ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『告白』

2010-05-09 19:02:36 | 新作映画
----ニャに。この変なハート?
「超話題の映画『告白』の試写でいただいたもの。
あまりに緊張感がスゴイので、これを握って…ってことらしい。
実はこの映画、
ずいぶん前に、とある仕事の関係で
その内容を調べてみたことがあったんだけど、
どこにもストーリーが紹介されていない。
ほんの導入部だけ。
そういうこともあって、ぼくは内容をすっかり勘違い」

----どういう勘違いをしていたの?
さっきホームページ覗いてみたけど、
これって、
生徒に娘を殺された先生がホームルームで犯人を告発する、
そういう内容じゃニャいの?
「それはそのとおり。
ただ、ぼくは自分勝手に、
主人公の森口先生が生徒と一緒に犯人探しをしていくミステリーかと…。
ところが始まってすぐに映画は森口先生の口を借りて、
犯人があるふたりの少年であることを明らかにしてしまう。
で、その『告白』が終わったら、
次は新任の教師ウェルテル(岡田将也 )の告白に…。
一瞬、これは連続したオムニバスで
いろんな衝撃の告白を見せていく映画かと…またまた勘違い。
それにしては、松たか子は早々と消えちゃうし、
この演技くらいで、そんなに評価されるのってどうなの?……って」

----へぇ~っ。犯人、そんなに早く分かっちゃうんだ。
だったら、警察に捕まって終わりじゃないの。
「いや。
すでに彼女の娘の死は事故として処理されている。
そして、そこにもうひとつの問題が…。
彼らふたりの少年は13歳。
もし、彼らが犯人だということが公になったとしても、
刑法41条・少年法によって守られている。
そこで、彼女は自ら制裁を下すべく、ある行動に出る」

----それって三池崇史監督『太陽の傷』にもあったよね。
「うん。でも、
あちらの主人公は男(主演は哀川翔 )。
しかしこちらは女性教師。
非力な分、頭脳を使って復讐するんだ。
でもその方法は、話さない方がいいんだろうな」

----かもね。
この映画、監督は 『パコと魔法の絵本』などの中島哲也 だよね。
これまで映像のギミックが目を楽しませてくれたけど…。
「確かに、今回もミュージカルっぽいシーンを取り入れたりはしている。
で、最初の見どころは冒頭、森口先生の告白部分。
生徒たちは誰も彼女の話に耳を傾けちゃあいない。
でも、実はまったく無視しているというわけでもなく、
ちょっとしたキーワードに敏感に反応。
互いに『犯人が分かった』とメールしあったり、
先生の言葉を逆手に取って授業をエスケープしたり。
ぼくらの時代とは全く違う、いわば超人類
そういう自分には理解不能なざわざわした10代の姿を
ぼくが最初にスクリーンで観たのは庵野秀明監督『ラブ&ポップ』
でもその後、ほんとうにエスカレートしていったんだなと…。
この実態が事実だったら、ちょっと空恐ろしいな」

----少年少女の不気味さは、
『嫌われ松子の一生』でも描かれていたよね。
「そうだね。
この映画は、あの延長にある気もする。
ここに描かれる13歳の少年少女は、理論立てて自分や他人を分析。
ある部分では大人顔負け。
でも、その実は、それぞれにコンプレックスを抱えていて、
どこかに助けや救いを求めている乳離れできていない子供。
ほんとうはまだまだ未熟なのに、
あたかも自分は超人であるかのように周りを見下して動く。
ここが身震いするほど怖い」

----また、話がテーマの方に行っちゃう。
これって仕方がないのかニャあ。
「内容が内容だからね。
でも、やはりこれは中島監督ならではの映画だと思うよ。
劇中、『大切なものが消える音、ぱちん』という印象に残るセリフがある。
そこにシャボン玉を持ってくるセンスなんかにしてもそう。
もしかして原作にもあるのかもしれないけど…。
で、やはり最後に言わなくてはならないのは松たか子の演技。
ラストで見せる、悲しみと怒りが達成感へと昇華する複雑な笑み
演技に厳しいことには定評のある中島監督も
これには大満足だったろうことは想像に難くないね」


