行き怪しい。 ゴロゴロいってやがんの。

こいつは三十六峰逃げるに如かず。 新幹線に飛び乗った。

その後、葵区に雹が降ったそうな。

再会を誓って、我が家へ。







こっちもいいけれど








やっぱり、こっちだぁね。


もうちょい、しぞ~か

2012-06-20 15:55:20 | Weblog

朝、安宿を出て歩きだしてすぐ。

ややっ、こんな張り紙が・・・。






コンビニで買ってもこの値段では収まらない。

入ってみようっと。





朝ごはんは朝6時半から。どんな客が来るのだろう。

ガラスケースにはおにぎりに、いなりずし、おこわ、柏餅、かんぺう巻き、かき揚げなど。

そして・・・ああ、またしても・・・!






まいったなぁ~、朝からおめぇの顔見るとは思わなかったよ。

でも折角なのでいただきましょうか。

 




これで300円。おにぎりはおかかと梅干しにした。

漬けものが美味。  おにぎりはふんわりと握ってある。





アルマイトの弁当箱に、だし粉。






なんか気分が長閑になる。


厨房で働く主人と大きな声で話す、客のおばちゃん。

方言がよろしいね。





お茶がむちゃくちゃ美味い!

さすがは駿河の国!と感動。 

この店だけか、あるいはどの家庭でもお茶のグレードが高いのか。





この質実剛健な感じ、気に行った。

駅の反対側にある駄菓子屋系のおでんに行きたかったが、

さすがにここで朝からおでんを食うと、もういいやって気になった。

駿府の人って、そんなにおでんが好きなのかなぁ。

もちりん、美味いんだけどね。



まだ、しぞ~か

2012-06-19 13:08:26 | Weblog


静岡へ来たなら、気になっていた 「おでん横丁」へ行ってみないと。

いつか見たグラビアのキッチュな姿が記憶に残っている。





それにしてもどうよ、このにぎにぎしさ。 満艦飾のめでたさよ。

まるで時代劇の終幕近く、きれいどころが手に手に桜の枝を持って出てくる

花柳糸之社中の群舞のような華々しさ。

さすがにまだ明るい中、この中に入って行く気にはなれなんだ。






というわけで、日も落ちてから。

一見、ひと目を気にして入る悪所に見えるが、

ややこしい客引きなど一人もいない、「青葉おでん横丁」。







この桜の造花は、秋になればもみじになるんだよ。

ひと通りちら見して、あてずっぽうで入ったのが「なごや」。

静岡で名古屋とは、これいかに。






年配の女将さんが一人。 どことなく落ちつける。

店内は、よくある地方のスナックのようでもあり。

でも、決定的にちがうのは・・・

これだ!





ズズ~ン!!・・・・・・おでんの鍋がすえてあること。

まぁ、おでん横丁なのだから、当然っちゃあ当然。






塩辛なんぞをたのみ、焼酎なんぞ所望。

気のいいおばちゃんと世話話。

静岡市内にはいっぱい屋台があり、そいつが昭和39年、

東京五輪の開催に合わせ、廃止に追いやられた。

そこで屋台置き場だったこの場所で、軒並み固定の店にしたという。

当初から続く店は、なごやを含めてもう2軒ほどしかない。




しぞーか割り。 抹茶を立てて焼酎で割る。

こいつがなかなかごきげん。





珍しいところで「すじ」を。初めて東京で食った時にはカルチャーギャップだった。

大阪ではすじといえば牛スジ、こっちのはサメの軟骨がコチコチッと歯に当たる。

美味いかどうかというと、まぁ、趣きがある。

全国のおでんを網羅した労作、新井由己氏の「とことんおでん紀行」(凱風社 1999年)によると、

 “ゆでかまぼこの一種で、西日本で好まれる「牛すじ」のような動物の筋肉部のことではない。
 はんぺんの製造過程で除去された(サメの)皮・中落ち・軟骨・筋の多い肉を練りつぶし、混ぜ合せた後に
 成形して茹でたもの。水戸辺りから出始め、西は浜松辺りまで出回っている。主に関東で消費される”


とある。東京の老舗おでん屋では、小判型で一見コロッケのようなスジだった。


そして、忘れずだし粉をしっかりふりかける。
たしかお母さん、だし粉は焼津から始まったと言ってたような。
言い方を変えるとですな、それほどだしの方にお金をかけかくとも、だし粉でうま味をカバーできるという
ことでもあるんぢゃなかろうか。馴れないとちょっと魚臭かったりする。






