チェコ近代画壇のナンバー・ツー

 

 マックス・シュヴァビンスキー(Max Švabinský)も、近代チェコ絵画の先駆者の一人と数えられている。

 例によってチェコ語が分からないので、詳しいことは知らない。そういうときは、芸術に言語は要らない、自らの感性に頼って、知識なし、先入観なしで、鑑賞だけする。
 が、このシュヴァビンスキーという画家は、私の感性ではよく分からない。絵の一つ一つはかなり印象が残るのだが、それが一人の画家の画業のスムーズな流れにならない。……どうしてかな。

 チェコ絵画史において、近代絵画への運動は1890年代に現われたという。シュヴァビンスキー青春真っ盛りの時期。
 若きシュヴァビンスキーは好奇心が強かったのか、はたまた順応性が高かったのか。初期の彼はさまざまな様式を試すように描いていて、画風の変転が甚だしい。

 20世紀に入るとグラフィック美術にも手を出す。画家らしく古典的な印刷技法をあまねく試す一方、野心からかスランプからか、それとも時代への迎合からか、商業ポスターやイラスト、切手・紙幣のデザインに到るまで手がけ、それがまた大いに成功を収める。
 さらにステンドグラスや壁画、モザイク画などのデザインにも手を出し、美術学校で教鞭も取る。

 あれもこれものマルチな活躍の一方で、依然画家の自負は失わず、当時のさまざまな分野の著名人の肖像画を制作。そして、裸の群像が豊穣を讃歌する肉感的な寓意画を、ネオルネサンス風のモニュメンタルな大作として、次々と完成させた。

 同時代の先駆者たちが「悲劇の世代」と呼ばれたように、なぜか次々と早世するなか、彼だけは長寿をまっとうし、ミュシャ以降最重要の画家と位置づけられ、チェコスロバキアの国民画家として名声を博す。おまけに社会主義体制からも受け入れられる。

 が、私には知識不足なのだろう、シュヴァビンスキーは巨匠の名を冠した故国の看板画家のように思える。彼の絵は、膨大な数にも関わらず、心に響くものは少ない。
 実際、絵画として最も高く評価されているのは、妻をモデルに、貧しい人々の暮らす美しいモラヴィア高地を寓意的に描いた情景なのだという。

 画像は、シュヴァビンスキー「貧しい地方」。
  マックス・シュヴァビンスキー(Max Švabinský, 1873-1962, Czech)
 他、左から、
  「精神の親和」
  「帽子をかぶったエラ」
  「黄色い日傘」
  「収穫」
  「ジャングルの恋人たち」  

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