団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

童謡

2017年12月15日 | Weblog

①    浜千鳥

②    ふるさと

③    月の砂漠

①     カナダの学校にいた時、アメリカとカナダを旅して、あちこちで多くの日系1世の人々に出会った。カナダ・ブリティッシュコロンビア州のオカナゲンの日系移民Oさんの果樹園でひと夏アルバイトをした。Oさんに気に入られて「私の養子になってこの果樹園を継いで欲しい」とさえ言われた。私の人生で「もし、あの時・・・」という場面がいくつかあるが、心の中でほんの一瞬「果樹園も良いかな」と思ったのは、事実だった。Oさんの子供は、弁護士とか歯医者とか医者になって果樹園を継ぐ者はいなかった。1世と2世には、大きな溝があった。親は、肉体労働で子供を育て、日本へお金を送り、英語も片言の人が多い。子供たちは、勉強して大学へ行き、高学歴になり、言葉も日本語に封印して英語を話す。高学歴の子供は、学歴のない親を敬遠することもある。Oさんの苦悩が伝わった。

   Oさんの果樹園の中の家の前に幅5メートルくらいの川が流れていた。川の岸に大きな柳の木があった。枝が川の水面スレスレにレースのように垂れていた。その脇にトイレの小屋があった。トイレは腰かける板に穴があるだけのトイレだった。庭の大きな木にOさんが子供のために作ったブランコが二つ並んであった。奥さんは、数年前に亡くなってOさんは一人で果樹園をやっていた。収穫期だけアルバイトを雇っていた。仕事が終わって夕方、ブランコに乗り、Oさんと話した。Oさんは、日本の童謡を歌った。私にも一緒に歌うよう言ったが、歌詞を全部知っている歌はほとんどなかった。Oさんは歌詞を完璧に覚えていて『浜千鳥』が大好きだと言った。Oさんは、滋賀県の琵琶湖のある村の出身だった。Oさんは「親をたずねて海こえて」で声を詰まらせていた。

  ♪青い月夜の浜辺には
       親を探して鳴く鳥が
       波の国から生まれ出る
       濡れた翼の銀の色

      夜鳴く鳥の悲しさは
      親をたずねて海こえて
      月夜の国へ消えてゆく
      銀のつばさの浜千鳥♪    (作詞:鹿島鳴秋 作曲:弘田龍太郎)

②     カナダの学校の寮は一人一部屋だった。日本の4畳半くらいの広さで2段ベッドと勉強机と洋服の収納棚しかなかった。日本の家族から手紙が届くと『ふるさと』や高校の校歌を口ずさんだ。『ふるさと』でうさぎを追った事はないが他はほとんど経験がある。校歌はふるさとの周りが目に浮かぶほど山、川、歴史がてんこ盛りで勇気を与えてくれた。

③     『月の砂漠』は、友人が癌で入院していて、亡くなる2日前に二人でチュニジアの砂漠でラクダに乗った夜のことを思い出して歌ったと奥さんから聞いた。

 

   童謡は、日本人の心を歌う。日本には良い童謡がたくさんある。私たちの誰をも納得させ、黙らせ、想いに沈める歌詞がちりばめられている。年齢を重ねるごとに私を突き刺す童謡の歌詞が増える。私はCDでクラシックを聴いて宇宙へ飛び出し、レコードで童謡を聴いて過去を浮遊して、カセットテープで落語と浪曲を聴いて笑い泣く。

 

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