オンディーヌ他界離（か）れゆく一滴もこぼさぬ唇（くち）の紅愛（は）しきかも

　水妖記に。

　オンディーヌ、メリュジーヌ、リオラマ、人魚姫……

　異界からやってきた妖精たちは、いっときこの世に現れて、また去ってしまう。

　うらみも嘆きも残さず。


　ただ、哀しみながら。

母聖ならぬマリア我が歌おんなうたが万華月夜に韻（ひび）くさやけさ

　満月。

　万華鏡。


　そろそろお三味線を手ならししなければ。

　セザール・キュイの「万華鏡」でも爪弾きしようと思う。

　オリエンタルな旋律が、妖しくうつくしい。

　白鳥さんというモデルさんとは初対面。大柄で華やかな美人だそうな。


　わたしの三味線は細棹。

　わたしのうたは女歌。


　マリア……語源をさかのぼると、「ゆたかなうつくしい女」という意味らしい。

　海もマリアかな。






　

春けもの匂ひふくらむ色とりどり胸逆上（むなさかあ）がり毛ぼこり散らし

　猫たちの情景。

あざあざと果肉を噛めば朝露の沁み出づるごとくちびる甘し

　朝の果実に。