ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『バンクーバーの朝日』(一部、『KANO 1931海の向こうの甲子園』)

2014-11-20 12:48:27 | 新作映画

----バンクーバーってカナダだよね。
これっていつごろのお話。
プレスに写っている俳優さんたちのファッションも
どことなく古めかしいけど…。
「そうだね。
ではまずは時代背景から。
19世紀末から戦前にかけて
貧しい日本を飛び出し、
一攫千金を夢見てアメリカ大陸に渡った人々がいた。
しかし、そこで待ち受けていたのは低賃金かつ苛酷な肉体労働と人種差別。
そんな中、日本人たちはやがて日本人街を作り
そこで肩を寄せ合うように暮らし始める。
これは、そこに生まれた一つの野球チーム“バンクーバー朝日”を軸に語られていく。
映画は冒頭、船で大陸に渡る人々の様子から始まる。
ここで観客の多くは、
これまでアメリカが描いてきた多くの移民映画を思い出すに違いない」

----ということは、
ここに写っている妻夫木聡、亀梨和也、勝地涼、上地雄輔、池松亮らは、
その移民たちの子どもってこと?
「そうだね。
映画は彼らのバンクーバーでの暮らしぶりを追うものの、
肝心の野球については、
それほど深く描くことはない。
引きの画が多いこと、
また意図的に日本人街をアンダーの照明にしたことと相まって、
前半は、物語があまり盛り上がらない」

----えっ。でも
練習風景とかはきちんと描かれるんでしょ?
「いや、それもほとんどないんだ。
せいぜいノックと、港での素振りが出てくるくらい。
まあ、生活に追われて
それほど練習とかはできなかったんだろうけどね」

----それじゃあ、勝てるワケニャいよニャ。
「そうなんだ。
最初のうちは、ヒット一本出ない。
だから見事にゼロ行進。
だからといって、『KANO 1931海の向こうの甲子園』などに見られたような厳しい特訓があるワケでもなし。
でも、なんとかしようと思ったのが妻夫木演じるレギー笠原。
よけたバットにボールが当たったのをヒントに、
バントで塁に出る。
そして脚で相手チームをかき回すんだ。
そしてそれが功を奏して
バンクーバー朝日は連勝に連勝を重ねていく。
最初は、なんだそのしみったれた野球と思っていた日本人街の人たちも、
次第に心を一つに、応援に熱を上げるようになっていく」

----ふうん。
で、その『KANO』って?
「こちらは、永瀬正敏の出演も話題の台湾映画。
描かれるのは、日本帝国統治時代の台湾に実在した
日本人と中国人、台湾人の混成チーム「KANO](嘉義農林学校の略称「嘉農」)の物語。
彼ら「KANO」は、海を渡って甲子園に出場するんだ。
この二作品は、
それぞれ異国での野球を軸にした映画。
片や日本人が差別を受け、片や台湾の人たちが差別を受けている。
そんな中、野球というスポーツを通して
選手だけでなく周りも誇りと自信を持っていく…
という意味では似通ってはいるんだけど、
本質的なところで全然違うんだ」

----どういうこと?
「いや、
たとえば差別される人たちへの目の配り方などは同じなんだけど、
野球に携わる人たちの描き方がね。
バンクーバー朝日の選手、とりわけレジ―などは、
何が目的で野球をやっているのかが、よく見えてこない。
とりわけ“勝ち負け”にこだわっているように見えないんだ。
時代的に、日本が戦争へと向かう頃でもあり、
彼らの親世代の中には
日本人であることを強く意識しようと言う者もいれば、
いやこのカナダの土地に馴染もうという者もいる。
しかし選手たちは、
現代の野球をやっている若者たちとそう変わらない。
中にはプロを夢見る者もいるものの、
ただ野球がやりたい、それだけのようにも見える。
で、どうせやるならやはり勝ちたいねくらいの静かな熱。
だからか、監督の石井裕也
野球映画の掟破りとでもいうような描き方に終始するんだ」

----掟破り?
「そう。
野球映画では往々にして試合の描き方は限られてくる。
一つの試合の中で、キーとなる回を
じっくりと描き込んでいく。
ところがこの映画は、試合の方はあっさり。
各試合、1イニングを描くだけ。
なにせ、最終戦では最初の1回、
そして9回では最後の一人との勝負だけ」

----ああ、だから、
『フューリー』「戦争映画の歴史を塗り替える」を引き合いに
野球映画の歴史を塗り替える」と呟いたんだニャ。
「うん。
『42 世界を変えた男』のように、
試合中の差別的プレイなんかも描かれはするけど、
その和解もまた早い。こだわりなし。
つまり、これまでの野球映画のような“じらし”がないんだ
でも、それでも最終戦では心の中に
温かい感動がじわ~っと広がっていく。
野球をやる限り、日本人もカナダ人も関係ない―。
ところがそんなカナダの人たちの暖かい歓迎も、
やがて一変。
日本人たちは強制収容所に送られるようになる。
なぜ、そんなことになったのか?
ここに、この時代にこの映画が生まれる理由があったという気がするね」





フォーンの一言「カナダでも差別、排斥があったのは知らなかったのニャ」身を乗り出す

※いまは日本人が逆のことやっている度

コトリ・ロゴこちらのお花屋さんもよろしく。
こちらは噂のtwitter。
ツイッター
「ラムの大通り」のツイッター



blogram投票ボタン

ranking.gif人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー