世界をスケッチ旅行してまわりたい絵描きの卵の備忘録と雑記
魔法の絨毯 -美術館めぐりとスケッチ旅行-
黒い湖の心象
以前、チェコの国立美術館で出会った最も傑出した画家の一人が、ヤン・プレイスレル(Jan Preisler)だった。
で、帰国後調べてみたのだが、ほとんどの解説がチェコ語で、私の語学力では何が何やら。こりゃ、自分が感じ取った印象を大事にしろ、って啓示かな。
プレイスレルは、近代ボヘミア絵画の先駆者の一人と見做されている。プラハのアカデミーで学び、後にはそこで教鞭を取ったが、46歳で死んでいる。
私の勝手な感想を述べると、プレイスレルというのは心象の画家。この心象を彼は、あるときはボナール的な、またあるときはゴーギャン的な、そして全生涯にわたってはムンク的な、画家の偏愛を感じさせる感覚的な色彩で、延々と描き出す。
プレイスレルの執着した内省的なイメージは、同じテーマ、同じ構図、同じモティーフとなって、自叙伝的な含意を持ちつつ執拗に登場する。おそらく画家自身の分身だろう、白馬を伴った裸の若い騎手。あるいは、身体をくまなく覆うシンプルなワンピースを着た女性。あるいはカップル。彼らが呪縛霊のようにそこにいるのは、黒い湖。
ボヘミアの森には、“チェルネ・イェゼロ(Černé jezero 黒い湖の意味)”という湖が実在する。ので、プレイスレルの描く湖も、多分それだと思う。が、彼にとってこの湖がどういう実存であるのかは、チェコ語が分からないのでちんぷんかんぷん。
愛というよりは若き日の初恋を想起させる、メランコリックな男女たち。生とか死とか、そうした生命の根源ほど普遍的ではないにせよ、個人的にはきっと深い意味を有する悲哀や憂愁。それらがセンシャスな画面を作り出し、夢とも現ともつかない、おぼつかない勢いで、じわじわと訴えてくる。
どういう若者だったんだろう、プレイスレル。チェコ語が分からないのでちんぷんかんぷん。
画像は、プレイスレル「黒い湖」。
ヤン・プレイスレル(Jan Preisler, 1872-1918, Czech)
他、左から、
「お伽話」
「春」
「恋人たち」
「湖の女と騎手」
「黒い湖の女」
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