団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

真央ちゃんとキム・ヨナ

2014年02月24日 | Weblog

  21日午前10時頃バスに乗った。昨日までのどんよりした寒い日が青く晴れ渡ったバスの中にも陽が容赦なく差し込むような日になった。乗客は10数人、陽気のせいかバスの中の会話の声も弾んでいた。すぐ後ろの席の二人の60か70代女性の会話に好奇心のチャンネルを合わせた。

 「あんた、真央ちゃんのフリーの演技観た?あたしはもう泣けて泣けて、声出して泣いちゃった」「また転んだの?」「違う違う。完璧だったのよ。良かったよ」「あたし観ようかと思ったけれど、具合悪くなるんじゃないかと心配で観なかった。朝もわざとテレビもラジオのニュースも避けていた。結果を知るのが恐ろしくってさ」 私(フンフン、そういえば私もこの観ざる聴かざるのおばさんと同じだった) 「ショートプログラムであれだったでしょう。スッテンコロリ大転倒。フリーは私、どんなことがあっても応援しようと思って目覚ましかけて起きて観たの。奇跡よ。もうボロボロ泣いたわよ」「そうだったの。私も観ればよかった」「そうだよ観たほうがいいよ」「今日また放送するかね?」「するわよ、今日は一日中、真央ちゃんのことばっかりだよ。観たほうがいいよ。こんなこと一生に一度しか観られないよ」

 「キム・ヨナはどうだった?金?」「銀だった。でもたいしたもんだよ、キム・ヨナは。素晴らしかったよ。安心して観られたもの」「私はキム・ヨナが大好きなの。もちろん真央ちゃんも好きだけど。女でもあの独特な雰囲気に飲み込まれそう」 私、(この人たち本気なの、最近の日韓関係から言って事あるごとに対立しているし、スポーツだってまるで代理戦争みたいになっている。選手たちだって国旗を背負わされて重圧を感じているに違いない。私の気持ちの中にも、そんな敵対心が残念だがある)「キム・ヨナは度胸が据ってるよね。本当にいつも感心するわ」「キム・ヨナも真央ちゃんがあんな失敗してライバルとして切なかったと思うよ。堂々と闘いたかったと思うよ。ずっとライバルだったんだから」「でもキム・ヨナだって真央ちゃんのフリーにはびっくり仰天しただろうね」

 この二人の女性の会話を聞いていて先週ハワイで一緒に過ごしたアメリカ人のTさんを思い出した。いろいろなシガラミから離れて純粋にオリンピックをスポーツとしてだけ達観して楽しんでいた。バスの二人の女性は偏見も憎悪もなくただただフィギャアスケートを美しいスポーツとして捉えている。私は日本の庶民がここまでオリンピックを公正かつ寛大な気持ちで観られることに感動を覚えた。

 用事を済ませて帰宅した。この二人の女性の会話のおかげか、一日中テレビで真央ちゃんの素晴らしい“最後?”の演技を何度も何度もチャンネルを変えて追っかけるように観た。地獄から天国。あの失敗があったからこそフリーでの挽回が生まれた気がする。今日はオリンピックの選手たちにも日本の地方の女性にも大きな教訓を与えられた。国家や政治がどれほど善良でごく普通の庶民の心情をかき乱していることか。それに比べれば、特に平和を願う一般女性の世界観というか生活感には学ぶことが多い。

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