ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『百円の恋』

2014-11-11 15:16:39 | 新作映画
----この映画って、
東京国際映画祭で話題になった作品だよね。
安藤サクラの演技がスゴイって…。
「そうだね。
共演の新井浩文が激賞していることでも話題に。
実はぼくはこの前に『0.5ミリ』という、
やはり安藤サクラ主演の映画を観ていて、
ここでの彼女の演技ですでに打ちのめされていただけに、
前もっての心の準備はできていたんだけど…
いやあ、その予想をはるかに超えたね。
クライマックスのリングでの戦いでは、
ほんとうに、涙が出てきたもの…」

----えっ、リングって?
「うむ。
では簡単にストーリーから。
この映画のヒロイン一子は、
32歳にもなって家に引きこもり。
働きもせず実家に閉じこもって自堕落な生活を送っている。
そんなある日、子どもを連れて出戻ってきた妹の二三子とついに掴みあいの大げんかに。
とうとう、家を出ることになった一子だけど、
思いつく仕事と言えば、
夜に買い食いのために入っている100円ショップくらいしかない。
そこで、彼女はさまざまな人間と初めて接近遭遇する…」

----ニャるほど。
じゃあ、新井浩文が演じているのはそこの店員?
「いやいや、
彼は近くのボクシングジムでストイックに演習に励む中年ボクサー・狩野。
つまりは、彼も100円ショップのお客さん。
まあ、物語の流れ上、
一子と狩野は、付き合いを始め結ばれるようになる」

----分った。
その出会いを通して、
彼女は自分の生き方を振り返り、
再生へと目覚めていくわけだニャ。
「そう。
実を言うと、
このどん底からの再生というのは、
日本の青春映画おなじみのパターン。
取り立てて珍しくはない」

----だよニャあ。
でも、これって
第一回「松田優作賞」グランプリ脚本。
どこがよかったの?
「それはたとえば、
100円ショップで働く店員たちの描き方にある。
うつ病を抱えた店長、
ギャンブル好きのバツイチ、
売り上げを盗んで100円ショップをクビになった元ソープ嬢…。
いまの時代を表しているというか、
そのだれも明日を信じているようには見えず、
ただ、いまを流されて生きている。
ここには、たとえばメジャー作品では目を向けないような
現実直視、そしてその向こうに社会に対する批評精神
が見えるんだ。
でもね、それでもこの映画は、
ぼくにとってはかなり“歪”」

----イビツ?
「映画って、
普通は、役者が演じた主人公の生きざまが観客の心を揺り動かし、
感情移入したり、反発したりするもの。
ところがこの映画では、
一子の生き方よりも
彼女を演じている安藤サクラに胸揺さぶられるんだ

ダラダラと無為な一子、
可愛い子ぶりっこして見せる一子。
そして、どう見てもリングには上がれないくらいに
下手なシャドウボクシングをする一子。
これで大丈夫?と思ったら
素人目にもその上達ぶりが分かるくらいに
シャープになっていく。
そしてリング上。
とても特殊メイクには見えない、
実際に殴られているのではないかと思うほどに
<痛み>を感じさせるファイト。
観たとき、頭をよぎったのは『あしたのジョー』
レベルが全然違う」

----ニャるほど。
「よく演技派だのアクション俳優だの言うけど、
役者たるもの演技ができるのはあたりまえ。
その上に、これだけのアクションができる…
その自らに課した鍛錬ぶりを考えると、
もう頭が下がるほかない。

役にではなく役者に泣ける、
これっていいことなのか悪いことなのか。
ただ、映画にはいろんな楽しみ方、感動があっていいと思っているぼくにとっては、
これもまたあり。
いまは、そう思っているんだ」




フォーンの一言「映画は、物語の内容がすべてというワケじゃニャいのニャ」身を乗り出す

※ユーモアもほどよい度

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