千葉県の利根川水系から取水している多くの市町村で断水があった。原因は、水道水からホルムアルデヒトが検出され、千葉県の一部市町村が上水道の取水を一時止めたからだ。
ネパールのカトマンズにかつて3年間住んだ。何軒かの家庭で採集した水道水を日本の検査会社に送って調べてもらったことがある。結果は、どこの水道水からも砒素や有害な重金属類が検出され、飲料水に不適格とされた。私は、3回ろ過の3回煮沸して飲料水としていた。高性能なろ過器が日本の本省から配備されても、ネパールに暮らす間ずっと3回ろ過の3回煮沸を続けた。水は見ただけでは、中に何が含まれているかわからない。やみくもで気休めでしかなかったかも知れないが、赴任中、何とか重大な病気になることはなかった。
水に不便な生活を14年間5箇国で続けた。どこに住んでも、水は生命線である。電気がなくても、ガソリンがなくても、ガスがなくても、十分な食料がなくても生きられるが、安全な飲める水がなければ生きられないことを思い知った。去年の東日本大震災以来、電力不足や計画停電が続いたが、私たち夫婦は「このくらいどうということはない」と不便を感じなかった。過去の過酷な経験が役に立った。
過去に私のブログで水道水の取水の方法を提案した。川の中にパイプを通す分水方式のことだ。できるだけ水源に近いところに取水口を造り、下流に送水する仕組みだ。今回の千葉県の断水もこの分水方式があったなら、起こらなかったであろう。
知らず知らずのうちに私たち人間は、だれもかれもが環境破壊に加担してしまっている。我が家にも入浴剤、化学洗剤、シャンプー、リンス、練り歯磨き、うがい薬、排水管のツマリ除去剤、などの化学合成品があり、毎日大量に使用して、垂れ流している。少しでも環境に悪い影響を与えない製品を探し出し、水資源を守るぞという気持を持ち続けたい。不思議でたまらないのは、いくら高機能で近代的な下水処理場を完備しているといっても、はたして完全にこれらの化学物質を除去できるものなのか。これだけ多くの物質が混じりあって、化学変化を起こして得体の知れない新有害物質が生成されないのか。上流から下流へ、次々に下水処理場で処理された水が追加投入されていく。
旧ユーゴスラビアのベオグラードの住民は、市内を流れる青きドナウとドイツ人が歌い慕うドナウ河をヨーロッパの下水と呼んでいた。環境問題にうるさいドイツ人でさえ、完全な下水処理はしていない。いやできないのだ。地球上にまだ下水処理施設を持たない国の方が、持つ国よりはるかに多い。川にも海にも自浄作用はあるだろうが、人口増加は、とうにその限界を超えてしまっている。飲める飲めない水以前に水そのものが不足している国が多い中、日本は水資源が豊かな国である。その日本が水を有効に使わず自ら汚染させていては話にならない。
水も重要な資源である。去年の東日本大震災を教訓として、あらゆる想定にもとづき検証をするべきだ。原子力発電に関しても、水を守る視点で再考して欲しい。外国資本による日本での水資源獲得に対して心配する向きもあるが、それは各国がいかに水資源の将来を案じているかのあらわれである。水源地を売るのでなく水を輸出すればいい。日本人は安全と水がただ同然という悪い伝統的な想いを断ち切る時である。豊かな水資源を有効に活かし、災害、人災に備えるべきである。何度でも言う。水がなければ、人は生きられない。もっと真剣に日本の恵まれたこの清潔でおいしい水資源を活かすことを考え、提案を続けていきたい。