団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

カリスマ指導者

2012年12月06日 | Weblog

  三島由紀夫、石原慎太郎、池田大作、小田実。評論家の大宅壮一は、かつて70年代に活躍しそうなカリスマ的指導者として上の4人を『文藝春秋』昭和45年1月号で挙げていた。

  三島由紀夫、小田実は鬼籍に入っている。現役で私たちが目にできる状態で活躍するのは、石原慎太郎一人だけである。その石原もすでに齢80歳を超えている。

  カリスマを広辞苑の電子版でひくと、①[宗]神の賜物の意。聖霊から与えられる特別な力。②[社]超人間的・非日常的な資質。英雄・預言者などに見られる。③多くの人を心酔させる資質・能力。とある。

  12月6日衆議院議員選挙が公示されて、選挙戦が始まった。何と12の政党が乱立、1504人もの立候補者が出た。私は、いつものようにいまだ私が住む選挙区の立候補者の氏名さえ知らない。誰に投票してよいのやら、どの党に投票してよいのかも分らないでいる。

  選挙になるといつも感心する人々がいる。池田大作率いる創価学会の会員である。とにかく熱心である。時間も構わず、親しくもない細い薄いどんな関係、例えばただ職場の知り合いとか教え子だとか過去に赴任地が一緒だったとかでも活用して、どんな選挙でも私に公明党議員への投票を依頼してくる。その一心不乱の熱心さに私は圧倒され、たじろいでしまう。創価学会を母体とする公明党は、日本でもっとも票集めに長けた土台が盤石な政党に違いない。選挙では浮動票がもっとも少ない党でもある。それが他のいかなる党とも違う。日本の旧態依然な選挙の地盤看板カバンの世襲制を打ち破って風穴を開けた功績は、今のところ大きいと私は評価する。おそらく学会員は相当な確率で公明党を支持しているはずだ。でなければ現在日本の地方議員総数32、479人中約3千人が公明党に所属しているなんていう数字が出てくるわけがない。組織で一丸となって選挙に臨む体制は池田大作のカリスマ性に由来する。大宅が選んだだけあるカリスマ指導者である。これだけのことを成し遂げた政党も政治家も日本にはいない。中国共産党の党員は6930.3万人。総人口13億1448万人の人口比5.4%である。公明党の地方議員の占有度は9.2%である。この二つの数字で比較するのは、無理がある。しかし中国共産党の人口比の数字より高いことに、私は注目してしまう。

  カナダ、ネパール、セネガル、旧ユーゴスラビア、チュニジア、ロシアで暮らした。選挙を各地で見ることができた。どこの国でも日本のように車に拡声器を積んで目一杯にボリュームをあげて、わめきまわる下品で下心丸出しの選挙運動を見たことがない。なぜか考えた。かの国々では選挙する前から支持母体が磐石で浮動票が非常に少ないので、日本のような選挙運動をしないで済むのが一因であろう。一方では宗教、部族、人種、イデオロギーの対立は、紛争戦争の殺戮にまで到る生死を分けるものである。カナダはキリスト教の教会の組織票と移民の人種グループ、ネパールはヒンズー教とそれに由来する強固なカースト制度、セネガルはイスラム教と宗教指導者マラブーの影響力、旧ユーゴスラビアは旧社会主義、チュニジアはイスラム教、ロシアは旧共産主義というように、それぞれの組織が絶大な影響力をいまだに持っている。日本が上の一部の国々のように、ひとつの宗教やイデオロギーが国家を支配するような事態にならぬ事を祈るばかりである。

  今回の日本の衆議院議員選挙を直前にして、私と同じく特定の支持政党や信仰する宗教を持たない有権者の多くは、どの党の誰に投票してよいものやら、頭を痛めている。家の前に堂々と公明党支示のポスターを貼り、創価学会信者である立候補者を断固として応援する同じく信者である人々が羨ましいと、投票先を迷う私は思ってしまう。

  しかし待てよ、迷えるということは自由であるが故の贈り物である。迷おう。多いに迷って迷って、調べ、考えてどの党の誰に投票するか決めようぞ。

  また前回選挙で犯した失敗をするかもしれない。一時、私は今回の投票を棄権するとまで考えた。撤回する。一票は私の自由の象徴なのだ。たとえ自分がカリスマのカの字にもかすりもしない超人間的でなく極普通の人間で、非日常的でなくきわめて日常的な凡人である私の一票でも、そういう人たちの票が集れば大きな力になる。特に団塊世代で信州人である私には反骨精神の血が流れる。いかなる統制からも圧力も強制も受けつけない選挙権を有する人々が、自由であることを自覚して、政策を見極めて投票することを信じたい。崖っぷちニッポンだけれど、選挙でキッカケを掴み、よみがえって欲しい。ニッポンは世界に類のない浮動票王国で、稀有な投票の自由が残されている。

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