ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『潔く柔く きよくやわく』

2013-10-13 19:15:09 | 新作映画
----えっ、また日本映画ニャの?
それ、メジャー配給の作品。
よくそんなのばかり喋るニャあ。
「だよね。
正直言うと、
観るまではぼくも
あんまり期待はしていなかったんだ。
というのもこの映画、
原作はマンガ。
で、そのさわりが、あるシネコンに置いてあった小冊子に載っていて…。
まずはその部分を簡単に紹介しよう。

同じ団地の隣同士で育ったカンナとハルタ。
幼なじみのふたりは同じ高校に進学。
クラスメイトの朝美と真山と仲よくなる。
遊びに行くときはいつも4人一緒。
15歳のキラキラと輝く青春の日々は
永遠に続くかのように思われた。
ところが、ある日、
抜け駆けでカンナを花火大会に誘った真山が
自分の熱い想いを彼女に告白。
同じ時間、
バイト先からカンナの部屋へ自転車を走らせていたハルタは
トラックに撥ねられて死んでしまう…。

と、ここまでが描いてあったんだね」

----ふむふむ。
そのカンナを演じているのが長澤まさみってワケだニャ。
ハルタの方は誰ニャの?
旬の俳優がたくさん出ているみたいだけど…。
「ハルタ役は高良健吾
彼の出番は驚くほどに少ない。
映画の序盤で亡くなっていまうわけだから…」

----それはもったいないニャあ。
「(笑)。
さて、話を先に進めよう。
この事故がきっかけでカンナは恋ができなくなってしまう…。
しかも彼女は朝美(波瑠)から
『絶対に許さない!』と絶縁状を突きつけられ、
真山(中村蒼)も物語の表舞台から遠ざかっていく」

----あ~。
「フォーンが唖然とするのも当然だよね。
それまで、
これは自分たちだけの特権とでも言うかのように、
素敵な青春を謳歌していた美形四人組が
一挙に地獄の底へ落とされちゃうワケだから…」

----でも話はここで終りはしないよね。
「もちろん。
それから数年後。
20代となったカンナは映画宣伝会社に勤務。
ある日、彼女は行きつけのバーで
ひとりの感じの悪い男・赤沢禄(岡田将生)と出会う。
しかもその男は、
カンナが映画を売り込みに行った出版社で働く
映画ページの担当者でもあった」

----岡田将生って
このごろよく出るよね…。
「うん。
『四十九日のレシピ』では
変な日本語を操るブラジル人青年を演じていた。
どうも彼に与えられる役というのは、
その美形に反して、
いや美形だからこそか、
性格的にはあまり好ましくない男が多い。
この映画でも、やたらと自信たっぷり。
しかも相手に対して傍若無人な態度を取り、
それがまた核心を突く言葉であったりするものだから、
女性の心に妙に引っ掛かる。
男から見たら
『お前、それすべて計算づくでやっているだろ』と
毒づきたくなる…」

----それはモテナイ男のヒガミ(笑)。
でも、この映画、
その岡田将生がメインキャストのひとり。
そんな設定のままで終りそうには見えないけど…?
「そうなんだよね。
ぼくもそこまで読むべきだった。
赤沢禄、自信たっぷりの彼にも実はある辛い過去があった。
小学生の頃、同じクラスの女の子につきまとわれ、
思わず突き飛ばしてしまい、
自分だけが生き残ったのだった」

----それって
ニャんだか、嘘っぽくニャい?
ふたりとも相手が交通事故死だニャんて…。
「そう、話ができすぎ。
でも、これは原作ものだし、
あまり、そういうところを突っついても仕方がない気がする。
実は、この映画を観た」直後、
ツイッターで感想を呟いたとき、
『主人公たちの倫理観が分らない』という意見がタイムラインに流れてきた。
それは確かにそうかもしれない。
第一、ハルタが死んだ理由も
自転車に乗りながらの携帯メールで、
目の前のトラックに気づかなかったから。
カンナを責める朝美の気持ちも分らないではないけど、
事故の主たる原因は、
ハルタのそういう危険な行動にあるんだし…。
それと、この映画に対しての意見の中にあったのが、
ヒロインが自分の担当する映画をよく観てもいないのに
雑誌社に売り込みに行っていること。
そのことを相手に見ぬかれ、
すぐに観ていないことを認めちゃうばかりか、
後で観直して『オモシロくなかった』と、これまた素直に認める。
こんな映画の描き方があるか…というわけだね。
それもその通りではあるんだけど、
ぼくは別の考えが頭に浮かんだんだ。
実際、映画のことを知らない宣伝会社の人ってほんと多い。
これは、そのことに対する批判でもあるんじゃないかと…」

----ニャるほど。
でも、引っ掛かることは引っ掛かるよニャ。
「あらら。
ただ今回、ぼくがこの映画を紹介しようと思ったのは、
これがいわゆる単なる」ラブストーリーではなく、
魂の救済をも描いていたから。
自分だけが生き残ってしまった…
そんな過去を背負う人たちの心の重荷、
それはいつ下ろすことができるのか?
いや、死ぬまで抱えていかなければならないのか?」

----また大きく出たニャあ。
「この映画、実は途中から、
ひとりの奇妙な女性が登場する。
池脇千鶴扮するその女性・愛実は、
禄が突き飛ばした女の子の姉。
彼女は今、
亡くなった妹の面影を残す娘を抱えていた…。
と、ここがこの映画のキーポイント。
果たしてそこで何が起こるか?
まあ、これも読めると言えば読めるんだけど…。
新城毅彦監督の演出、
そして出演者たちのコンビネーションが絶妙だったんだろうな。
ほんとうは嘘っぽいその奇跡が
ファンタジーとして見事に昇華されていたもの」



     (byえいwithフォーン)


フォーンの一言「原作はいくえみ綾。“いくえみ男子”という言葉もあるらしいのニャ」小首ニャ


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