ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『さあ帰ろう、ペダルをこいで』

2012-04-08 23:32:09 | 新作映画
(原題:Svetat e golyam i spasenie debne otvsyakade)



----これって、ブルガリアの作品だよね。
あまり馴染みがない国だけど、映画は盛んニャの?
「いや、そうでもないらしい。
年間製作本数がわずか7~8本だとか」

----それじゃあ、
ソフィア映画祭最優秀ブルガリア映画賞&観客賞なんて言われても、
あまり、誇れることでもなくニャい?
「まあ、そう言わない。
逆に言えば、その数少ない映画製作本数の中で
その仕事に従事しているということは、
ブルガリアの中でも映画エリートということでもあるワケだから。
ただ、なるほどな…と思うのは、
そういう国で作られた映画というのは、
娯楽の方ではなく“国”の“歴史”を問うといった、
(言葉は悪いけど)生真面目な方向に向かう。
それを確認したね」

----どういう話ニャの?
「ここはプレスから引用しちゃおう。
1983年、
共産党政権下のブルガリアからドイツへ移住したアレックス一家。
25年後、ブルガリアへと里帰りの途中、
一家は交通事故に遭い両親は死亡。
孫を心配してブルガリアからやってきた祖父バイ・ダンの誘いで、
アレックスはブルガリアに向かって
タンデム自転車でヨーロッパ横断の旅に出る!」

----そうか、ロードムービーになっているんだ。
「そう。
ロードムービーというのは、
旅の途中で二人の関係が変容していくというところにオモシロさがある。
この映画の場合、アレックスは記憶喪失。
その彼が、“この爺さん何者?”というところから始まって、
相手に心寄せ、その間に、
自分の記憶も取り戻していくという構成。
しかも、そこになぜ、彼の両親がブルガリアを離れたかが
祖父バイ・ダンの回想の中に描かれていく」

----そうか、平面的には故郷に帰る旅。
でも、それが自分を取り戻す旅になるわけだ。
「(笑)。それ、プレスに書いてある。
で、この映画の特徴をさらに言えば、
タンデム自転車を使っていること。
前に乗るバイ・ダンは主にかじ取り。
で、その推進役はアレックスになる。
つまり、これがこの映画の構造、
“道しるべ”は祖父、
でも孫が“自らの力で漕ぐ”ことで
前へ前へと進んでいく…という内容と、
視覚的にも重なりあっていくんだ。
あと、ユニークなのは、
この祖父バイ・ダンの得意とするものとしてバックギャモンを出しているところ。
バイ・ダンは言う。
『人生はサイコロと同じ。
どんな目が出るか。それは時の運と、自分の才覚次第だ』」

----いい言葉だニャ。
「この映画は二人の旅を描く一方で、
共産主義時代のブルガリアにおける密告奨励。
あるいは、イタリアの難民キャンプの苛酷な実態など、
歴史の影の部分をもえぐり出す。
でも、個人のことを描くときには
決してユーモアを忘れはしない。
そのひとつが、旅の途中で知り合った美しいダンサーと
アレックスが互いに意識していることに気づいたバイ・ダンが孫に
彼女を誘えとけしかけるところ。
そして、なんと言ってもラストの孫と息子のバックギャモン勝負。
なかなか、ふたりの決着がつかなくて
結局は、サイコロの目での勝負になるんだけど…。
これは、おそらくだれにも読めないだろうな。
爆笑で、気持ちよくスクリーンを後にできるよ」




                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「このバイ・ダンという人が、自由人っぽいよニャ」ぱっちり

※演じるのはエミール・クストリッツァ作品の顔ミキ・マノイロヴィッチ

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