ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『アワーミュージック』

2005-08-29 22:37:06 | 新作映画
「今日の映画はやりにくいなあ」
-----えっ、ゴダールって昔好きだったじゃニャい?
「そう。昔はね。
このプレスに従って言うなら、
ゴダールには大別して3つの時代のファンがいる。
『アンナ・カリーナ時代』『政治の季節の時代』
そして『「パッション」以降の時代』。
ぼくがファンになったのは、最初の頃。
『パッション』以降は正直お手上げだ」

----昔はどういうところが好きだったの?
「それを語り出すと、ここではとても収まりきらない。
それこそ一つひとつの例を挙げて行かなくてはならないからね。
でも一言で言えば、当時のゴダール映画を観た後の
<打ちのめされ感>に及ぶ映画は以後ないね。
一言で言えば『あ~あ、遠くに来てしまった』」。

----(笑)なにその「遠くに来てしまった」ってのは?
「つまり、映画の次元がまったく違うんだね。
こんな世界があることを知ってしまった自分は、
以後どうすればいいんだろう....という気持ちにさせられたわけさ。
それだけに『パッション』が80年代お洒落カルチャーの波の中で
シネヴィヴァン六本木で公開されたときは、あららって感じ。
<復活>の期待が高かっただけに、どう反応していいか分からなかった。
以後<ゴダール復活!>という言葉は、何度も目にした気がする。
でも、そのつど観に行っては、なんとも言えない気になって帰ってきているんだ」

----そう言えば、今回も<ゴダール復活』>は使われているね。
「<復活>は、ぼくに限って言えば、
『10ミニッツ・オールダー』が公開されたとき、そう思った。
ゴダールの「時間の闇の中で」は他の監督の表現とはレベルが違っていた。
絶妙のコマのスピードと音楽の挿入による圧倒的な映像の洪水。
今回、それが継承されている予感がしたんだね。
この映画ではサラエヴォを舞台に、
「本の出会い」というイベントに招かれた
映画監督ゴダール(ゴダール自身が演じている)と、
その講義を聞きに来た女子学生オルガの魂の交感を描く
第2部『煉獄(浄罪界)編』を真ん中に、
激しい戦争の映像のモンタージュによる『地獄編』、
そしてオルガが、アメリカ兵に守られた小川のせせらぎを歩く
第3部『天国編』で構成されている。
『地獄編』は『時間の闇の中で』の手法を継承していて、ノレたんだけどね」

----『煉獄編』はどうなの?
「ゴダール自身が、映画講義をやっている映像なども出てきて、
彼の研究者やファンにとってはたまらないだろうね。
それよりも驚いたのは「天国編」。
草むらや川縁が出てくるんだけど、
でもちっともファンタジーっぽくなんかしてない。
どちらかと言うと『ウィークエンド』の後半、あるいは『東風』のイメージ。
ゴダールの中には、やはりあの頃の<政治の季節>への想いが
強いような気がした……なんて勝手なことを言ってみたりする」

-----ニャんだそれ?
             (byえいwithフォーン)

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