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「テロリストのパラソル」藤原伊織

2014年04月28日 22時59分03秒 | 読書
「テロリストのパラソル」藤原伊織



ハードボイルドなミステリーとでも言おうか。
主人公はアル中のバーテンダー。元学生運動家、元ボクサー。

過去に起こしてしまった過失の事故(一見とんでもない事件に見える)のために、世間様から逃げ回るようにして、日陰を生きている。
世捨て人的な退廃的な雰囲気を振りまきつつも、知的な会話が楽しい。

このカッコよさ。たまりません。

爽やかさからほど遠いキャラクターにも拘らず、おそらくは中年以上の男性には、憎いほどのあこがれを感じさせる魅力がある。

この小説を読んでいてしびれるのは、主人公が退廃的な雰囲気の中にありながら、鋭い推理で相手のウソを見抜き、しかもそのような切れ味を見せてしまったことに対する、「恥ずかしさ」を隠さないことにある。
可愛いのである。
こんなに聡明で、こんなに自堕落で、どうしようもない男が何とも言えぬくらいにかわいい。

俳優さんで言えば、ハンフリボガードなんだろうが、もうちょっと知性を上乗せしたい。

日本人なら、西島秀俊さんと反町隆史さんを足して2で割った感じか?
もう少し汚れた雰囲気が欲しいな。

キャスティングの難しい役だな。

小説としてもスケールが大きく、骨太だ。
エンターテイメントとしては申し分ない、第1級のミステリーである。

ごちそうさまでした!

蛇足ながら、江戸川乱歩賞と直木賞を両方とった作品としても有名。