         (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「ほんとうに辛い映画なのニャ」悲しい


※こういう映画が作られる時代というのが悲しい度


コトリ・ロゴ今日は母の日でした。ありがとうございました。

噂のtwitterを始めてみました。
ツイッター
「ラムの大通り」のツイッター



blogram投票ボタン

ranking.gif人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー


最新の画像もっと見る

14 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Ageha)
2010-05-10 18:46:11
読後わかったことですがホントは第1章終業式の告白のみの短編だったそうです。そう言われてみれば、その後の章は視点を変えて説明する裏事情ともとれますが
後付けのオチでそこまでしちゃうのかとビックリ。

コレは去年の本屋大賞で映画化に合わせて速攻文庫化。重い、ヒドい、最悪の気分と口揃えていうのに、サクサク読めて止まらない不思議な原作でした。
返信する
■Agehaさん (えい)
2010-05-15 11:52:01
こんにちは。
あらら、ずいぶん、お返事が遅くなっていますね。
ごめんなさい。
なるほど「最初の告白」のみ。
ぼくも実はそう思っていたので、
映画を観たときには、その後、
仕切り直しって感じでした。

原作、オモシロそうですね。
読んでみようっと。
返信する
こんばんは★ (dai)
2010-06-06 21:10:37
>悲しみと怒りが達成感へと昇華する複雑な笑み

この笑みは凄かったですね。もう松たか子ならではの笑みのように感じてしまいました。
返信する
凄い映画 (にゃむばなな)
2010-06-07 17:46:21
確かにいろんな人の告白によるオムニバス映画のはずなのに、ストーリーは一本大きな幹が通っている感じのする作品でしたね。

いやはや凄い映画でした。
それしか言えないくらいでしたよ。
返信する
■daiさん (えい)
2010-06-07 22:53:29
あのラストの表情はスゴイ。
演出だけでもできないし、
演技力だけでもできない。
幸せな融合だと思います。
返信する
■にゃむばななさん (えい)
2010-06-07 23:07:02
この映画を観終わったとき、
最初につぶやいた言葉を思い出しました。
この監督、ほかの監督から一歩抜きんでている。
いやあ、おっしゃるとおりスゴかったです。
返信する
こんばんは (ノラネコ)
2010-06-10 23:04:36
こりゃ凄い映画でした。
確かに何かを握り締めていたくなりますね。
中島哲也のテクニックを堪能できる傑作でした。
この人才能がありすぎるのか、いつもは詰め込み過ぎになりがちですが、今回は上手く抑制していたと思います。
原作も読みましたけど、映画の方が良い意味であざとく、インパクトはありました。
返信する
こんにちは (なな)
2010-06-13 14:06:41
後味は不思議と爽快でした。
好き嫌いは分かれてもまぎれもなく傑作ですね。

>悲しみと怒りが達成感へと昇華する複雑な笑み。
そうですね,松さんの演技は最高でした。
冒頭静かに始まって
終盤に行くにつれて凄みを増している感じで。
彼女に感情移入はできないのですが
それでもラストの彼女の表情や口調には
カタルシスさえ感じてしまいました。
返信する
■ノラネコさん (えい)
2010-06-13 22:05:27
この映画を観て、
中島監督は、同時代の他の監督より一歩先に行っている、
そんな気がしました。
溢れんばかりの才能問うのはこういうのを言うのでしょうか?
脂がのりきっている時だけに、
次回もほんとうに楽しみです。
こういう風に、次回も楽しみと言える監督、
少なくなったなあ。
返信する
■ななさん (えい)
2010-06-13 22:39:00
こんにちは。
最近、いつも思うのが
「ラストシーンが忘れられない映画は、
(自分にとって)いい映画」。
これとは肌合いが違いますが、
『川の底からこんにちは』もそう。
機会があったらぜひ。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。