雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

ロマンス

2011-11-24 19:28:00 | 
柳 広司
文藝春秋
発売日:2011-04


柳広司著"ロマンス"を読みました。
読み終わってからロマンスという題名を見ると内容と
合ってないなぁと感じます。
読み始めてしばらくはいつの時代の話なんだろうと
思っていましたがちゃんと章の所に昭和8年と書かれて
いました。
おもな登場人物は華族の人たちと特高警察です。
帯にミステリーと書かれています。
ミステリーだと思わず読んでいました。
事件が起こって犯人を探すというタイプのものとは違います。
退廃と享楽に彩られた帝都の華族社会・・・と帯に書かれて
います。
ロシア人の祖母を持った子爵の朝倉清彬が親友の伯爵家の
多岐川嘉人にカフェーに呼び出されたところから始まります。
カフェーには首を刺された男が死んでいます。
清彬はフランス生まれで両親が事故で亡くなる10歳まで
フランスで暮しました。
嘉人は軍人です。清彬は嘉人の妹の万里子に結婚を申し込む
つもりでしたが父親の多岐川伯爵に外人の血を持ったものは
許さないと反対されました。
清彬は大叔父と特高警察からスパイになれと言われます。
どちらも断ります。
天皇をないがしろにしようとする一派、共産主義の人々
軍隊や特高といった不穏な空気が流れています。
万里子が華族グループの共産主義の仲間だと警察に
捕まります。

当時の華族社会が描かれています。
食べるにも困る人々がいるのに優雅に暮しているわけ
ですが幸せそうではありません。
閉塞感がひしひしと伝わってきます。
それでも華族から抜け出しては生きていけないのでしょう。
なんだか息がつまるようなどうにもならない社会で、
何もできないし何をしてもしょうがないという感じが
します。ただ流れのままに生きていくしかしょうがない
と思わせる世の中です。

自由奔放にフランスで生きた清彬の両親の方が
ずっと人間らしくみえます。
清彬はこの後どうやって生きたのでしょう。

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