団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

エベレスト山頂が臭う

2024年03月14日 | Weblog

  世界最高峰のエベレストは、登山家によって憧れの山である。私は妻の赴任地がネパールのカトマンズに決まった時、エベレストに登れなくても、エベレストを見る事ができると楽しみにしていた。とにかくマラソンや登山のような苦しいことは、避けて生きてきた。幸い、初めてネパールに到着する前に、バンコクから乗ったタイ航空の窓から、エベレストを見ることができた。ネパールに住めば、エベレストを簡単に見ることができると高をくくっていた。ネパールには、3年半暮らした。その間にエベレストを見たのは、4回しかなかった。

 最近ニュースでエベレスト山頂付近の汚染が深刻だと報じられた。特に人の排泄物で臭いが酷く「山が臭う」とシェルパが言うほどだそうだ。以前から私は、エベレストのような酸素ボンベが必要で気温も低いところで、登山家はトイレをどうしているのか疑問に思っていた。それは宇宙船で半年とか長く滞在する宇宙飛行士に関しても同じ疑問を持っている。多くの報道がされても、こと排泄や排せつに関する記事は、見当たらない。

 エベレストのような高山を登るには、多くの機材が必要である。エベレスト山頂近くには、ロープ、酸素ボンベなどが散乱しているそうだ。気温が極端に低いために人の排泄物は、分解されない。いつまでもそのままで残ってしまう。以前登山家でエベレストの登頂も果たしている野口健さんが、エベレスト山頂付近の汚染を訴え、清掃活動をしていると聞いたことがある。今度エベレストの麓の自治体が、登山隊に対して排泄物の持ち帰りを義務付けた。排泄物を固めて無臭化する化学物質の入った袋を購入してもらい、持ち帰りを求めた。

 人が生きていれば、排泄は必然である。ネパールは、下水道や下水処理のインフラは、遅れている。私が住んだカトマンズの貸家もトイレは、水洗だったが、慢性的な断水で苦労した。トイレの下水は、地下のタンクに入って、底から地中に浸透するという方式だった。モンスーンの季節は、雨の日が続く。タンクから地中に浸透も限界に達し、地上に出てきてしまう。

 知人の高校同窓生のグループが7年前にネパールへ旅行した。そこで上田高校の先輩の故宮原巍さんの家に招かれた。宮原さんは、2019年11月24日85歳でネパールにて亡くなった。(写真:宮原巍さんの荼毘の日のエベレスト:写真中央の煙が宮原巍さん。やっとエベレストに!)私たち夫婦が、ネパールに住んでいた時、大変お世話になった。何回もエベレスト登頂を試みられたが、あともう少しという所で悪天候のため下山せざるを得なかった。さぞかし心残りであったと推測する。知人たちに宮原さんがいろいろな話をしてくれたそうだ。宮原さんは、ネパールの国籍を取得して、政治家になってネパールに貢献したいと活動した。特に国の玄関であるカトマンズのトリブバン国際空港のトイレをきれいにしようと尽力した、ネパールはヒンズー教によるカースト制度でトイレ掃除は、不浄なことと敬遠される。今では空港のトイレは、とてもきれいになったそうだ。

 人口が増えれば増えるほど、環境汚染は進む。人類は、汚染により地球温暖化を進め、更に今、エベレスト山頂まで汚染させ、海深くまでプラスチック粒などで汚染し、宇宙にまで人工衛星やロケットなどでゴミを増やしている。自分の排泄物さえ処理しきれない人類が、この先、何を手に入れようとしているのだろう。


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