性同一性障害をテーマとした青春小説.
主人公ナオちゃんは「普通の」男の子だが,彼を含む男子4人グループの1人「ノノ」が性同一性障害で,心は女の子という設定.
あとの二人も普通の男子で,4人とも幼なじみ.
しかし,ノノは小さい頃から,自分の体の性(男)が,心(女)と違っていることに苦しみ続けている.
世の中には,生きていくだけで苦しみを伴う心の重荷を背負っている人がいるんだなあ.
生きるほど,年を重ねるほどその苦しみが絶望に変わっていくこともあるだろう.
今でこそ,普通名詞となった,「性同一性障害」だが,本人たちの苦しみを本当に理解している人は少ないのだろうと,この本を読むとよくわかる.
例えば,心が女の子である男子は,じゃあ,ホモセクシャルの男性を見つけて恋人になれば,いいじゃないかと単純に思ってしまうが,それは不可能なのだとわかる.
ホモセクシャルの男性は,いわゆる同性愛者だから,心も体も男性の人が好きなわけだが,性同一性障害の男性は,心が女性なのだ.
だから,女性の心を持った人を愛してくれる人でないと恋人にはなれない.
結局,性同一性障害の男性が幸せになるには,手術によって女性の体になり,そうなったことを承知の上で付き合ってくれる男性を見つけなくてはならない.
これは,非常に難しいでしょうね.
そういうわけで,非常に重たいテーマですが,文章のタッチは意外にもかなり軽い.
テレビドラマの雰囲気さえある.
それもそのはず,著者は「高校教師」「101回目のプロポーズ」等の脚本を手がけた野島信司さん.
絶望の中にも,かすかな救いが見え隠れするのは,軽さともいえるが,読者の心に希望を与える効果も見逃せない.
物語の展開がミステリー調なのも,連続テレビドラマの「次週に続く」っていう,ノリかも.
小説としてより,一種の啓蒙書,哲学書として高く評価したい.
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