雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

何度でも君に温かいココアを

2012-05-27 19:55:36 | 

小瀬木麻美著"何度でも君に温かいココアを"を読みました。
読みやすいし登場人物たちもやさしい人たちです。
でも読み終わって一息つくとなんか変という感じに
おそわれる本です。

佐生倫子の父は智、母は由希です。14歳の中学生です。
お母さんは活字中毒です。微笑むことはあっても笑った
ことがありません。
お母さんに親類はいません。
家族のことも故郷の京都のことも話してくれません。
京都へ帰ったこともありません。
お父さんはお母さんをそっと見守って大事にしています。

お父さんの弟に幹夫おじさんがいます。
精神科医で倫子にミッキーと呼ばせています。
倫子は幹夫にロンと呼ばれています。
夏休みにミッキーにいっしょに京都へ行こうと誘われます。
持って行く鞄を探していて鞄の中に母の同窓会の名簿と
青山祐介という人から母に宛てた手紙が見つかります。
母が昔俊輔という人と愛し合っていたこと、俊輔が亡く
なったこと、母が喪失感から死ぬかもしれないと思われて
いたこと等が書かれていました。
倫子は京都で母の過去を探し出そうと決意して旅だちます。

京都での最初の晩にミッキーの友人の広沢卓とその姉の
恵子、その息子の敦志と食事することになりました。
敦志は高校生で、オリンピック出場を期待されている
水泳選手です。
恵子は由希の学生時代の友人で昔倫子の父の智に片思いを
していました。
由希と恵子はそれぞれに子供が産まれて男と女だったら
結婚させようと約束しました。
敦志は倫子のことを毎年送られてくる写真で知っていて
親同士がした約束を知っています。
倫子と敦志は会った瞬間に恋に落ちました。

俊輔は由希の血の繋がらない兄です。
子供を連れた親同士が結婚したのです。
二人は愛し合いました。プラトニックな関係です。
深く心が繋がっています。
両親は交通事故で亡くなりました。
俊輔は病気でした。二十歳ぐらいで亡くなります。
俊輔が亡くなって由希も死ぬのではないかと心配されて
いました。
由希を京都駅で見かけた智は大学もアルバイトも
家もその場で捨ててそのまま由希の後を追います。
こうして二人は京都から消えました。

倫子と敦志は由希の友人の大久保英、青山祐介を
訪ねて昔のことを聞き出します。
お母さんは京都へ来ることを怖れています。
過去からまだ抜け出せずにいます。
由希はお母さん宛に先に進んで欲しいとメールします。
そして京都で待っていると伝えます。

こういう話です。
母の友人の大人たちが由希が母の過去を知る様に
細工しました。
もちろん母親の由希もこの計画を知っています。
でもなぜという疑問が湧きます。
知らせたければ由希が自分で話せばいいではありませんか。
中学生の娘に突然こんな重い話を知らせる必要が
あったのかと思います。
大人なら自分の問題は自分で解決する努力をしたらと、
いいたくなります。
その後で話して聞かせればいいのです。
亡くなった人への思いを心に満たして、現実の世界で
夫と娘と暮らすということはできるものなのでしょうか。
夫は何もかも承知しています。
夫と妻として信頼し合っている関係ではあります。

倫子と敦志は由希と俊輔の関係に似ています。
まだ人生はこれから、先に何が待っているかわからないのに
運命の人と思い定めるのは辛いことではないかと
思ってしまいます。

こういう風になんだか納得いかないなあといろいろ考えて
しまう本は、きっと内容を覚えているに違いありません。

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