書く仕事

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「目からウロコの宇宙論入門」福江 純

2009年10月22日 10時28分30秒 | 読書


タイトルは宇宙論だけど,物理学,特に相対性理論と量子力学のとてもわかり易い啓蒙書にもなっている.
この本の素晴らしい点は,各々の理論が,ビッグバンや宇宙の構造とどのように関わっているかが,とてもわかりやすく書かれている点にある.

つまり,わかった気になる本ということができる.
これは大事なことで,啓蒙書は一種のサービス書だから,サービス業と同じで,顧客満足度が一番大切なポイントだからだ.

例えば,現代物理学の大テーマ,「統一理論」についても,『4つの力』のうち,重力と電気力はなんとなく理解できても,強い相互作用,弱い相互作用について,説明するのは至難のわざだと思う.
でも,この本の説明は,まさに「目からウロコ」.
これなら理解できる.
私自身強い相互作用を誤解していた点を,きれいに修正してもらえた.
過去に読んだ本から,強い相互作用とは,陽子や中性子をくっつける「のり」のようなもの,と思っていた.
でも,考えてみたら,なぜ,「力」が「のり」のようなものなのか?
変である.
この本では,こう説明する.
原子核は+の電荷をもった陽子がたくさん集まってできている.
+の電荷同士だと反発するはずなのに,酸素も炭素も窒素もたくさんの陽子がおとなしくくっつき合って原子核を形成している.
ということは,+の電荷の反発力をしのいで陽子相互を引き付ける引力のような力が陽子間に働いているはずである.この引力が核力,即ち強い相互作用だという説明なんである.
なるほど.

量子力学の発展系としての素粒子論で,言葉としてはよく見る「超ヒモ理論」だが,,正直私にとって,さっぱりわけのわからない代物だった.
しかし,この本を読むと,ふむふむ,そういうことだったのかと,わかった気になる.
これはすごいと思う.
ひょっとしたら,人々に知的満足を与えるという意味では,直木賞くらいの価値は持っている本ではないだろうか?
最後を哲学的な考察「最終人間定理」で締め,哲学と科学の昔からの関わりを想起させている点も心憎い.


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