折々の記

日常生活の中でのさりげない出来事、情景などを写真と五・七・五ないしは五・七・五・七・七で綴るブログ。

『忘我』の境地、『陶酔』の世界へと誘われる~諏訪内晶子ヴァイオリンコンサート

2008-02-13 | 音楽
昨夜(2月12日)クラシックのコンサートに行ってきた。
前回が06年12月であったから、実に久しぶりのコンサートである。

コンサート会場は『サントリーホール』である。

今回のコンサートには、三つの楽しみがあった。

その一つは、コンサートに一緒に行くのが、弟であること。
弟とはゴルフには良く行くが、クラシックのコンサートは始めてである。

一時期、音楽から遠ざかっていた弟が一緒に行かない、と誘ってくれたのが何より嬉しかった。

第二の楽しみは、コンサート会場がサントリーホールであること。
サントリーホールには、ぜひ一度行って見たいと念願していたのだが、これまでその機会がなかった。
その念願が叶う。

第三の楽しみは、諏訪内さんのヴァイオリンを聴けるということ、しかも、小生が大好きなモーツアルトのヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲変ホ長調K364を、である。

そして、コンサート当日。

先ず、びっくりしたことが二つ。

その一つは、初めて目にしたサントリーホールの偉容。

そして二つ目は、演奏会場に皇太子殿下がお見えになったこと。

開演5分前、会場から盛大な拍手。
そこには、にこやかに手を振って着席する殿下の姿があった。(位置的には、われわれが座った場所のほぼ真向かい)

全く予想だにしていなかったので、これには本当に驚いた。

いよいよ、開演。



諏訪内さんが競演したユーリー・バシュメット&モスクワ・ソロイスツ合奏団
(当日のプログラムから)


諏訪内さんが登場したのは二曲目。

彼女が現れると、まるで大輪の花が咲いたように会場が華やいだ。

その立ち姿はあくまでもエレガントで、白い『妖精』を思わせる。

そして、いよいよモーツアルトのヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲変ホ長調K364の演奏が始まる。

この曲は、数ある好きなモーツアルトの曲の中でも5本の指に入るほど小生が好きな曲である。特に、その第二楽章が。

そして、演奏はまさにその大好きな第二楽章に入っていく。

息を詰めて聴き入る客席。

諏訪内さんのヴァイオリンとユーリー・パシュメットさんのビオラが織りなす、涙がにじむような哀切極まりない調べが、し~んと静まり返った空間に紡がれていく。

そして最大の聴き所、カデンツアへ。

ヴァイオリンとヴィオラの音が次々に絡み合って、ため息の出るような美しい音の世界が繰り広げられていく。

観客は『忘我の境地』、『陶酔の世界』へと誘われて行く。
思わず、鳥肌が立った。

演奏が終わった。

サントリーホールを埋め尽くした客席からの熱狂的な拍手の嵐がしばし鳴り止まない。

そうした観客の拍手に応える諏訪内さん、そして、殿下に向かって軽く会釈を送って舞台の袖に向かう彼女の姿には『女王』の貫禄が溢れているように見えた。

休憩を挟んで後半のプログラムは、モーツアルトのヴァイオリン協奏曲第2番。

諏訪内さんのヴァイオリンは、美しく、のびやかにそして豊かな音色でモーツアルトの世界を再現していく。

カデンツアでのヴァイオリンの音色が何とも艶やかで、その絢爛たる演奏テクニックに聴きほれてしまう。

『クラシックのコンサートは初めてだったけど、いや~、よかったね。』と弟。
『コンチェルトは、カデンツアがあるからいいよね、今日の彼女のカデンツア良かったね、聴きほれちゃったよ』と興奮冷めやらぬ体である。

『次回は、フルオーケストラでぜひベートヴェンの交響曲かコンチェルトを聴きたいね』と弟。

『そうだね、じゃあ、年末に第9を聴きに来ようか』と小生。

『うん、そうしよう。楽しみだね』と弟。

大いなる感動と満足を味わった愉悦の一時であった。

コンサートに誘ってくれた弟に感謝である。


【当日のプログラム】

J・Sバッハ:ブランデンブルク協奏曲第3番ト長調BMV1048

モーツアルト:ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲変ホ長調K364

モーツアルト:ヴァイオリン協奏曲第2番ニ長調K211

ブルッフ:コル・ニドライ(ヴィオラと弦楽合奏版)

モーツアルト:セレナード第13番ト長調【アイネ・クライネ・ナハトムジーク】

ヴァイオリン独奏:諏訪内晶子  指揮・ヴィオラ:ユーリー・バシュメット
演奏:ユーリー・バシュメット&モスクワ・ソロイスツ合奏団