炎夏の狂都(続々々)

 
 リンツ近郊には、ナチスのマウトハウゼン強制収容所がある。世界負の遺産めぐりを志す相棒は、強制収容所にはすべからく訪れることをおのれの義務と心得ている。
 花崗岩採掘の強制労働に従事させられる囚人たちが、丘上の石切り場へと続く“死の階段”で、石とともに転げ落とされて殺された、という解説を読んで、相棒は昨夜まで、何が何でも見に行かなくては、とはりきっていた。

 が、マウトハウゼンはアクセスが悪い上に、相棒の体調不良も手伝って、結局、「また今度、機会があったらでいいか」と日和ってしまった。
 万難を排してマウトハウゼンを選択すべきだった。このことが、リンツに対する私たちの評価を決定づけた。

 まずは、昨日入れなかった新大聖堂へ。ここにもブルックナーのプレートがあるのを、相棒が見つける。
 それから炎天下のなか、小高い丘上に建つリンツ城へ。遠足に来た子供たちの集団に遭遇。横を通り過ぎながら、子供たちは次々と、私たちに向かって合掌してお辞儀をする。ヨーロッパでは、この「合掌してお辞儀」が、日本人に対する挨拶だと勘違いされている。

 城の丘から、一気にドナウ河畔へと降り、レントス美術館へ。ガイドブックの案内には、クリムトやシーレ、ココシュカらを初めとするオーストリアの現代美術を所蔵、とあったので、多くはなくてもそれなりのものがある、とごく普通に考えたのだが、失敗だった。

 To be continued...

 画像は、リンツ、リンツ城門。

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炎夏の狂都(続々)

 
 スピーカーを通した音楽と、ヒューヒューとはやし立てる声々が聞こえてくる。ので、そちらのほうへと行ってみる。
 と、銀行だかデパートだかホテルだかの古い建物の前に、無数の大きな白い風船が、空へと浮かび上がる泡のように連なっている。その下で、チュチュの他にカンカン帽とレギンスという白尽くめの衣装を着た小さな踊り子たちが、クルクルと軽やかに踊っている。それを、同じ格好の踊り子たちが、二階の窓に腰掛けて、一斉にヒューヒューとはやし立てている。

 洒落てはいるが、何か商業イベントのデモンストレーションらしい。ときおり招待客らしい、ドレスコードに則ったきちんとした格好の男女のカップルが、建物のなかへと入っていく。
「グラーツのチンドン屋を、見かけ華麗にしたようなものかね」と相棒が感想を述べる。
 
 陽が陰りかけていたが、新大聖堂へ。レーゲンスブルクの大聖堂を思わせる、荘厳な印象。
 けれども、そのすぐそばに、大聖堂にはまったくそぐわない、ガラス張りのカフェが唐突に建っている。大聖堂を眺めながらコーヒーとケーキを、ということなのかも知れないが、当のカフェの存在が、大聖堂広場の景観全体を妨げている。
「オーストリアのバカさ加減には、ついていけないものがある」と相棒がボヤく。

  ど快晴の真夏日。朝、相棒が腹痛だったので、午前はゆっくりして午後から美術館に行くことに。

 To be continued...

 画像は、リンツ、イベントの踊り子たち。

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