書く仕事

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「左手に告げるなかれ」渡辺 容子

2014年04月20日 20時32分28秒 | 読書
「左手に告げるなかれ」渡辺 容子



ミステリーの王道を行く小説.

殺された主婦が血で絨毯に書いた「みぎ手」というダイイングメッセージ.

しかし,小説のタイトルは「左手に告げるなかれ」

最初の十数ページで,ミステリ好きの血を沸かせる謎がてんこ盛り.

八木薔子(しょうこ)は,警備会社に勤め,主にスーパーマーケットなどで万引きを監視し,捕獲する保安員をしている.

ある日,突然刑事の訪問を受け,彼女に殺人の嫌疑がかかっていることを知る.

薔子が以前不倫をした相手の男性の妻が殺された事件だった.

妻を亡きものにして,自分が後釜になることを狙っての犯行と思われたらしい.
あいにく,薔子には犯行日のアリバイがなかった.
しかし,逆に決定的な証拠もないので,家には帰してもらえたが...

ここまでは,単なる男女の痴話物語の範疇だが,自分の無実を晴らそうと動き出した薔子の前に,次々と奇妙な事実が明らかになる.

薔子より先に調査を始めていたという自称「探偵」,殺されたマンションの別の部屋に住む「おたく」青年.
娘を殺された気の毒な過去を持つ,そのマンションの管理人も何かを知っていそう.

登場する刑事よりも,探偵の数の方が多いくらい.

そうこうするうちに,主婦殺害事件の前に,同じ横浜市磯子区の中で3件の類似の殺人が起こっていることや,被害者がいずれもコンビニの親会社から派遣される指導員であったことなど,あれれ?いったい?という事実が明らかになる.

精密にはられた伏線,不倫相手の男性との微妙な関係,薔子と「探偵」,薔子と「おたく」との不思議な関係,読者を次々に「?」の世界に連れて行く.

第42回江戸川乱歩賞受賞作.

この賞の受賞作は,外さないね.

安心して読める.