----『小さいおうち』--。
“山田洋次監督が挑む、新しい世界”って、どういうこと?、
山田洋次監督の前作って『東京家族』。
その前も
『母べえ』だの『おとうと』だのって
“家族”の話ばかりのような気がするけど…。
「う~ん。
ぼくも観る前まではそう思っていたんだけどね。
ところが、一方ではどこからともなく
“山田洋次監督が描くメロドラマ”との話も」
----実際はどうだったの?
「うん。
“家族”は家族でも
ここで描かれるのはその“絆”ではなく“秘密”。
それも“家政婦は見た”じゃなかった“女中は見た”」
----うわっ。これってそんな下世話な話ニャの?
「いやいや、そう決めつけてはいけない。
それが純愛だろうと不倫だろうと、
“愛”は生きる上でその礎をなすもの。
それなしでは人生は無味乾燥となる。
ところが、そんなに重要なものでありながら、
それ(愛)はどこからともなく突然現れ、
そしてその中にいる人たちの理性を奪ってしまう。
この映画は、子どもへの慈愛に満ちた女主人・時子(松たか子)に訪れた恋の嵐。
その一部始終を、女中タキの目線で語っていく」
----そのタキを演じるのが黒木華ってわけだね。
あれれ、倍賞千恵子は?
「彼女が演じるのは、
老境で人生の晩年を迎えた、平成に生きるタキ。
この物語は、
青年・健史(妻夫木聡)に促されて
タキが書いた自叙伝に添って話が進むんだ」
----ニャるほど、そういうことか?
あの予告編のシーンは、昭和の頃の話ニャんだね。
「この物語、
実を言うと、そう珍しいものではない。
可愛くおしゃれな妻・時子(松たか子)が
夫・雅樹(片岡孝太郎)の部下・板倉(吉岡秀隆)の放つ
サラリーマンにはあらざる魅力に惹かれていく。
だが、それは出口のない恋。
時代が戦争へと向かう中、
やがて板倉には召集令状がくる。
明後日には出征というそのとき、
果たして時子は? そして板倉は?というもの」
----ほんとだ。
苦しい恋の背景に戦争というのも
よくある話だよね。
「うん。
戦争への道という非日常が正常な感覚を狂わせていく。
しかもふたりが決定的に近づくのが台風の夜。
ぼくの子どもの頃、
それはこの時代よりだいぶ後だけど、
それでも父親はこの映画の板倉のように、
台風の前には雨戸に板を打ち付けて補強。
母親は停電に備えてロウソクを用意と、
なんだか不思議な高揚感があったのを覚えている。
“吊り橋”理論じゃないけど
そんなドキドキワクワクの夜には
恋も生まれやすいことは想像に難くない」
----ふむふむ。
でも、メロドラマはメロドラマでしょ?
「そうなんだけど、そうでもない(笑)。
この映画、小津安二郎風ショットの積み重ねで始まり、
次第に野村芳太郎調に。
と、一方では
その不倫をめぐるミステリーの形式で話が進みながら
ラストに至って
ある、とんでもないセリフが待ち構えている。
さすがにそのセリフをここで明かすわけにはいかないけど、
それこそが山田洋次監督がこの映画で言いたかったこと。
普通に聞いていれば、
そのセリフというのは
なんと言うことはない、
年老いた女性の嘆きなんだけど、
監督はあえて健史の口から
『その意味が分からなかった』とダメを押す。
そうなると、その言葉の奥にあるものについて
思いが及ばないわけにはいかない。
これは、
あの“戦争に向かっていった時代”と“今の時代”を重ね合わせたセリフ。
でも、漫然と見ていると気づかないかもね」
----へぇ~っ、そこまで言われると
フォーンも観たくなるニャあ。
フォーンの一言「う~む。みんなでその言葉の意味を考えるのニャ」
※これは森崎東監督『ペコロスの母に会いに行く』と並んで
ぶれない作家、その魂ということについて考えさせる映画。
だけど、山田洋次監督のほうがシニカルだ度
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『小さいおうち』、これは原作が本当に!素晴らしいので、映画化は予想していたとはいえ期待半分、不安半分でした。
特にキャスト(特に奥様)が、ちょっと・・・。
しかも、山田洋次監督の映画って実は観たことないのです。。
でも、なんだか楽しみになってきました♪ いつもありがとうございます。
原作を読まれているのですね。
個人的には、原作にもあのセリフがあるのかどうか、
そこがもっとも気になります。
原作を読んでいないからか、
キャスティングには違和感はありませんでした。
松たか子もハマっていましたよ。
ただ『東京家族』のキャストをあれほど出演させるのはどうかと思いましたけどね。
山田洋次って、いつも自分のお気に入りの俳優と組んでいる気がします。
そこがあるカラーを破れないところでもあり、
実にもったいないなと…。
でも、それが安心できるという人もいるのでしょうね。
えいさんはタキのアパートにあった「絵」をどう解釈しますか?
どうもこれは映画オリジナルの脚色らしいのですが、あの絵をどう捉えるかによってかなり違った映画になりそうな気がしています。
あの「絵」ですね。
これは、何人かの方がご指摘されていました。
つまり、
ふたりは、あの後、逢っていた…
そのことに対するタキの罪の意識…
確かに、映画の観方が大きく変わってきます。