「森田芳光監督が亡くなって、
はや一週間が経とうとしている。
最初にこの訃報に接したのはツイッターだった。
そのツイートをした本人も疑問符の形で書いていたため、
すぐさまウイキペディアにて確認。
だが、にわかには信じられない。
それはそうだろう?
つい最近、『僕達急行 A列車で行こう』という
いまの時代だからこそ嬉しくなる
素敵なプレゼントをもらったばかりだから。
この映画は、最近の日本映画とはベクトルがまったく違っていた。
鉄道マニア、いわゆる“テツ”のふたりの日々を追った映画。
片や、一流会社勤めで九州に転勤命令が下った小町(松山ケンイチ)、
片や、資金繰りに苦労している鉄工所2代目の小玉(瑛太)。
そのふたりが、ちょっとした偶然から
それまで難攻不落とされていた社長(ピエール瀧)と知り合い、
契約を結ぶことに成功するというもの。
いわゆる“芸は身を助く”で、
まあ、『釣りバカ日誌』と似ていなくもない。
いわゆる使い古された設定。
ところが、これがとても心地よい。
というのも、この映画にはピュアな善人しか登場しないのだ。
いまの言葉で言えば、観終わって“ほっこり”。
やはり映画は、それを観る人を幸せにしてこそのものだなと、嬉しくなった。
ゆったり流れるユーモアは森田芳光の初期代表作『ライブイン茅ケ崎』に通底する。
そう、ぼくが、森田芳光の映画に最初に出会ったのは
この『ライブイン茅ケ崎』だった。
そこに流れる、ゆったりとした時間、
何が起こるでもなく、茅ケ崎に暮らす若者たちの日常が描かれる。
『ねぇ、塩ジャケと普通のシャとどっちが好き?』。
いや、『生ジャケと焼いたシャケ』だったか…。
ともあれ、
この映画は、当時の問題意識を全面に出した
他の自主映画とは明らかに位相を異にしていた。
(実は、この映画、『ぴあ自主製作映画展1978』で上映。
瑛社を担当していたぼくは、チョンボを犯すワケだけど、
まあ、それはまた別のお話)。
ところで、この映画の前に、彼はいろんな電車が出てくるドキュメンタリー
『水蒸気急行』を作っている。
もしかして、今回の映画はそれを意識しての、
“初心に帰る”もあったのかもしれない。
というのも、この映画の作りは
会話の間からセリフ回し、撮影、ギャグ…。全てが昭和の映画のノリ。
さすがに、伊東ゆかりの『小指の思い出』ネタは、
やりすぎの感がないでもないけど…。
だが、それでも言えるのは、
こんな芸当は、
一作ごとに作風を変えていく森田芳光監督だからこそ…。
なにせ『39 刑法第三十九条』のすぐ後に『黒い家』。
彼は、映画そのものを好きで、
その間口を広げようとした希有な作家。
ある意味、どこを切り取ってもその作家の映画と分かる
園子温監督とは対極にあったと言えよう。
日本映画界は、ほんとうに惜しい人材を失いました。
心よりご冥福をお祈りいたします」
(byえい)
※今夜はしんみりだ度
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※画像はアメリカ・オフィシャル(壁紙ダウンロードサイト)より。
はや一週間が経とうとしている。
最初にこの訃報に接したのはツイッターだった。
そのツイートをした本人も疑問符の形で書いていたため、
すぐさまウイキペディアにて確認。
だが、にわかには信じられない。
それはそうだろう?
つい最近、『僕達急行 A列車で行こう』という
いまの時代だからこそ嬉しくなる
素敵なプレゼントをもらったばかりだから。
この映画は、最近の日本映画とはベクトルがまったく違っていた。
鉄道マニア、いわゆる“テツ”のふたりの日々を追った映画。
片や、一流会社勤めで九州に転勤命令が下った小町(松山ケンイチ)、
片や、資金繰りに苦労している鉄工所2代目の小玉(瑛太)。
そのふたりが、ちょっとした偶然から
それまで難攻不落とされていた社長(ピエール瀧)と知り合い、
契約を結ぶことに成功するというもの。
いわゆる“芸は身を助く”で、
まあ、『釣りバカ日誌』と似ていなくもない。
いわゆる使い古された設定。
ところが、これがとても心地よい。
というのも、この映画にはピュアな善人しか登場しないのだ。
いまの言葉で言えば、観終わって“ほっこり”。
やはり映画は、それを観る人を幸せにしてこそのものだなと、嬉しくなった。
ゆったり流れるユーモアは森田芳光の初期代表作『ライブイン茅ケ崎』に通底する。
そう、ぼくが、森田芳光の映画に最初に出会ったのは
この『ライブイン茅ケ崎』だった。
そこに流れる、ゆったりとした時間、
何が起こるでもなく、茅ケ崎に暮らす若者たちの日常が描かれる。
『ねぇ、塩ジャケと普通のシャとどっちが好き?』。
いや、『生ジャケと焼いたシャケ』だったか…。
ともあれ、
この映画は、当時の問題意識を全面に出した
他の自主映画とは明らかに位相を異にしていた。
(実は、この映画、『ぴあ自主製作映画展1978』で上映。
瑛社を担当していたぼくは、チョンボを犯すワケだけど、
まあ、それはまた別のお話)。
ところで、この映画の前に、彼はいろんな電車が出てくるドキュメンタリー
『水蒸気急行』を作っている。
もしかして、今回の映画はそれを意識しての、
“初心に帰る”もあったのかもしれない。
というのも、この映画の作りは
会話の間からセリフ回し、撮影、ギャグ…。全てが昭和の映画のノリ。
さすがに、伊東ゆかりの『小指の思い出』ネタは、
やりすぎの感がないでもないけど…。
だが、それでも言えるのは、
こんな芸当は、
一作ごとに作風を変えていく森田芳光監督だからこそ…。
なにせ『39 刑法第三十九条』のすぐ後に『黒い家』。
彼は、映画そのものを好きで、
その間口を広げようとした希有な作家。
ある意味、どこを切り取ってもその作家の映画と分かる
園子温監督とは対極にあったと言えよう。
日本映画界は、ほんとうに惜しい人材を失いました。
心よりご冥福をお祈りいたします」
(byえい)
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お花屋さんもよろしく。
※画像はアメリカ・オフィシャル(壁紙ダウンロードサイト)より。
>最近の日本映画とはベクトルがまったく違っていた。
僕はその心地よさを満喫しました。
森田監督って変なひとだなぁと思ってしまったくらいです。(良い意味で)
>釣りバカ日誌』と似ていなくもない。
直感としてそう感じます。
ですから、これはうまくいけば人気シリーズになるかなと。でも残念ですがご本人がいないので無理ですが。
いいものを残していただきました。
そんな森田芳光監督だからこそ、この映画をシリーズ化してほしかったです。
本当にこの名監督のご逝去が悔やまれます。
8ミリ時代の彼が戻ってきたかのようでした。
『釣りバカ』は言いすぎかなとも思ったのですが、
意外にも、多くの方が口にされていたので、
ホッとしています。
日本映画の裾野は広がるし、
その意味ではまさにこれからだっただけに残念です。
シリーズ化、観たかったですね。