折々の記

日常生活の中でのさりげない出来事、情景などを写真と五・七・五ないしは五・七・五・七・七で綴るブログ。

前代未聞

2006-07-24 | 音楽
親友H君のこと その2

その日、大学時代からの無二の親友H君から、かかってきた電話の衝撃は、今でも忘れることができない。

「Hです。今度のOB会のゴルフ出られなくなった。」

電話口から、ただ事でない気配が伝わってきた。

「どうした?、何があった。」
「・・・、息子が亡くなった。」

「何故?どうして。」
「くも膜下出血で、逝ってしまった。」

受話器を握り締めたまま、絶句してしまった。

「息子は、ゴルフを始めたばかりで、近いうち一緒に回ることになっていたんだ・・・。」

何を、どう言ったらいいのか、言葉が思いつかない。

「ということで、今回は、出られない。」そう言って、電話は切れた。
何と言うことだろう、彼は、その少し前に、実の弟を亡くしているのだ。

出勤しても、仕事が手につかず、弔電の文面を考えていると、次々に言葉が溢れ出てきて、最早、弔電と呼べる分量をはるかに超えるものとなった。そして、あろうことか、最後に、「頑張れ、H,負けるな、H」としたためたのである。

しかし、その文面の一行半句と言えど、削る気持ちにはどうしてもなれずに、原案をそのまま、自ら別室で、打電した。(さすがに、女子事務員さんには頼めなかった。)

弔電としては、恐らく「前代未聞」なものであったろう。

数日後、弔問に伺った時、彼がご両親、奥様に「あの、長い弔電を打ってくれたK君」と紹介してくれたことでも、異色の弔電であったことが、うかがえる。

その時、一緒に霊前に供えさせてもらったのが、映画「大河の一滴」のオリジナル・サウンドトラックのCDである。

セルゲイ・ナカリャコスの心を揺するトランペットの調べが、少しでも親友の「癒し」になれば、との思いを込めて。

その年の暮れ、喪中を知らせるはがきに、「大河の一滴、ありがとう。」との一行が書き添えられていた。


<今日の1枚>

大河の一滴

音楽: 加古 隆

トランペット:セルゲイ・ナカリャコフ

ピアノ:加古 隆


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