団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

黒豆

2012年12月28日 | Weblog

  なんとも言えない黒光り、肌はツヤツヤ。美しい。眺めているだけでも幸せである。箸ではたして摘めるのかと心配になるほど丸くてぽってりとしている。世界のあちらこちらでたくさんの種類の豆を見た。そして食べた。しかし丹波の黒豆ほど私の心を魅了した豆はない。

  町田の乾物専門の河原商店で500g2500円の黒豆を買った。煮豆はもっとも厄介な料理のひとつである。正月といっても我が家には伝統的なおせち料理を準備することはない。店、スーパー、デパートの出来合いのものを買うこともない。

 私は乾しナマコ、乾しアワビ、乾燥豆などの長く時間をかけないと食べられない食材の調理が好きだ。好きだけれど失敗が多い。しかし調理に成功すれば、喜びは格別だ。いったいいままでにどれくらいの鍋を焦がして使えなくしたことか。今年も懲りずに黒豆を煮た。煮豆には覚悟がいる。鍋を焦がしてダメにする。途中で気の多い私は、豆にだけ集中できずに浮気してしまう。ちょっとと思ってインターネットや本に夢中になっていると、キッチンから焦げたニオイと部屋に漂う煙にはっと我に帰る。そうだ私は豆を煮ていたのだ。キッチンに駆けつける。ふっくらおいしそうに炊けるはずだった豆は鍋の底にこびり付いている。

 今回もやってしまった。鍋を焦がしたのではない。吹き零れに気がつくのが遅かったのである。我が家の熱源はオール電化のためにIHクッキングヒーターなるものを使っている。ガスなどの代替がない。一見頑丈そうで故障もなかった。今回の吹き零れは大量であった。妻に応援を要請した。「私のお母さんもよくこうして豆を煮ていて失敗していたわ」 その言葉は嬉しかったが、私は落ち込んだ。またやっちゃった。豆もちゃんと煮えないのか。雑巾を5枚くらい使って吹き零れた豆の煮汁を拭き取った。

 気持ちを入れ替えて、再度豆を煮始めた。IHの制御版に「U-16」の文字。見たこともない表示。早速説明書で調べる。(U-15:なべ底に約2mm以上のそりがあったり変形している。トッププレートやなべ底に異物や汚れがこびり付いている。余熱中に油を継ぎ足した。トッププレートが熱いときに、揚げ物をした) でもどれも当てはまらない。3つあるうちの2つは使える。しかし、もし漏電していればIHは高電圧のので非常に危険だ。すでに修理に関する相談窓口の受付時間は過ぎていた。その晩は電子レンジや電子グリルを使って夕飯を調理した。

 翌朝、受付時間の9時ちょうどに相談所の番号を入力した。「現在この番号はつかわれておりません。新しい番号は・・・」 私の悪い予感はほとんど当たる。新しい番号をメモして再挑戦。私はあらかじめ録音された電話応対が苦手である。ましてやそこに「何何の御用の方はプッシュボタンの1番を」の類いの操作がよくできない。米印を押せとか言われているうちに「オペレーターにお繋ぎします」ときた。「いるなら初めからでろよ」とごねる。「(音楽が始まる)申し訳ございませんが、只今大変回線が混雑しております。もう一度のちほどおかけ下さい」 9時に始めて、結局繋がったのは20分後だった。

  受付の女性に説明して担当者に繋いでもらって故障の状況を説明した。「明日修理に伺えますが、時間は明日の朝9時から10時の間にご連絡差し上げます」ということになった。

 10時に人と会う約束があった。ハラハラドキドキ30分待った。こういうときの待ち時間は長く感じる。9時半にこちらから電話した。「午後の1時から2時の間にお伺いできますが、ご都合いかがでしょうか?」「それでいいのでよろしくお願い致します」

 1時から窓の外を見つつ待っていた。2時10分前に電話。「あと20分くらいで到着します。すこし遅れますがよろしくお願い致します」 結局2時20分到着。

 修理開始。原因判明。すでに設置して10年経つ。トッププレートの設置面の接着剤が劣化して豆の吹き零れの煮汁がそのすき間から中に入り、基盤が濡れてダメになった。基盤とトッププレートの交換、部品代、出張代と技術料で4万円くらいかかるとの試算。「買え替えるといくらくらい?」「工事代込みで30万くらいです」 絶対修理しかない。ということで修理してもらった。36、855円だった。

 高い黒豆とも思ったが、IHクッキングヒーターの寿命だったことでもあるし、悪いように取らないようにした。そんなこんなで大変な手間ヒマお金をかけた黒豆が完成した。やはりその黒光りはどんな問題をも跳ね返してしまうほどの威力を秘めている。今年の黒豆も甘すぎもなくちょうどいい塩梅に仕上がった。これで無事正月を迎えられそうである。

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