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折々の記

日常生活の中でのさりげない出来事、情景などを写真と五・七・五ないしは五・七・五・七・七で綴るブログ。

『OK、ベリー・グッドよ』~今は亡き『カリスマ』経営者を偲んで

2007-12-20 | 仕事・職場
今日12月20日は、小生の37年間の会社生活の中で、入社以来15年間にわたりお仕えし、偉大な経営者として、また、滋味溢れる一人の人間として、心から尊敬し、お慕いしてやまなかった創業者高山萬司さんの命日である。

お亡くなりになられたのが昭和62年だったので、20年の歳月が過ぎたことになる。


昭和31年に46歳で脱サラして、Sシヤッター工業(現Sホールディングス)を一流企業に育て上げた立志伝中の人である。

そして、多くの従業員から神様のように敬われ、親のように慕われた人である。

15年間、お側近くにお仕えして受けた薫陶は、いまだに小生にとって大きな無形の『財産』である。


その偉大な経営者との間に小生にとって忘れ得ぬ一つの思い出がある。


それは入社して5年目、28歳の時のことである。

昭和46年8月15日に突如、全世界を震撼させた『ドル・ショック』が当社の前途にも容易ならざる状況をもたらそうとしている時であった。

ある日のこと。

『Kさん、ちょっと』(社長は従業員をみんな「さん」付けで呼んでいた。)
と社長に呼ばれ、社長室に入るなり

『Kさん、君に一つ宿題だ』

と、いきなり言われた。

『10月の株主総会で役員が新しく選任されるのは君も知ってのとおりだが、その後の取締役会で【役員の誓い】をみんなで申し合わせたいと考えている。その草稿を君に作ってもらいたい』

『私のような若輩者が』と言いかける小生の言葉をさえぎって社長が、

『いいかね、Kさん。今度のドル・ショックで時代は間違いなくこれから、大きく動いていく。世の中が様変わりして行く。この流れに対抗していくにはもう、われわれのような古くて、頭の硬い連中ではだめだ。君たちのような若くて、恐れを知らない、頭の柔らかな人の発想が必要なんだ』

『あんまり大仰に考えないで、日頃、君たち若い人が考えていることをまとめてくれればいいんだ』

『何を書いてもいいが、頭の硬い年寄りみたいなものだけは勘弁だ。条件はその一つだけだ』

そこまで言われては、引き受けざるを得ない。

『わかりました。やらせていただきます』

『ああ、それから、できた原稿は総務部長に見せる必要はないから。あの人は、古い、頭の硬い人の代表格だから、アッハッハ。』と社長は小生の方を見て、にやっとウインクして見せた。


自席に戻り、余りの事の重大さに、しばし途方にくれる。
しかし、やらざるをえない、と臍を固めて、早速作業に取りかかる。

せっかちな社長の気性からすれば、迅速な対応が必要だ。時間との勝負である。
全ての仕事を取りやめて、この作業に没頭する。勿論、やりがいを全身で感じながら。

内容的には、わかりやすい言葉で簡潔明瞭にを念頭に、先ずは、手当たり次第に資料を集め、読み込んでいくうちに全体の輪郭がおぼろげながら見えてきた。


そして、3日後の社長室。

社長は無言で小生の原稿を読んでいる。

身も縮む思いで控える小生。

『オーケー。Kさん、ベリーグッドよ』

こういう、くだけた、ざっくばらんの物言いが出る時は、社長がすこぶる上機嫌の時である。

それだけに、社長が発した短いその一言は、小生にとっては何ものにも代えがたい最高のねぎらいであった。(勿論、全くの無修正だったのも意外であり、とてもうれしいことではあったが・・・・・。)


