朝食を終えて、我が家で寛ぎながら『天声人語』など新聞を読む母。
実家で母と一緒に生活し、世話をしている長兄は今年72歳。
お彼岸でお墓参りに実家に行った時のこと。
お茶を飲んで寛ぎながら、話題はいつしか『介護』の話に。
「自分たちも年々歳をとって行くので、体が動ける時に夫婦で旅行などに行きたいと思っても、ままならなくて・・・・・。」
と、一言、長兄から愚痴にも似た言葉が。
「気が付かなくて悪かったね、そういう時は我が家でおばあちゃんの面倒は引き受けるから連絡して」と小生。
そんなやり取りがあってしばらくして長兄から、「行楽シーズンでもあり、紅葉狩りを兼ねて温泉にでも行って来たいので、一晩おばあちゃんを頼むよ」との電話。
一も二もなく引き受ける。
母は今年93歳になった。
足腰がすっかり弱くなり、さすがに肉体的な衰えは隠しようがないものの、頭の方は本人は「物忘れが激しくて、もうダメだよ」と言っているが、我々から見れば、すこぶるしっかりしていて、「認知症」などとは無縁である。
どうも、わが母は「周りの人に迷惑をかけたくない」という過剰なまでの意識があるようで、93歳になった今も自分で洗濯機を回し、洗濯物を自分で干して、自分で取り込み、自分で畳むなど、日常生活では極力兄貴夫婦に迷惑をかけないようにしているらしい。
ある時、「洗濯ぐらい頼んだら」と言うと、「体を動かせば、脳に良いと言うから、体が言うことをきいてくれるうちはやるよ」との返事。
それを聞いて、その気持ち、気力に驚かされたものだが、今回3日間ほど生活して驚かされたことがもう一つ。
それは、新聞を熱心に読むと言うこと。
老眼鏡をかけて、熱心に読んでいる。
小生自身、新聞を読むのが少々億劫になりかけているだけに、
「すごいね、まだ、新聞を読む気力があるんだ」
と言うと、
「この頃は、目が弱って来たので以前のように隅から隅までとは行かないけど、大きな活字は見てるんだ。特に『天声人語』は面白いから、楽しみに毎日欠かさず見ているよ」と。
93歳になっても、未だ欠かさず『天声人語』を読んでいるとは!
しかも、面白いとは!
母が「ボケ」ない秘訣を垣間見たように思った。
今回の写真は主役シリーズは、我が家で寛ぎながら新聞を読む、93歳のわが母が主役である。
天声人語=朝日新聞の朝刊に長期連載中の1面コラムの題名。
ジャーナリストの確かな目で時代の流れを見続ける同新聞の看板コラム