豚モツも行っとこう。





今回は行けなかったが、駄菓子系というのもある。

つまりは駄菓子屋で子供相手に商うようなものだった。するとおでんだし自体にお金をかけず、
だし粉や、甘辛い味噌をかけたりして食べさせるのも納得できる。

ふと思い出した。 赤塚不二夫作「おそ松くん」のチビ太とは静岡県人だったのではあるまいか。

常に串に刺さったのを持っている。三角(コンニャク)・丸(がんも)・四角(なると)の3種類。

なるとをおでん種にするなんて、関西では見たことがなかった。

 …ナルトってのは、ご本人に聞いたので間違いない。






ところが、静岡にはちゃんとナルトのおでんがある!

しっかりと色がついて、赤いうず潮がよく見えないが。

これぐらいクタクタに煮て味が沁みると、ちょっと美味い。







「なごや」の屋号は、亡くなったご主人が、名古屋で洋食の修業をした方だから。

ふだんは静かに飲みたい方だが、狭い店だしね、隣り合ったひとに

喋りかけられては黙っているわけにもいかんし。






佐賀嬉野の観光大使のようなことをしてる御仁と、某薬品メーカーの営業マン。

まぁ何かの縁という奴である。

ほぉ・・・壁には石塚英彦、「まいう~」のいっしゃんも来た様子。

いたって色気はないけれど、また寄れる店ができて、ほっこり。







  さぁて、とぼとぼと帰りましょうか。



しぞ~か

2012-06-18 03:17:51 | 


茫月茫日 静岡。 陽が落ちたら、さぁ街へ出よう。


    


地元のものがいただけそうな、「味の店 乃だや」へ。





まずは、ビールで喉もとを清めて。





駿河湾由比漁港であがる、旬のサクラエビを刺身で。

ショウガ醤油で・・・プリピチの食感でいいね。

4~5月、こいつを天日干しするために、浜はピンク色に染まる。






静岡おでん。 味噌かけ大根。

しまった・・・でかいか。

よく味が沁みていて、甘いこってりした味噌がかかる。






牛すじ、黒はんべ(はんぺん)、糸こん

少し甘めのだし。ご丁寧に、例外なく串が打ってある。 

黒はんぺんは、思ったほどは黒くない。


静岡おでんの特徴は、「だし粉」が偏重されることにある。

青海苔・いわし・さばの粉末で、富士宮焼きそばにもかかる。

焼津や清水などの良港を有し、いわし・さばなどの下魚(今は獲れなくなり出世なすったが)

がたくさん獲れ、こうした調味料の一部になったと考えられる。

関西では、お好み焼きにかかる程度だから、おもしろきこと。






静岡藤枝の地酒「志太泉」の吟醸酒。

やっぱり地元のお酒でなきゃ。

こざっぱりと軽快に飲める。






ガツは豚の胃袋。 シャクシャクした食感も心地よし。

牛肉食文化圏である関西では、ガツのおでんはなかなか出合えない。





カウンターで隣り合った地元の年配夫婦の会話から、

やっと方言が聴こえてきてホッとする。方言のない地方都市はスカのようなものだ。

「おい、ちょっくら、加代!犬に食わせる飯はあっても、おみゃーに食わせる飯はにゃーだで!」
(細うで繁盛記、富士真奈美)

こう書くと、名古屋のことばとも似ているなぁ。






関東おでんの、自家製げそ団子。

ここ「乃だや」は七間町という、かつて映画館でにぎわった通りにあって、

地元の魚菜と共に、静岡おでんと関東おでんの2種類がある。

惜しむらくは、関東おでんと称するおでんはさっぱりした塩味で、

お多幸や呑喜のごとき、伝統的な醤油味ではないこと。

今が旬、久能産の新しょうがをたのむ。

しょうがの肉巻き揚げというのにもそそられたが、

女子供ぢゃあるまいし、ここは男らしく生のままで行くべきだ!と

そのまんまで。 どこが男らしいかは知らないが。







これが辛いの辛くないのって・・・!

味噌を漬けてポリッと齧っては、酒で洗う。

額の汗を拭き拭き、ひぃ~!辛い。

酒場でのダンディズムも楽ぢゃねぇなぁ~。

これでも一人にはちょっと多い。俺は笹っ葉かじるパンダぢゃねぇんだから。