数日後の取締役会。


議題の審議が進んで、いよいよ『役員の誓い』の議題になり、社長が提案趣旨を説明する。

小生は、事務局としてその場に控えていた。

すると社長から、事務局のKさん、この『役員の誓い』をみなさんに朗読して、と指示が出た。

予想外のことで緊張してしまい、足が震えてしまったのを今でも良く覚えている。


あの時書いた小生の一文は、取締役会議事録の添付資料として、他の取締役会議事録と一緒に、書庫の中に今も保存されている。



『オーケー、Kさん。ベリーグッドよ』

とひょうきんな仕草で、社長なりのねぎらいの言葉をかけて下さったあの時の一言は、今も小生にとって終生忘れられない思い出である。


我が家の新築祝いに頂戴した置時計
我が家の『宝物』である

ドキュメント・『ザ・株主総会』(番外編)

2006-11-03 | 仕事・職場
番外編


エピソード


おきゅう


強行採決にマジ切れし、役員席を跳び越して議長席に突進した総会屋「K」は、その後所轄のS警察署から呼び出しをくらい、こってりと「おきゅう」をすえられた上、「今後、あのような行為はいたしません」の一札を取られて釈放されたとのことであった。


証文の出し遅れ


そのS警察署から顔見知りの刑事が来社、先般の株主総会の状況から判断すれば、十分に立件が可能なので、「被害届け」を是非出して欲しいとのこと。
警察としては、点数を稼げる絶好の機会だけに足しげく出張ってくる。
最終的に社長の意向を確認すると、社長曰く「当日、総会場で十分に逮捕できたはず、今さら立件など『証文の出し遅れ』と全く取り合わない。
そこで、S警察署の刑事には、丁重にお断りの口上を述べてお引取り頂いた。


朝練

総会で『質疑打ち切り』の動議を提出すると言う重要な役割を仰せつかった社員株主の「N」さんは、総会日が近づくと、毎朝車で近くの堤防まで行き、大きな声で「議長!!動議・・」のセリフを声が涸れるほど何回も繰り返し練習し、本番に備えたと言う。
あの、のどがからからになるような緊張感の中、見事に大役を果たした「N」さん本当に大変でしたね。「朝練」の成果が見事に発揮されました。


正体

株主総会の冒頭のハプニングの原因を作った件(くだん)の社員株主は、地方のH支店長であることが判明。
この支店長は、事務局サイドが準備した40人の社員株主の中には含まれていない、言わばノー・マークの社員株主であった。従って、同支店長は最終リハーサルにも出ておらず、「言動には十分注意し、総会屋の挑発に乗らぬこと」という留意事項も勿論知らなかったため、目の前で起こった出来事に「すわ、大変」とばかり反応してしまったらしい。
総会後姿を見せた支店長は、さすがにことの重大性に気づいたようで、「一度、株主総会に出て見たかっただけなんです」とガックリ肩を落としていた。
2時間余も小部屋に隠れていた「かくれんぼ」の心境は、いかばかりであったか。
でも、「鬼」に見つけられなくて本当に良かった?


武士の情け

総会屋の「K」に詰め寄られ、片手にマイク、片手に台本を持って議事を進めていた議長にさらなるピンチが。
と言うのは、議事の進行に欠くことのできない台本(議事進行録)にあってはならないミスがあったのである。「帳合いミス」である。このため、一瞬、社長は読むべき箇所がわからなくなり、読む箇所を探すのに手間取ってしまった。
「『K』が突進してきたのにも驚いたが、台本の綴じ違いにはもっとびっくりした。どうしようかと思ったよ」と社長。
弁解の余地のない、大失態である。しかし、社長はこのミスを誰にも漏らさなかった。
小生は、「武士の情け」と思って、心から社長に感謝した。


独白


その1
小生が現役でまだ総会担当をしている頃、高校時代のクラス会があり、恩師である「K」先生が出席されていた。
先生に、ジャーナリストを目指していたが、夢かなわず、現実にはこんな仕事をしていますと申し上げたら、先生が「よりによって、君がねえ!ジャーナリストならわかるけど、総会担当とはねえ、君のイメージから一番遠い、一番似つかわしくない世界のように思えるけどねえ」「それは大変だ、さぞかしストレスもたまるだろう、心のケアーに気をつけないとね」と言っていただいた。この恩師の言葉に本当に救われ、涙が出るほど嬉しかったことを今でも忘れられない。


