ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『砂漠でサーモン・フィッシング』

2012-11-22 00:33:39 | 新作映画
(原題:Salmon Fishing In The Yemen)



----ん?このタイトル、どういう意味?
そのまま“砂漠で鮭を釣る”ってとらえていいの?
ニャんだか、ありえない気がするけど…。
「うん。
普通、ありえないと思うよね。
日本でも、鮭といえば北海道のような涼しい気候のところが有名。
しかも、鮭は川上りをするわけで、
この映画の舞台となる暑い砂漠のイエメンでその鮭を育てて
釣りまでやっちゃうなんて、
とても考えられない。
でも、そんな普通にはありえないことを映画にするくらいだから
これはきっと“実話”からう安れた奇跡と感動のお話…
と、そう思ったら、まったくの的外れ。
実はこの物語には
イギリスで一大ブームを巻き起こした“原作”があるらしい」

----ニャんだ、フィクションか…・
「ところが、
ぼくはそのことに気づかず
へぇ~っと思って観ていたんだから
ほんとバカだよね。
いや、それだけ映画がよくできていて
ぼくを騙してくれた、そう言うべきか…」




----どういうお話ニャの?
「砂漠の国イエメンで、鮭釣りがしたい――
そんなバカげた仕事を依頼された水産学者のジョーンズ博士(ユアン・マクレガー)。
持ちこんだのははイエメンの大富豪シャイフの代理人、コンサルタントのハリエット(エミリー・ブラント)。
そんなのは不可能!と一蹴した彼だが、
折しも中東情勢が悪化。
首相広報官マクスウェル(クリスティン・スコット・トーマス)は、
英国への批判をかわすための明るい話題作りに
“イエメンで鮭釣り”の支援を決定。
かくして荒唐無稽な企画が
立派な国家プロジェクトに急展開…
と、こういうお話なんだ」

----ニャるほど。
よくできた話だニャあ。
「うん。
しかも映画は、
科学的裏付けを出しながら、
もしかしたら、こんなこともありうるかも…
と、観る者を納得させつつ進んでいく。
ところが『あれれ、これはおかしいぞ。
実話にしては話があまりにもできすぎている』と…」

----どこでおかしいと気づいたの?
「実は、ハリエットには付き合い始めて間もない彼がいた。
ロバートという名のその彼は軍人で、
中東に派兵されたまま消息不明に。
周りのみんなは、
戦死したと、そう思っていたのだが…」

----だが、生きていた!?
「うん。
マクスウェルは、そのことさえも宣伝に使おうと、
鮭を川に放つまさにその日に彼を現地に呼び寄せる。
ロバートは戦死したと思っているハリエットとの感動の対面をマスコミに流し、
劇的効果を狙ったワケだね。
ところが、その頃にはすでにジョーンズはハリエットに
ビジネスパートナー以上の思いを抱いていた。
さあ、ここにラブロマンスの行方という
もう一つの話の流れが生まれる。
その一方、イエメンでは
シャイフは国を西欧化しているという非難の声が…。
過激派の一味は、プロジェクトを阻止するべく
ダムの爆破という実力行使に出る…」

----へぇ~っ。話がそこまで広がるとは…。
「でしょ。
ここまでくるとさすがに嘘っぽい。
見せ方も少し劇画チックだしね。
でも、ぼくは
だからこそこの映画はオモシロイと、
そう思ったワケ。
実は、この映画の脚本は
『フル・モンティ』『スラムドッグ$ミリオネア』のサイモン・ビューフォイ
一見、ありえそうな題材を基に、
それをちょっとずらして“寓話”的な広がりを持たせる。
このさじ加減がほんとうに巧い。
映画は、所詮、つくりものの世界――。
このことをビューフォイはよく知っている。
監督は、『ギルバート・グレイプ』『サイダーハウス・ルール』など、
ヒューマンドラマの名作を生み出してきたラッセ・ハルストレム
彼のビューフォイの脚本への言及が、
映画というものの本質を見事に言い表している。
『奇想天外な要素もありながら、
実生活に根付いた感情や人間関係もあり、
それらが混在しているところに良さがある。
真実を描くには、
ドラマとコメディの両方が必要なんだ』。

で、このことを演技で体現しているのがユアン・マクレガー。
エミリー・ブラントの魅力はもちろんのこと、
クリスティン・スコット・トーマスのコミカルな味わいも捨てがたい。
首相とメールのやり取りをするときの
アイコンなんて、ちょっとやりすぎの感もないではなかったけどね」





フォーンの一言「ジョーンズとシャイフとの友情もいいらしいのニャ」小首ニャ
※シャイフには“中東のジョージ・クルーニー”エジプト№1スター、アマール・ワケドだ度

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