団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

巴投げ

2024年07月30日 | Weblog

  子供の頃、柔道の技で巴投げというものをテレビで観て、カッコイイと思った。巴投げは、日本柔道の重臣嘉納治五郎の得意技だった。嘉納治五郎の本を読んだ。小さな日本人が大きな外国人を巴投げで投げる。力や体格で相手を倒すのでなく、相手が攻めて来る力を逆に利用して倒す。賢い闘いだと思った。

  小学校4年生で町の柔道教室に通い始めた。週2回の稽古日だった。憧れの巴投げがどれほど凄い技であるか知った。技の練習どころか、来る日も来る日も受け身だけの練習だった。技の練習は、通い始めて半年過ぎた頃だった。1年過ぎた頃、市の武道館で行われた5級の検定試合に参加した。相手は体格の良い子だった。試合開始後、いきなり寝技をかけられた。虚弱体質で痩せていた私は、彼の体重に押しつぶされそうだった。加えて彼の腕が私の首を絞め付けた。息ができなくなった。負けた。泣いた。柔道をやめた。私が何を始めても、途中で投げ出すのは、柔道から始まったのかもしれない。

  カナダへ留学すると、私が日本から来たと言うだけで、柔道や空手の達人と勝手に思われた。何度か柔道の試合を申し込まれたこともあった。すべて体よく断った。でも小学生の時始めた柔道をきちんと続けておけばよかったと反省した。私は格闘技にはまったく向いていない。

  パリオリンピックが始まった。大相撲名古屋場所が終わった。不規則なアメリカ大リーグのドジャースの大谷翔平選手の活躍を観るのが楽しみである。加えて今度のオリンピックが始まって、各放送局がこぞってオリンピック特集を放送する。いつものお笑い芸人たちの、どこかに行って食べる番組か、仲間内のつまらない暴露合戦などのつまらない番組の多くがオリンピック番組に替わった。これでやっとテレビがまともになった。

  柔道女子48㎏級で角田夏美選手が金メダルを獲得した。この選手得意技があろうことか巴投げなのである。最近の柔道は、なかなか一本が出ない。柔道の醍醐味は、一本勝ちにある。相手との組み手の探り合いばかりが長引くと観ていて面白くない。寝技には悪い思い出のせいか、観ていると私の首の周りが苦しくなってくる。柔道の試合を観ていて、巴投げを観ることは稀である。角田選手は、次々と巴投げを決めた。オリンピックである。世界各国から選りすぐりの選手が登場する。そう簡単に巴投げが決まることはない。他の試合を観ていても、まず巴投げで試合が決まることはない。角田選手の巴投げが連日の猛暑を忘れさせてくれた。見事としか言いようがない。あっぱれ。

  日本のマスコミは、金メダルを取って当たり前のように選手に圧力をかけているように思える。柔道に関して言えば、「柔道は日本のお家芸」の表現を私は受け入れられない。今柔道は、世界のスポーツである。日本がメダルを取って当たり前ではない。だからこそ柔道はオリンピックの種目になっている。世界のどこの国の選手でも堂々と闘えばよい。なかなか目を奪われる一本が観られないが、それでも角田選手の巴投げを観ることができて嬉しかった。それは私が小学生の時、巴投げに憧れて、短期間であったが柔道を習っていたことを思い出させてくれた。巴投げは、やはり凄い技だ。

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