その2
ストレス、心のケアーと言えば、今でこそ見なくなったが、まだ現役の頃は、よく株主総会の夢を見た。その夢は、決まって総会当日になって肝心な台本が出来ていないことに気づき、必死になって書いているうちに開会時刻が迫り、パニックになって目が覚めるというものである。
これなども、一種の「トラウマ」と言えるのだろう。


その3
時の流れと共に風化していくさまざまな記憶の中で、とどめておきたい思い出がある。
本ブログもその種の思い出を中心に書いている。
ドキュメント・「ザ・株主総会」は、小生の現役時代、「不本意」であり、「不条理」であり、そして、自分に似つかわしくないという思いを絶えず抱きながらも、仕事ゆえに常に一生懸命に取り組んできた日々を回顧して綴ったものである。
20数年も経つのに、未だに記憶に鮮明に残っていると言うことは、この仕事がいかに「特異」なものであるかの証左なのかもしれない。

ドキュメント・『ザ・株主総会』(最終章)

2006-10-31 | 仕事・職場
第6回  『強行採決』に総会屋「マジ切れ」、議長席に突進、「あわや」の場面も


株主との一問一答が始まった。

先ずは、関西から来た「T」グループの代表が一番手で質問に立つ。

「先ほど暴力を振るった株主は、社員株主だろう。その氏名と、事が起こった経緯について説明しろ」と迫る。

「あの株主さんには、退場を命じました。それで、もうこの問題は決着しております」と議長。

「退場させた株主を、ここに呼んで来い。」
「株主さんは、もう帰られました。おられません。」
「株主の名前ぐらいは、わかるだろう。公表しろ。」
「株主さんの出席番号がわかりませんので、調べようがありません。」
「・・・・・・!!!」


S課長が、社員株主を退避させた機敏な措置が、いかに的確かつ有効な対応であったかが、ここに来て歴然としてきた。

後に判明したことだが、退場させられた社員株主は他人名義それも某法人の議決権行使書で入場していたとのことで、総会場に止まっていて、このことが判明したら、それこそ取り返しの付かない大事に発展する所であった。

次に質問に立った総会屋も暴力を振るった株主を糾明しなければ、審議に応じないと迫ったが、議長は「お帰りになって、最早いらっしゃらないのだから、それ以上どうしようもない」と突っぱねて、この問題に深入りさせない。


『強行採決』に激昂した総会屋「K」は、役員席を飛び越え、議長席に突進し、議長の議事を妨害しようとした


3番目に質問したのは、某社のロングラン総会を始め各社の総会で過激な発言を繰り返し、要注意マークがついている「M」グループのリーダー「M」である。

メモ用紙を片手に、恫喝するような大きな声で質問を繰り出してくる。
それに対し、議長は「その質問は、一括回答で既にお答えしていますので、重複のお答えはご容赦願います」、「そのご質問は、議題に直接関係がないので、お答えはご容赦ください」等々冷静かつ毅然と答える。

その答弁に業を煮やした「M」は、席を離れて、つかつかと議長席の方に近づき、いきなり手に持っていたメモ用紙を天井めがけて放り投げた。

「M」一流のパフォーマンスであるが、議長はひるまず、すかさす「粗暴な行動は、止めていただきたい」と注意を促す。

その後も、次々と総会屋が示し合わせたように質問に立つが、議長はある時は、のらりくらりと質問をはぐらかし、また、ある時は毅然と質問をはねつけるなど、総会屋の攻勢を耐え忍んでいる。

緊迫した状況が続く中、時間が経過していく。
その時、会場の外に配置した係員から、メモが事務局に入る。

「総会屋が、すぐにこっちに来るよう仲間に電話している」と書かれていた。

一方、議場では、総会屋が「おい、事務局、そろそろお昼だ、昼食の準備をして置けよ」と大きなヤジを飛ばし始めた。

状況は、煮詰まりつつある。顧問弁護士と相談、そろそろ質疑打ち切り、強行突破のタイミングであることを確認、議長にその旨メモを入れる。同時に、株主席右側の最前列に座っている動議を提出することになっている社員株主に合図を送る。

