ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『リンダ リンダ リンダ』

2005-08-16 23:49:06 | 映画
-----やっと行けたみたいだね。
周囲の評判もよく、観る前から期待が高かったようだけどどうだった?
「これは間違いなく、今年を代表する一本。
観ている間中、息を呑んでスクリーンから目が離せなかった」

-----どこがそんなによかったの?
「物語そのものはシンプルなんだ。
文化祭でライブをやる予定だった女子高生バンドが、
ギタリストの負傷で分裂寸前になる。
そんな中、キーボード担当だった子がギターに回り、
韓国からの留学生をボーカルに迎え、練習を始めるというものなんだ」

----ボーカルはぺ・ドゥナだっけ。彼女の演技が評判だよね。
「うん。監督は『ほえる犬は噛まない』『子猫をお願い』など
これまでのぺ・ドゥナの主演映画をよく研究したんだと思う。
この映画は彼女自身のキャラクターが見事に生かされている。
でもぺ・ドゥナに限らず、他の女の子たち、
前田亜希、香椎由宇、関根史織も好演。
二度とは帰らない青春の一時期、その一瞬の輝きを、
フィルムの中に移し替えることに見事に成功している」

-----移し替えてるって、どういうこと?
「『映画は青春を描くもの』----
これは『パッチギ!』の井筒監督が言っていたことなんだけど、
ぼくはこの考え方に、ある意味で納得するところがあるんだ。
映画とは、俳優という<素材>の中から、
その人だけが持つ固有の<輝き>を掬いあげフィルムの中に封じ込めようと言う、
大胆な野心から始まっているという気がする。
演出だの、脚本だの、演技だのは、
その野心を満たすための補助的な手段にすぎないのではないかと...」

-----そ、それは言いすぎだ。ヤバイよ。
「ま、いいじゃない。これはぼくの感じ方。
なぜ、この映画がぼくをあそこまで感動させたかを考えると、
そこに行き当たらざるを得ないんだ。
つまりこの映画では、変に演技を付けていないからこそ、彼女らは輝いた。
近年では『がんばっていきまっしょい』がそうだった」

--------そう言えば、あの映画の田中麗奈はよかったよね。
「うん。あの田中麗奈の仏頂面----。
あそこには青春の理由なき不機嫌さがあった」

------そういえば、この二本には似たところがあるんだって?
「『がんばっていきまっしょい』では、
高校漕艇部の仲間たちが、
いつかこの日のことを思い出すときがくるんだろうか...と語り合う夜がある。
この『リンダ リンダ リンダ』でも、メンバーの一人が、
演奏そのものよりも、こういった練習や準備にかける時間の方が
将来、思い出として残るのではないかと語る。
ただ、他のみんながその話を軸に感傷を深めていった
『がんばっていきまっしょい』に対して、
『リンダ リンダ リンダ』では他のメンバーがそれを茶化したりする。
ま、ある意味、いま的ではあるけどね」

------映画自体もそうなのかニャ。
もしかして本番よりも練習のシーンの方が、より感動的とか?
「そうなんだ。もっとも印象に残っているのは、
だれもいない夜中の構内を、ヒロインのソン(ぺ・ドゥナ)が
日本語で文化祭の出し物の説明をしながら歩き、
ライブ会場の体育館へ向かうシーン。
壇上に上がった彼女はメンバー紹介の一人芝居を始める」

------それも日本語?
「いやいや。留学生の彼女はそれまで友達ができない中、
一人自分の中にこもっていた。
そんな彼女に初めて仲間ができたわけだ。
喜びの感情を爆発させるここは、当然に自国語だ」

------ニャルほど聞けば納得。
「メンバー4人が土手を歩く。それを長回しでカメラが捉える。
それだけで観る者の感情を揺さぶらせる監督の演出手腕も秀逸だけど、
古典的とも言える脚本の巧さも忘れてはならないと思う。
この手の映画というのは、途中、何かの障碍があって
最後はそれを乗り越えて至福のクライマックスへ向かう。
ここではその障碍をメンバー間の感情的な諍いには求めず、
<時間>と<雨>に、その役割を与える。
練習の疲れから寝すごしてライヴの時間に遅れてしまったメンバーを土砂降りの雨が襲う。
しかし、この雨によって人まばらだった体育館は
濡れるのを避けた生徒たちでふくれあがってゆく。
雨と言うひとつの自然現象に両義性を持たせる、これまた巧い」

-----聞いていると、大絶賛だね。音楽や演奏はどうだったの?
「そっちはぼくの専門外だから....。
でも、音楽、しかも歌をモチーフにするということは、
その映画では<声>が重要な意味を持ってくるわけだ。
ここでは、湯川子音の澄んだ声、山崎優子のハスキー・ボイスが、
もう一つのドラマを作っていた。
いやあ、つくづくよくできた映画だわ」

         (byえいwithフォーン)

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