「議長!!、株主番号××番の○○です。質疑打ち切りの動議を提出します。議案の審議に入ってください」

抜き打ちの質疑打ち切り動議に総会屋が激昂し、動議を提出した株主めがけて殺到する。それを、近くにいる社員株主が身を挺して、ガードする。

怒号が渦巻く中、議長は、すかさず「ただ今、株主さんから質疑を打ち切り、議案の審議に入るよう動議が提出されましたが、いかがでしょうか」と議場に図る。

「賛成、異議なし」

の大合唱が議場に響き渡る。

「賛成多数ですので、本動議は可決されました。それでは、ただ今から議案の審議に入ります」

と宣言して、議長は議事を進めていく。あとは、何があろうと最後まで一気に突っ走るだけである。

この強行手段に収まらない総会屋は、一斉に席を立って会場の最前列に飛び出し、口々に議長のとった措置を非難する。

そして、「まだ質問があるんだよ」、「俺にも質問させろよ」とわめき声を上げる。

しかし、そんな騒ぎの中、議長は粛々と議事を進め、議案は次々と原案通り承認可決されていく。

遂に、マジ切れた「S」グループの「K」が、ひな壇の役員席を乗り越えて、議長席に突進すると言う暴挙に出た。

「K」は議長席の前に詰め寄り、議長の前に置かれているマイクを奪おうと身を乗り出し、議長とマイクの奪い合いになった。小生は、「K」の腕をつかんで、「止めなさい」と大きな声で制止し、にらみ合った。「K」は顔面蒼白で、目が据わっている。それは、まさに「無頼漢」そのものの顔であった。「下がれ、下郎」と怒鳴りつけてやりたい衝動をかろうじて理性で抑え、「やめろ」と再度、静止した。

何とか、マイクを確保した議長は、「K」から身を避けるべく、演壇の一番後ろまで下がって、片手にマイクをもう一方の手に台本を持って議事を進めることを余儀なくされた。

この段階になって、ようやく臨場に来ていた所轄の刑事たちが動き出し、先ず、「K」を議長席から株主席へ連れ戻した。他の総会屋も、刑事たちに促されて席に着いた。

それからは、一気呵成、数分で全ての議案を可決し、総会開始から2時間30分を要した株主総会は、12時30分に終った。

ドキュメント・『ザ・株主総会』⑤

2006-10-28 | 仕事・職場
第5回  議長、正常化に向けて懸命な努力


思わぬハプニングに瞬時呆然の体であった議長だが、すぐに立ち直って事務局を一瞥する。

顧問弁護士が、「当事者二人を、即、退場させてください」と小声で伝える。

議長は、即刻、その場で二人の株主の退場を命じると共に、席を離れて議長席周辺を歩き回り、気勢を上げている総会屋に対し、席に戻るよう再三要請を繰り返す。

一方、株主席においても、S 課長がこの状況に機敏に対応し、総会屋の手を引っ張って、倒してしまった社員株主を議長の「退場命令」が出ると、間髪を入れずに会場から連れ出し、会社の小部屋の中に「退避」させた。

総会屋連中も、この社員株主の身柄を確保しておかなければと、すぐに後を追ったが、一瞬の差で見失い、飛び出していった総会屋は、空しく会場に戻ってきた。

総会の正常化には、先ず何をおいても事態の沈静化が必要であり、議長は株主に席に戻るよう懸命な努力を続ける。

一方の総会屋側としては、いかに混乱状態を長引かせ、議事を混乱させるかが狙いであるから、議長の再三にわたる要請を完全に無視して、議長席の前で不規則発言を繰り返している。

ここは、まさにこれからどちらが指導権を握るかのせめぎ合いである。

総会屋は、盛んに今起こった暴力行為について質問させろと議長に迫っているが、議長はここで総会屋の質問に応じれば、彼らのペースにはまり、混乱に拍車がかかり好ましくないと判断し、少々強引であったが、

「先ほどの二人の株主さんについては、退場を命じました。本件を含め、株主様からのご質問は、後ほど質問の受付時間を設けておりますので、その時に十分におうかがいし、また、ご説明申し上げますので、どうか議事の進行にご協力をお願いします」

と述べて、議事を再開した。

総会屋側は、猛反発したものの、議長は毅然として、株主から事前に文書で提出されている質問状に対する「一括回答」まで、一気に議事を進める。

「一括回答」とは、株主から事前に文書で提出された質問事項を会社側でまとめた上で、その回答を総会当日、株主の質問を受ける前に回答し、当日の質問との重複を防止しよう考え出された、総会屋対策の一方式のことを言う。

今回株主からの質問は約200問にも及ぶが、これを会社側で整理し、作成した回答を担当の常務が読み上げていく。

全部読み終わるまでには、20分以上を要するので、この時間が事態の沈静化と態勢を立て直す余裕をもたらしてくれた。

この間も、総会屋からは「総会は無効なんだから、そんなもの読んだって無駄だよ!」等々議事を牽制するヤジが飛び交うものの、担当常務はひたすら一括回答の文言を読み上げることに専念する。

そして、約30分、一括回答が終った。
これから、株主との一問一答、正念場である。

ドキュメント・『ザ・株主総会』④

2006-10-25 | 仕事・職場
第4回 株主総会開会  いきなり「ハプニング」、波乱の幕開け


開会時刻3分前、社長を始め全役員、監査役が入場し、それぞれ所定の場所に着席する。
場内は、水を打ったように静まり返っている。
緊張がひしひしと伝わってくる。


<株主総会会場 ひな壇が役員席、正面が議長席、議長席の右に事務局席>


定刻、小生おもむろに立ち上がる。緊張のため、唇は乾き、のどはカラカラである。

「大変お待たせいたしました。定刻となりましたので、始めさせて頂きます。社長は議長席へお願いします。」とマイクの力を借りて、どうにか開始の口上を述べた。

社長が議長席に立ち、おもむろに水差しからコップに水を注ぎ、「ぐびっ」と一口飲む。社長も緊張しているに違いない。

手元に広げた台本に目をやり、本日出席の株主の人数とその株式数、議事進行上の注意事項等を読み上げ、当期の会社の活動状況を示す「営業の概況」の説明に入ると、場内がにわかに騒がしくなってきた。

総会屋がヤジ攻勢を強め、それを牽制しようとする社員株主との間で激しい応酬があり、険悪な雰囲気が漂い出している。

すかさず顧問弁護士から小生にメモが入る。「議長、『静粛に』と注意されたし」
そのメモを議長に届けて、事務局席に戻ると、会場の総会屋が、「そこの事務局の『ギョロ目』(小生のこと)、チョロチョロするんじゃない」と大きなヤジで事務局の動きを牽制しようとする。

『静粛に願います』とすかさず議長が総会屋のヤジを遮る。先ほどの、メモの効果である。

開会から約15分、「営業の概況」の説明が終わり、監査役の監査報告が始まろうとした矢先に、そのハプニングが起こった。

70歳過ぎの年配の総会屋で自己流の会計論を延々と開陳し、総会を故意に長引かせることで会社側の顰蹙を買っているIと言う株主がいきなり立ち上がって、監査役の所に行き、一言二言何か言った。

それを近くで見ていた社員株主が、I株主を席に連れ戻そうと手を引っ張ったところ、何せ体力の無い老人のこと、体のバランスを崩して、その場に倒れ込んでしまった。

それを見て、待ってましたとばかりに、何人もの総会屋が一斉に立ち上がって議長席の前に詰め寄り、口々に「暴力総会だ」、「この総会は無効だ」、「休憩だ」とがなり立て、「蜂の巣を突っついた」ような騒ぎとなる。

それまで、みんなで声を出して議長をサポートしていた社員株主も思わぬ事態の発生と、それをきっかけに、一気に攻勢を仕掛ける総会屋の勢いに押されて、株主席で沈黙してしまう。

かくして、株主総会は、はなから波乱の幕開けとなり、早くものっぴきならない場面を迎えた。